第6話 ニートの真相
列車を降りるとビル街。そこは時代背景やら周りの世界観やらを無視した白いコンクリート製のビルが立ち並んでいた。開口一番は蝶子が駅から出ると背伸びをすると、
「あー、流石都会は空気清浄されてて美味しいっす。で、何時になったらカフェオレさん姉さんから離れるっすか?」
そこにカフェオレにお姫様抱っこされたミルクが、
「そうだね。田舎の空気は荒らっぽくて嫌いじゃないがやっぱり都会の空気は落ち着くね」
「で、何時離れるっすか?」
「オレはミルクの臭いが有ればどこでも天国だぞ」
引くほどの言葉を吐き続けるカフェオレに対して蝶子は、
「……で、何時離れるっすか?」
「で、向かえが来てるはずだが。何処だ?」
周りの人々をカフェオレの腕の中から覗くミルクに蝶子は、
「で、何時離れるっすか?」
「五月蠅いね。こいつが離れないのが悪いんだよ」
そう言ってミルクはカフェオレから降りようとするが筋力で適うはずもなくむしろ蹴られたり殴られたりカフェオレにはご褒美だった。
それを呆れた目で蝶子は見つつ話を切り替えようと、
「てか、行人さんよく喧嘩にならなかったっすね」
ミルクは暴れ疲れて息を切らせながら、
「まぁ、あいつはカフェオレを妹思いの良いお兄さんって思い込んでるからな。まったくあいつの思い込みの深さも以上だよ」
「あ、ミルク様、カフェオレ様。こちらでございます」
そこには子供くらいの小さな背丈をした眼鏡を掛けたスーツ姿の女性がこちらに手を振りながら近寄ってきた。
それを見つけたミルクは、
「おー、マリーチカさん。久しぶり」
マリーチカは近寄り何故か空へ手を振ると、
「メリー様、こちらでございますー」
「え?」
ミルクがまさかの顔をするとそこへビル街を物とせずにヘリコプターが飛び出して来てロシアのクラシック音楽を大音量で流しながら扉から黒の長髪おでこが光り豊満な胸を隠しきれないピチピチの黒のベストに白のシャツ、黒のネクタイに黒のロングスカートのピンク縁の眼鏡をした女性が満面の笑みを浮かべてこちらに手を振っていた。
周りに迷惑がかかるとミルク達は早々にヘリコプターに乗るとメリーは、
「久しぶりねー。ミルクちゃん。後その他二人。あ、ミルクちゃんベルギー産のチョコレート食べる。あ、その他二人はお煎餅で良い?」
そんなミルク以外に差別激しいメリー。だがミルクはそんな事は気にしている余裕もなく。
「なぁ、姉御。実は、」
「もう。姉御はやめて二人っきりの時はメリーちゃんと呼んで」
会話を切ってまで二人っきりでも居ないのにメリーはちゃん付けする様にうながしながらミルクをその大きな胸で抱きしめた。
「おい、メリー。オレのミルクに気安く抱きしめるな」
「あらあら、カフェオレ君。いくらお兄さんだからってブラコン過ぎて束縛魔になるととまた逃げられちゃうぞ」
「うるさい、このクレイジーサイコレズ。母親役なら母親らしく兄妹の仲を指くわえて見てろ」
「いやいや。息子なら息子らしく妹の臭い嗅ぐくらいにしとかないと精神病棟に突っ込むわよ」
「なんだと」
「なによ」
「待って待って」
メリーとカフェオレの間にビリビリと火花が飛びミルクは割り込む様に、
「なぁ、姉御。今日は聞きたい事がある」
「もう、姉御はやめて。メリーちゃん、またはお母さんって呼んでよね。ミルクのソーダさんが無くなって親権だけでも預かった身でも私はミルクちゃんを実の娘と思っているのよ」
「いやー、実の母ならそこまで溺愛しないと思わないっす」
存在が薄くなりがちな蝶子がぼそっと呟く。それを気にせずにミルクは、
「そ、それでさ。聞きたい事ってのはニートって女の子の事なんだけど。ラヴ・レターの総裁な姉御ならどんな情報でも手に入るだろ」
それを聞いたメリーは少し黙ると、
「そうね。実はニートちゃんは簡単に言うとこの世に居てはいけない存在なの。なんて言うか犬に対しての狂犬病みたいなもので放っておいては駄目なものなの。これは私個人の意見じゃなくて十三柱全員の回答よ」
無言でメリーを睨むミルク。それにメリーはため息をついて、
「そうね、解ったわ。ミルクちゃんはやっぱりソーダさんの子ね。ちゃんと解からないと意見を変えないのね。家に帰ったら話してあげるからその顔だけはやめてね。私はミルクを愛してるのは本当なんだから」
語弊を招く言い方なのかガチで愛を語っているのか考える蝶子であった。
ヘリが降りた先はまた一回り大きなビル街。屋上でマリーチカが降りるとすぐ様ラブ・レターの象徴色である白いのカーペットが敷かれその先には数百人の使用人が頭を下げて出迎えた。
