第5話

俺の話をしっかりスルーして2限に講義に向かった2人の後ろ姿を見送り、場所を移動することにした。


此処は人が多過ぎる。

人気の無い中庭まで、3分程。


中庭に設置された自動販売機で、冷やされたコーヒーを1本買う。


最近のお気に入りだ。


別に、苦い物が好きな訳では無いんだけどね。

寧ろ、食べ物なら辛いものを好んで食べのだが、残念な事に辛い飲み物を売る自動販売機はなかなか珍しい。


いやそもそも辛い飲み物って何?


風の通る木陰のベンチを選び腰掛ける。


そのまま、背もたれに体重を預け、仰け反るように背伸びをする。



ああ、昨日の寝不足が祟ったのだろう。

何時もより瞼が重い。


それでも、こんな所で座って寝れるほど神経は太くない。


そうなると、2人が講義を受けている間、暇を持て余す事になる。


こういう時、ゲームでもする奴なら画面の世界に入れるのだろうが、残念ながら俺はゲームだの、機会だのってものに疎い。



欠伸をしながら、光を遮るように左手で顔を覆った。


「どうしたもんなかなぁ」


誰に向けるでもない言葉は、口から零れ落ち、誰にも拾われることなく消えて行く。


独り言なんか言ってる姿を2人に見られたら、

『大丈夫?あ、お前が頭おかしいのは元々か』

って、心配とも言えない心配をされるだろうなあ。


とか考えちゃう辺り、2人のこと大好きかよ、と自分で突っ込み、いやいやいやなんだそれ気持ち悪い、と否定する。

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