第3話 帝国鉄の真田丸
一晩中走り、追っ手も片づけた平たい胸のカウガールのミルクと山鳴りの胸を持ったジャージを来た蝶子に蝶子と同じくらいの胸を持ったセーラー服のニートは赤煉瓦作りの駅に入った。
内装は所々に彫刻がなされて居るがこのウェスタンな世界観とは違った猿や猪などの和風な彫刻や柄が壁やステンドグラスになされていた。
「す、すいません。おはようございます。ここはどこですか」
ニートが一晩中蝶子に担がれながら寝ていたのか眠気眼で質問し、ミルクが答える。
「ここは
「にってい……、こくてつ……。あ、あのすいません。昨日から思ってたんですがラヴレターとかセブンなんとかとか帝国鉄とかいったいどういう単語なんですか?」
その表情に何も知らないと悟ったミルクはない胸を張り上げ三人で歩きながら、
「良いかい。この火星は十三つのギャング。
帝国鉄は鉄道ならび交通網
ドボルザークは武器製造
ラヴ・レターは通信事業ってそれぞれこの星のインフラや必要な物を諸々を取り仕切ってる。そうする事で安定した利益とその地域地域に指示されそれぞれの地位を確立してきた。
その地位ゆえお互いに不可侵の条約を結び独裁的だがそれなりに住みやすい世界になった」
「ちなみに賞金稼ぎも場合に寄ってはそのギャングに属してる場合も有るっす。基本はフリーなんすけど抗争や下仕事を請け負う事で十分な給料が入るっす」
「そうだな、蝶子。って人の話に割り込むな。まぁ、実際に俺たちもラヴ・レターに所属してる賞金稼ぎだ。こんな自由出来るのも後ろ盾があってこそって所だな。
で、本題に入る訳だがさっきニートを狙ったラッキーセブンセンシズ。通称セブンスあれも十三のギャングの一角だ。主にカジノや映画などの娯楽系統を仕切ってる。しかもドン・ドンキーと言えばそこのトップだ。何かあったとかしか思えないがニートはそれに巻き込まれたらしい」
「あ、あのそれって私が隠し子とかそう言う……」
ミルクの説明に涙ながらにニートが問うとミルクははっきりと、
「も、有るが。それだけじゃないだろ。第一、セブンスはそんな小さな事で殺しをする奴らじゃねぇ。……、確証はないがな」
「じゃ、じゃあ。これからどうすれば……」
ニートは今にも泣きそうだがそこはミルクが優しく頭を撫でて、
「とりあえずラヴ・レターの本部に行って姉御に話を通してくる。あそこならだいたいの情報は集まるし、姉御なら何とかしてくれるだろうしな」
「何もかもすいません……」
「良いって事よ」
ほっこりした空気に蝶子はたまらず、
「姉さん優しいっすね。あれっすか、不幸少女萌えな人だったっすか」
「撃ち殺すぞ」
そんなこんなで切符を買ったミルク達。ここから三日同じ列車に乗り、途中下車後に一日乗ればラヴ・レター本部に着く手はずだ。
「っげ! 三番列車」
ミルクは列車の番号を見て嫌な顔をした。
「あー、あの人が担当してる番号っすね。お気の毒っす。ささ、ニートは安心して乗ると良いっす」
「ちょっと待て」
ミルクは蝶子の肩に手を置くと青ざめた顔で、
「なぁ、明日にしないか?」
そして蝶子はきょとんとした顔で、
「いやいや駄目っす。いくら帝国鉄でも奴らがいつ来るか分からないっす。善は急げっす」
「いやいや、マルコさん!」
そんな中、大勢の乗車客の足をものともしない声が響きわたる。
「あー見つかった」
そこには深緑の帽子に深緑の真ん中にまっすぐ赤い色の線が入った制服にこげ茶色の鞄、サングラスをした若い男が近づいてきた。
「いやいやいやいや、マルコさん。お久しぶりです。ここで出会うとは偶然。いや、運命。まさに人生と言うなのレールに敷かれし愛の特急列車。まさにここで出会うなんてやはりマルコさんと僕は運命の赤い糸で結ばれてるんだな。え、うるさい? いやいや、お客さん。これくらい列車の機関室の音と変わりませんよ。ハハハハ」
「え、え、え?」
困惑するニートに蝶子は、
「紹介するっす。姉さんのボーイフレンドの
ミルクは蝶子に拳を振るうと、
「誰がボーイフレンドだ。こんな奴、男とすら認めてないわ。あと、誰がマルコだ。ミルクだ、ミルク」
「いやいや、申し訳ない。マルコさん。相変わらず名前を覚えるのが苦手でして。それにしてもこんな所で出会うとは運命にしても何がご用で?」
行人はサングラスをカチャリと正すとミルクに話しかけた。
