第8話 会話

文化祭の準備が始まると

帰る時間も遅くなった。


いままでそんなに仲良くなかった男子と

仲良くなりA も含めた5~6人で学校から駅までの

道のりを帰ることも増えた。


ある日、いつものように買い食いをしてあるいていると


「秋川さん?秋川さんだよね?」


と、声をかけられた。

きょとんとしてると


「分かる?俺、幼稚園の時一緒だったN」


「あ!」


Nくんは、幼稚園で同じクラスだった子で

面影があり直ぐに分かった。


なぜ、大きくなった私を見て

彼が私だと気づいたのかというと

数年前に一度、プチ同窓会的に会っていたからだ。


担任だった先生が結婚を期に退職し

出産されたという話を聞いて

同級生のママが連絡の取れた数人に声をかけ

子供たちでお祝いにお邪魔した際のメンバーに

N くんもいたのだ。


「久しぶりだね、ちょっと話さない?」


と言われ、快諾した。


とはいえ、田舎の駅。

周りにファミレスも無ければ喫茶店もない。

仕方なく駅前のベンチにすわり話こんだ。


終着駅だったことと、単線だった為

電車が折り返す15分ほどの時間だったが

他愛もない話で時間はあっと言う間に過ぎた。


「またね」


と、手を振り颯爽と去る彼を

停車中の電車からAが見ていた。


「誰?あのカッコイイ人」


確かに格好良かった。

爽やかでウチの学校にいないタイプだ。


幼稚園の同級生であることを伝えると

ニヤつきながらAが席に着いた。


それから数日後、またN くんと出会う。

前回と同様に電車が出るまでの時間だけ話をした。


私服の公立校に通うNくんと

地域でも底辺の学校の制服を着ている私は

駅のホームではかなり目立っていた。


電車が出るまでの他愛もない時間


高校生らしいことを望んで居なかった私には

珍しく高校生らしいな、と思った


文化祭も終わると

会う回数も減り、彼とはその後 今に至るまで疎遠だ。

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