青の衝撃『スープ』

 4月にハルカス美術館の『ピカソ 青の時代展』に行ってきた。

 通称「ブルーピカソ」と呼ばれる”若き”ピカソが描いた絵が公開されることは珍しいことだそうだが、この絵を知っているという人は少なくないのではなかろうか。

 さて、お題にもあるとおり今回の絵は『スープ』


 この絵、まず青い。


 なにが青いって、全部青い。さびしいくらいに全部が青い。

 部屋の中にはスープを手渡そうとする女性と、それを受け取ろうとする、彼女の娘と思わしき幼い女の子。女性と女の子の服は真っ青で、室内も全体に寒色。

 他にも絵の具はあっただろ! とつっこみを入れたくなるような青さなのだが、不思議なことに湯気を立てているスープがとても温かく感じるのだ。

 硬い母親の顔には、人生のあらゆる喜びを一切見出すことはできない。

 が、温かなスープ。そして、微笑みを浮かべながらそれを受け取ろうとする女の子。

 この二つが、なぜか見ているこちらの幸福感を呼び起こす。

 味つけは塩だけ。

 具なんて何も入ってないのかもしれない。

 それどころかスープとは名ばかりの、お湯なのかもしれない。

 もしかしたら、これが母親が用意できるたった一杯のスープで、彼女はそのすべてを娘に差し出そうとしているのかもしれない。

 しかしその『スープ』を受け取ろうとする娘は、親のそんな苦労をいまだ知る年齢ではなく、ただそれを受け取る喜びに満ち溢れている……。そんな絵なのだ。


 ピカソは当時刑務所に多かったといわれる娼婦とその子どもたちの貧困に心寄せたという。

 ピカソの訴えたかったことがなんであれ、わたしにはこの絵を見るたびスープの、そして、青の温かさを思い出すだろう。

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