それにものともしない蝶子以外の面々。いっぽう蝶子は未だに挙動不審で歩いていた。
エレベーターを数回降りると一面ガラス張りの窓に白い家具。奥には一段高い仕切りに大きなピンクのソファーがありそこにメリーが座り周りの椅子やクッションにミルク達が座った。
「さてさてニートちゃんの話をしましょうかね。
知っての通りニートちゃんはセブンスの隠し子よ。しかもだたの隠し子じゃないわ。セブンスのボス、ドン・ドンキーの隠し子よ」
そこには驚く者は居ない。むしろ当然と言えるほどの静かな空気だ。メリーはその空気を察して、
「やっぱりね。ここまでは当然の情報。でも十三柱の意見はこうなってるわ。ただね、この一ヶ月でラッキー・セブンセンシズのボス、ドン・ドンキー含めその血族五十八名全員の殺害に関わってるとするのなら……」
「バカな、ニートにそんな事ができる訳がない」
血相を変えて立ち上がるミルクにメリーは優しい目で、
「そう、普通の人間には数千人のガードが着いているドン・ドンキーですらまたは残り五十八名の親族を殺す事すら不可能でしょうね。普通の人間なら、」
「まさか」
ミルクに嫌な考えが浮かぶ。
「そう。ニートは真種よ。しかもただの真種じゃない。十三柱ではこんな能力名が付いたわ。この世界の最悪の
「なんでだ。何でニートが真種なんだよ。殺すだけならカフェオレにだって」
慌てるミルクだがそれとは正反対に冷静なメリーは、
「そうね。殺すだけならこの星にだって数人はそんな能力を持ってる者はいるわ。もちろん、カフェオレも候補にあがったわ。でもね、そんな人達はこのラヴ・レターや十三柱全員で見張ってるしその中にもニートちゃんは居たわ」
「なら」
「ドン・ドンキーの能力は、この世界の
さっきとは違う様子の返答を示さないミルク。何かを察した様子だった。それにメリーは続けて、
「ニートの能力は対象を最高の不運を与える能力。本人にはまだ自覚がないけどニートの逸話は本当よ。ある者には強盗が襲い、ある村では大災害が起きる。ニートは不幸を呼び寄せる。このままでは火星全体の存続が危ないの。解って頂戴ミルクちゃん。これは世界の存続の為なの。
ニートちゃんの処刑は三日後の十五時にスーチー教会行われるわ。一応、ドンの血族だから正式な式典やるみたいだわ。もしも何も起こさない事を条件にするなら一緒に式に出れるけど」
メリーはまっすぐにミルクの顔を見つめミルクは涙目でその部屋を後にした。
その部屋はさっきの部屋と比べたら異質だった。周りは木目でバーカウンターがありベットは無くて真ん中には大きなソファーベットが横たわっていた。ミルクと蝶子はバーカウンターで座りながら好きな飲み物を飲んでいるがミルクは沈黙を守っている。それを気まずそうに見つめる蝶子は、
「い、いやー。相変わらず凄い部屋っすねー。姉さんの趣味は未だによくわからないっすー」
「ニートは今どうしてるんだろ」
ミルクの引き出した様な声に蝶子は優しい目で、
「自分は反対っすよ。助けるの。姉御だけならまだしも十三柱全体を敵に回すのは割に合わないっす。いくら姉さんでも場合に寄っては殺害命令だって下るっす。人生は生きてこそっす。それは解って欲しいっす」
納得いかない顔のミルク。そして実の母ソーダの言葉を思い出す。人の価値はその人の死後の事柄で決まる。だが、ニートの価値は何なのかただ疎まれて嫌われただけの価値ならそれはあまりにも辛いと。ミルクはニートがセブンスに襲われるたびにそんな事を毎回頭に過ぎらせていた。そして、
「んー、とりあえずは俺は寝るよ。ニートの事は諦める。蝶子も今日の所は寝な」
「はいっす。流石姉さん物分かりが良いっす」
電気が消え。ミルクと蝶子はソファーベットで眠りに付く。そして暫くしてミルクは目覚め蝶子に一言、
「すまないね。物分かりが悪くて」
そしてミルクはエレベーターに乗り地上に降りた。すると他のエレベーターが降りて来て、
「まったく本当に物分かりの悪い人っす」
そこには蝶子が居た。
「蝶子……」
驚くミルクに蝶子は、
「ニートを助けるんでしょ。このまま見殺しにしたら姉御にも殺されるっす。どうせなら正義のヒロインで死ぬっすよ」
「おー、マイバディ!」
「ちょっと姉さん。カフェオレさん見たいな事はやめるっす。や、ほっぺにキスしないで欲しいっす」
こうしてミルクと蝶子はニートが捕まるセブンスの本部へと向かった。
終
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