第4話 カフェオレライダー
荒野の真ん中で三百人近くの荒くれ者が一人の男性を囲んでいた。ハーレーダビットソンの様なワイルドで洗練されたバイクに跨がり金髪でデニムの長ズボン。両腰に六連式リボルバー式の銃をかけて上半身は裸で目は死んだ魚の目をしている。
荒くれ者のリーダー格が叫ぶ。
「見つけたぞゲイボルグ。お前を倒せば俺たちが億万長者だ!!」
それに対してゲイボルグと呼ばれた死んだ魚の目をした男は呟く、
「ミルク……」
リーダー各は首を傾げながら、
「何だそ、」
その瞬間で荒くれ者は全滅した。
列車に揺られて三日目。メンテナンスと消耗品の補給の為にある町に停車しミルク達は久しぶりに外へ出歩く。
ミルクが久々の青空を見上げながら話す。
「しかし大丈夫なのかい? 気分が詰まるとは言え俺達が外に出ちまって」
それに対して蝶子が周りの町並みを見ながら返す。
「大丈夫っすよ。真田さん情報ではこの町は治安が良いらしく特にここは帝国鉄の力が強くそう簡単にセブンも暴れられないらしいっす。久々の散歩を楽しんで欲しいって言ってましたっす」
そこにこの町の保安官が走り出して来る。
「おい、この近くの荒野で死体の山が出たって本当か!?」
ミルクの目線が空から蝶子に移り、
「治安が良いねぇ」
「ミルク……」
そのミルクの後ろから声が聞こえたとたんミルクは何者かに抱きしめられる。
「な、アニキやめろ!」
「ミルク。ハァハァ、ミルク」
アニキと呼ばれたのはさっきのゲイボルグと呼ばれていた男だった。
それを見てニートは引き気味で、
「あの、すいません。あの人はいったい」
それに対しては兄の対応にいっぱいいっぱいのミルクより蝶子が答える。
「ああ、あの人はカフェオレさん。姉さんの実の兄で姉さんと子供を作ろうとしている変態さんっす」
それを聞きニートの頭にはクエスチョンマークが出て、
「あ、あの実のお兄さんなのに子供って」
蝶子は少し頬を掻きながら困った笑顔で、
「あー、マジっす。だって」
蝶子は二人に目線を移しニートも見るとミルクとカフェオレは、
「や、やめろアニキ。キスをしようとするんじゃない。こ、コラほっぺたを舐めるな」
「ミルク、ミルク。今日こそは一緒に寝よ。そして俺の子供を産んでくれ」
蝶子とミルクはとても冷たい目で目を反らした。
「見つけたぞゲイボルグ!」
そこには初老の老人と未来的な弾丸などは通らないであろう機会性のアーマーをまとった敵が三十人ほど後ろに控えていた。老人は続けて、
「よくも俺の手下をやってくれ」
再びゲイボルグと呼ばれたカフェオレは片手で銃を抜くと一瞬にして老人とアーマー部隊は心臓を打たれ全滅した。それを見たミルクはいつも通りと見える目で、
「たく、話くらいは聞いてやれと。そうだ今のうちに」
銃を打った方の腕がミルクから離れ少し抱きしめが和らいだ所でミルクは抜けだして蝶子達に、
「逃げるぞ」
そしてミルク達はカフェオレから抜けだした。
いつもの如くニートは蝶子に背負われながらミルクに問いかける。
「あ、あのすいません。さっきのカフェオレさんっていったい」
それにミルクは走りながら少し不快そうな顔で、
「あぁ、
それにもニートは何か分からない表情でそれにミルクは、
「真種ってのは火星の成分で特殊能力を持った人の総称だ。発症率は一千万人に一人とか一億人に一人とかまぁ、そこまでは分からん。とにかく俺は彼奴の近くに居たくないんだ。だから逃げるぞ」
そうしてミルク達はカフェオレから出来るだけ遠く走っていった。