「まぁな。お前の列車に乗るのは嫌だが時間がないんだ。ラヴ・レターの本部へ向かいたい」
「それはそれは。毎度乗車頂ありがとうございます。我が帝国鉄三番列車。真田丸に関しましては一秒、一時、刹那な時間たりともお客様を安全に目的地までお送りするのがこの僕の本分でございます」
行人は三人に対して深々とお辞儀をした。
同じ駅の前。身長二メートル半くらいの大男がぼろ布を着込んだホームレスの男性に話を聞いている。
「ガババ。本当に居たんだな」
大男がホームレスに聞く。
「は、はい。確かにこの目でくっきりと確かにあの娘です」
「ガババ。ニート様を殺すことが出来ればセブンスも安泰、そして俺も出世コースに帰りさける」
「所でダニエル様。情報を仕入れたので例の物を頂けないでしょうか?」
ダニエルと呼ばれた大男はホームレスに向かい、
「おう、そうだな。これで良いか?」
ダニエルは布袋いっぱい入った何かをホームレスに渡すとすぐに袋を開き中身に入っているカジノのチップを確認した。
「やった……、これでスロットにルーレット、ブラックジャックも出来る!!」
「ガハハ。好きなだけギャンブルに興じるが良い」
そう言ってダニエルはニートが潜む駅の中へ入って行った。
「あー、さっぱりした。何日かぶりのシャワーだ。次はニート、お前だよ」
そこにはバスタオルを巻いた肌が軽く桃色に高揚し金髪のツインテールをストレート戻したミルクの姿が居た。ニートは軽く頭を下げてシャワールームに入っていた。蝶子はふかふかのベットに腰を下ろしながらミルクに向かい。
「姉さん本当にその姿で黙ってたら大分美人っすよね」
ミルクはむっとした表情をすると、
「何言ってんだい。元が良いからだよ。良い女ってのはどんな姿をしてても良いんだよ」
「だったら上半身ビキニとかすっとんきょうな服装は辞めた方が良いっす」
「ほっとけ」
ミルクは蝶子の横に座る蝶子は寝そべると、
「それよりニートの件。本当にやるっすか?」
「何言ってる当たり前だろ」
「正直、ここで殺しても良いんじゃないっすか?」
「何言ってるんだ?」
蝶子は起きあがるとミルクの顔を真剣な目で見て、
「実際の話。これにはセブンスが関わってるっす。例え姉さんでも十三柱が相手になるならここは大人しく引いた方が身の為っす」
「でもよ。約束なんだ。ニートが生きたいって言った。俺にはそれを守る約束がある。約束なんだよ……」
「姉さん……」
暫く二人の間に沈黙が始まりそこにニートが帰って来た。
「すいません。最後にシャワー頂きました。次はどうしましょ?」
蝶子はすぐさま頭を切り返して、
「そうっすね。せっかくなんで食堂車行きましょうか」
食堂車。内装は木製の豪華な彫刻で鳥や牛、豚などの装飾がなされている。ミルク達は行人の計らいにより一番奥のVIPルームに招待された。そこは個室でカウンターでは職人がスシや天ぷらを振る舞い、戸棚には数々の酒が施されていた。
カウンターの奥には当然と言うばかりに行人が座っていた。
「やあやあ、マルコさん。ようこそようこそ。丁度今夜は鰻と言う特別な食材が入っていますよ。知ってますか? しょうしょうグロテスクですが油がのっていてフカフカの歯ごたえが癖になりますよ。シンプルな白焼きも良いですがここは我が帝国鉄の料理人が丹精込めて仕上げた特性タレを付けて焼き上げた蒲焼きは白飯と良く合いますよ」
その行人の様子を見るやミルクはあきれ顔で、
「あー、もう毎回毎回良く喋る男だね。仕事はどうした」
行人は悪びれる様子もなくサングラスを整えると、
「いやいや。お客様をもてなすのも乗務員の役目。と、言いますか。この私が居てこの列車に面倒事なんて起きる訳ないじゃないですか」
「何げに優秀っすからね。行人さん」
行人は蝶子の答えに自慢げに、
「そう優秀、勤勉、迅速、蒸気機関。それこそが私の自慢で持ち味です」
「はいはい。そんなどうでも良い話は後々。それより食事しようぜー」
食事は始まりほぼ大半が行人の一人喋りが続き、まじめなニート以外はその話をスルーして食事を楽しんでいた。
「あ、あのすいません。行人さん、楽しいお喋りの途中ですがちょっとお手洗いに行ってきます」
喋りに乗ってる行人は箸をカチカチとしながら、
「あ、はいどうぞ。どうぞミーコさん。ごゆっくりどうぞ」
