ど素人の美術鑑賞

竜堂 嵐

犬。コロコロ。。。『百犬図』

 初めて取り上げる絵にしては、はっきり言ってハードル高い。

 なにせ、描いたのは伊藤若冲。

 生誕300年記念で最近注目されまくりの、知る人ぞ知るにわとりの絵の妙手。

 でも、ここで取り上げるのは彼が絶賛されたにわとりさんじゃない。


 そう、それは「犬」


 しかも、わたしは犬派ではない。猫派。まちがいない。

 理由は単純なもので、幼い頃最近はあんまりお目にかからなくなった野良犬に追いかけまわされたあげく、手首を噛まれたからだ。

 大事には至らなかったし、ケガらしいケガもしなかったが、以来どうにも犬(特に中型犬より大きいの)が怖い。

 ところがどっこい、子犬はやっぱり愛くるしいし、でっかい犬の腹に埋もれて寝たら、どんなに幸せであろうと、つい考えてしまうのだが。


 そう。怖いながらも愛くるしい犬たち。

 それすなわち、伊藤若冲の『百犬図ひゃっけんず』と、人は言う。


 どんな絵かと言われれば、丸いフォルムの犬たちがひたすらコロコロ。

 この時代だから、当然こいつらみんな日本犬だろう。

 あっ、でも不細工なこいつはちんかな。

 などと考えつつ、湧き上がってくる感情はひたすら

「かわいい」


 これがまる。まるの力なのか? 

 そもそもまるだと、なぜかわいいんだ。

 句点のまるなんか、いくら並べてもちっともかわいくないのに。


 実際やったら大問題だが、百犬図の犬たちを順に積んでって中ほどにいるやつを

 ちょいとつついてやりたい。

 やつは「わう」と鳴いて、コロコロ、コロコロ転がり落ちていくに違いない。

 ……ああ。絶対かわいい。

 つまるところ『百犬図』の一番の魅力は、描かれている犬たちがそんなつまらない遊びにつきあってくれそうなところなのである。

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