一方その頃に同じ町の宿場で三人の男が喋っていた。一人は坊主の丁寧口調のデニーともう一人は大柄のロボット男ダニエル。そこに椅子に座った赤いジャケット赤い短髪の男が二人を睨んでいた。
そこに丁寧口調の男が、
「ディアゴさん。本当に大丈夫なんですかね? ここは帝国鉄の縄張り下手な事をしたら大変な事に」
ディアゴと呼ばれた赤い短髪の男は、
「ふん、お前達は事の重大さがまだ分かってない様だな。これは我々セブンだけの問題ではないのだよ」
「で、ですが」
大柄の男は反論しようとするがディアゴは、
「何か文句が有るのかい?」
「ガ、ガハハ。いえ、何にも」
大柄の男は縮こまった。
ディアゴは深くため息をつくと、
「良いか。ニート様を生かしておけばセブンだけではない。世界が滅ぶかも知れないのだ」
カフェオレから逃げ仰せたミルク達は宿屋のバーカウンターで一休みしていた。ガヤガヤとうるさいながらさっきの出来事と比べれば静かであった。そこにニートが例の如く質問を投げかける。
「あのー、すいません。さっきカフェオレさんも追われてるみたいだったんですけど何でですか?」
グラスに入れた牛乳を飲みながらミルクはしれっと、
「そりゃ、アニキが九十億の賞金首だからに決まってんじゃん」
聞いたニートは、
「え? きゅ、九十億ってすいません。どんだけの数字なんですか!?」
「それは人間の一生が三億でこの星で何も不自由なく暮らせるとしても三十回はそれが出来るっす。あ、ギャンブルは別っす」
それに蝶子が答えミルクが不機嫌そうに、
「まぁ、それだけ要注意人物って事さ」
それを見たニートがさらに申し訳なさそうに、
「すいません。余計な事でしたかね?」
「いやいや、姉さんのいつもの事っす。カフェオレさんの話になると不機嫌と言うか不安定と言うか。あ、でもカフェオレさんは凄いんすよ。この星の一番の賞金首であり一番の賞金稼ぎでも有るっす」
蝶子のフォローにニートは両手を合わせて、
「わー、賞金稼ぎとして一番なんて凄いじゃないですか! あ、あとはすいません。さっき呼ばれてたゲイボルグって」
「それは、」
「ニート。それ以上は後だ」
「そう見たいっすね」
ミルクは振り向くと当時に後ろに銃を撃ち、蝶子は素早く手元にあったガラス瓶を後ろに投げた。
だがそれはねらい通りだがいつの間にか現れたに表現が近いのか手前にあったテーブルを盾にし遮られてします。
ミルクは一言、
「ッチ、今度はやっかいな相手のようだね」
「そうか、やっかいか。ハハハ、良い言葉だ」
さっきまでテーブルに居たはずの気配はミルク達が居たバーカウンターの前に立っていた。
そこはどこかの一室。石壁で仕切られ窓はなく地下室だろう。所々に苔や水道からだろうか水滴が滴りその音にミルクが目を覚ます。
周りを見渡し体にロープが縛れられているのを確認して横に蝶子が気絶しているのを確認して蝶子の方に体を揺らして、
「蝶子、蝶子。起きな」
蝶子はそれに目を覚ましてすぐさに周りを確認し次第体に力を入れる。だが蝶子にはロープではなく鉄以上の強度のワイヤーが巻かれ蝶子でも切れない。
蝶子はミルクの方を向き、
「参ったっすね。ブラックアウトっすか。我ながらこれだけは苦手っす」
「あぁ、電子系統を強制停止させるあれか。ロボットだと辛いね。私は体が鈍い。たぶん即効性の睡眠薬だろう」
呑気に欠伸をしながらミルクが答えてそれに蝶子が、
「ニートが居ないっすね」
「知ってる。だが血の臭いはしない。まだ殺されてはないだろう」
「察しが良いな」
地下へのハシゴが降りるといつの間にか部屋の真ん中に赤いジャケットを着たディアゴが立っていた。
