第6話
翠々千と朔。
あの2人とは腐れ縁ってやつで、何だかんだ付き合いが長い。
翠々千の奴とは、家が近所で親も仲が良いもんだから、ずっと一緒だ。
冷静に考えたら俺の青春には、翠々千の登場が多過ぎる。
「やっぱ気持ち悪」
朔は、小中と同じで、高校は離れた。
だからまさか、同じ大学に通う事になるなんて考えてもなかった。
でもまあ、無愛想な朔と、新しい環境ってやつに弱い俺らからしたら、このメンバーが揃ったのは有難い事だった。
そんな気兼ねない関係、というかあいつらは他人に気を使ったりしないだろうが、あいつらの辛辣な態度とか、マイペースっぷりとかはずっと変わってない。
それでも、一見、何の変化もなく、穏やかに過ぎている様に見える俺達の日常は、あの時から確かに変わってしまった。
"あの出来事"は、俺達に変化を生んだ。
いや、俺達の関係に、と言った方が正しいかもしれない。
そして何よりも、翠々千自身を。
人は誰でも変わりゆくものだ。
不変な者など居ないだろう。
それでも、あの出来事が俺らに齎した変化は、決して望まれた形ではなく、歪なもので、出来るならば不変でありたかったと今も望んでいる。
翠々千はあの出来事を覚えていない。
今も、あの出来事に関連するようなとか、悪夢とか、様々な要因で頭痛や、過呼吸が起こるようだが、あの出来事のことを考えたら、その程度で収まっている事は、寧ろ幸いと言えるだろう。
絶対に思い出させてはいけない。
忘れる事で、なんというか、保たれている翠々千の心は、耐えられず、あいつを壊すだろうから。
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