そしてニートはVIP席の反対側にあるトイレに向かった。
そこへVIP席の仕切から前の席で食事をとって居た大男はニートを確認すると小型の通信機で、
「ガババ、間違いないニート様だ。上手くやれよ」
ニートがトイレに入るのを確認すると五人の黒服を来た女性が銃を持ちそこを囲んだ。
「お客様。そこは現在使用中でございます。出来ることならこの場から立ち退き下さい」
黒服の女性達が振り向くとさっきまで喋っていたはずの行人が後ろに立っていた。
驚く黒服の女性達。だがその中の一人が容赦なくその弾丸を行人に打とうとしたが素早くその手を掴むと。
「行けませんよ、お嬢さん。私は女性に手を挙げない趣味ですがもしも私がその趣味がなかったらお嬢さんの首はもう別の方向に向かっていますよ」
その力強い握力にその女性は恐怖しそれを察した四人も後ずさりした。
「ガババ。セブンスの組員にしては情けない。やはり俺がやるしかないか」
そこには天井すれすれに頭がある大男ダニエルの姿があった。
それを見上げる行人は以外と冷静に、
「おやおや、これまた大きな人間が。待てよ人間、巨人、強靱、はたまた木偶の坊?」
「ガババ。ごちゃごちゃうるさい!」
ダニエルは行人に向かって拳を振るうと行人は天井を抜けとばされた。だが行人は何事もなかった様に受け身を取り列車の上に立っていた。
「全く。いきなり乗務員を殴るとは妨害行為ですよ」
ダニエルもその声を聞くと上に高く飛び行人と同じ所に立つ。
「ガババ。俺の拳を耐えるとはお前、普通の人間じゃないな」
行人も服の誇りを祓うと笑みを浮かべると、
「そちらもこれだけの怪力。私と同じ同類と感じます。貴方、ロボットですね」
するとダニエルは大きな声でガババと笑うと、
「そう。俺はダニエル・カーチス。セブンセンシズの元幹部にして生粋のロボットだ」
ダニエルが力強いポーズを決めると行人は、
「なるほど。セブンスの組員さんですか。それがうちの島で有る帝国鉄の列車で暴れるとは相当ミーコさんはセブンスにとって特別な存在なんですね」
「ガババ。分かってるじゃないか。お互いの為にここはミ、ニート様を渡してはくれないだろうか」
すると行人はサングラスを整えると、
「ですが残念、無念、また次回。この三番列車真田丸に乗ったお客様は全員、帝国鉄の特別なお客様。ただし暴行やダイヤを乱す様なお客様にはすぐに降りて頂きますが」
ダニエルは再び拳を振るう素振りを見せると、
「ガババ。だったら力ずくで奪うだけだ!」
「足りない。正確さが足りない」
ダニエルが拳を振るい終えると行人は平然と避けて両手をダニエルの方向に向けると叫ぶ、
「スチーム!」
すると行人の両手から白い蒸気が放たれてダニエルは目の前が真っ白になった。
「ガババ。な、なんだこれは目の前が見えん」
その蒸気の中で行人の声が聞こえた。
「足りない。貴様には情熱、思想、鍛錬、素早さ、何よりも蒸気機関が足りない!」
蒸気が晴れるとダニエルの首にワイヤーロープが巻かれて降りダニエルもそれに気づく。
少し先に居た行人は深々と頭を下げていて一言。
「ご退場ありがとうございます」
ワイヤーロープは徐々に張りつめダニエルはその先の電柱に繋がって居る事を確認した。そしてしばらくしてそれに引っ張られてダニエルの体その悲鳴とともには走る列車から離れ落下しその姿は消えてった。
その後。ニートと行人は安全に帰って来た。
「お疲れっす行人さん」
「中々遅かったじゃないか」
蝶子とミルクが出迎えた。ニートは行人に向かって平謝りをすると行人は頭をかきながら、
「いやいや。まさか相手が私と同じロボットとは思いませんので少し手間取ってしまいました。ガババ」
「ん? 何だいその変な笑い声は。まぁ、良いや。良かったなニート。ここが三番列車で」
ニートは平謝りを続けながら、
「はい。すいません、すいません。本当に助かりました。行人さん。本当にお強いんですね」
「そりゃそうっす。この三番列車の行人さんと言えば帝国鉄でも三番目に強いって事っす。そこらの相手じゃ勝てないっすよ」
「え、この人そんなに強い方だったんですか!?」
行人は頭を掻きながら四人は食事を続けた。
終
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