それにはもう驚かずにミルクは眠い目で、
「あんた真種かい?」
その質問にディアゴは意外そうな顔で、
「以外だね。ニート様の心配はしないだな」
それに対してミルクは冷静に、
「理由は三つ。一つ目はこの状況じゃ私達には何も出来ない。二つ目は前からの言動を見るにあんたらはすぐにニートを殺したんじゃない。殺すだけならいくらでも殺すチャンスは有ったはずだ。でも殺していない。ドン・ドンキーの血縁が理由かね」
「ほほう、やはり察しが良い。だが話は一端ここまでだ。余計な話は命を削るよ」
そこに蝶子が体を揺らし合図をすると、
「そうだね。行きな、蝶子!」
上手くワイヤーを解いた蝶子は大きな足音を鳴らすとすぐにディアゴの所へ飛び込むが蝶子の拳は外れそしてディアゴは蝶子の後ろに周り込みスタンガンの様な形状のブラックアウトを当てた。
「ッチ、三つ目の理由はあんたが真種で得体の知れない能力が面倒な事だよ」
倒れた蝶子を確認するとディアゴは改まって、
「失礼した。私の名前はディアゴ。セブンの大幹部の一人です。能力は「七秒の
それでも至って慌てないミルクはため息を一時吐くと、
「まったく。で、何で俺たちを殺さないんだ。それも疑問なんだが」
「ふむ、こんな状況でも冷静とはね。私はこれでも情報通でね。君がラヴ・レター総裁の養子と言う事も知っている。後はカフェオレとの関係も有るがあれはあれだろ? 最強の賞金稼ぎでも私の能力では勝てまい。さぁ、これでもう手はなかろう。暫くしたら一緒にセブンスの本拠地へ着て貰う。よろしいかな?」
すると地上からバイクのエンジン音と銃声が響く。
「ん? 何者か?」
すると何人かの死体と共に体を血塗れにしたカフェオレが降りて来た。
状況を把握したディアゴは逆に待ちわびていたかの様な明るい評定で、
「いやいや、貴方がゲイボルグのカフェオレ? 前から戦いたかったんだ、」
言い終わる前にカフェオレは銃を撃つがディアゴはいつもの如く後ろに回り込み、
「まったくせっかちな方だ。だが私の、の能力の前?」
ディアゴは気づいた。カフェオレが銃を撃った瞬間。能力「七秒の世界」は発動していた。完全に弾道を読み避わしてその上で後ろに回ったなのになのに何故、自分の心臓は銃で撃ち抜かれているのかを。
そして理解出来ていないディアゴに対してミルクは辛そうにな顔をして、
「ゲイボルグってのはケルト神話に登場する兵器でよ。どんな装甲も時間も空間も無視して貫くんだぜ」
それを聞いたディアゴの表情は一気に青ざめ吐血をしながら、
「そうか。時間も超越出来るのなら私の能力は無意味だったのか。待て、すまなかった。助けてくれないか? これは遺言だ」
だがカフェオレの目は変わらず死んだ魚の目で、
「例えばお前が異世界を救った勇者だとしよう、例えばお前がスライムから神へと成長を遂げた苦労人としよう。だがな、ここでお前は死ぬんだよ」
ディアゴは息も絶え絶えにカフェオレを見つめながら、
「駄目……か」
そしてカフェオレは再び引き金を引いてディアゴの心臓を貫いた。
「あ、アニキ。ありがと。で、ニー」
そのミルクの言葉も聞かずにカフェオレはミルクを抱きしめ大声で、
「何故、毎回毎回危ない事ばかりする!
俺たちは唯一の兄妹なんだぞ。もしお前が居なくなったら俺は何を頼りに生きたら良いんだ!
本当に……、本当に……」
死んだ目にも関わらず涙を流すカフェオレ。その時だけはミルクは何の言葉も返せなかった。
終
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