第3話

どかっとソファーに座り込む。


家に着くまでに、呼吸の方は大分ましになったが、頭の痛みが何時までも居座り続けているし、痛みに体力を奪われた。


タクシー乗ってくれば良かったな。


頭痛に堪えるように、瞼を閉じると、昨日の夜ろくに寝てないせいなのか、睡魔に誘惑される。


そのまま、ふわふわと眠気に身を任せ、微睡んでいると、突然現実に引き戻された。



プルルルルルルルッ

どうやら電話の着信音らしい。


「はい」


「翠々千(すずせ)、お前今どこ居んのー?」


聞こえてきたのは、少し高めの優しい声色。


……そういや、あの女、俺の事"鈴"って呼んでたな。

名前間違ってやがった。


まあ、名前聞かれた時に、"すず"って名乗った俺が悪いんだけどな。

すずって聞いて"翠々"と思い浮かべろって言う方が無理があるか……。

まあ、元々本名教える気なんてなかったし、どーでもいいか。



「翠々千?聞いてる?

今何処にいるのってば」


「ああ、悪い。家」


「ばーか今日授業あるだろ?」


「今日は行かない」


「……頭痛?」


「まあ」


「ってもなあ、お前これ以上休んだら単位落とすだろ?

ほら、キャラメル買ってあげるから。

ね?大学来て?」


「行く」


キャラメルで釣られるとか、どんだけ単純なんだ俺。

まあいい。

単位落とすと困るし、とりあえずシャワーでも浴びようと思い服を脱ぎ、初めて異変に気づく。



「ああっ!?あの女!」


体中に散らばる紅い跡。


やべえな、なんかこう……物凄く……

「萎える」

はあ、抑えきれないため息を吐き出し、それをかき消すように熱いお湯を浴びた。

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