第23話 本選 1
予選は魔物をフルで参加させたが、本選はそれを行うことができない。戦いに出してよいのは一体までだ。そうしなければ、数の暴力で勝負にならないと危惧した運営が規制を行った。
決して彼のためだけに作られた制限ではない。
前からそうだ。
そのため、テイマーは数の暴力で予選を突破しても、本選では勝つことができなかった。本選まで進む人間は人間とよべぬ力を持ち、一対一であれば負けることがありえないほどの猛者ばかりだ。それがただの魔物で突破できるほど、甘くは無い。
いくら教育しても魔物は魔物。
魔物ばかりを相手にしてきた参加者たちにとって格好の獲物なのだ。
そういうこともあり数が使えないテイマーにとって鬼門になる。
だが、それは前までのお話だ。
予選ですら数の暴力を使わなかったものがここにいる。
無表情で、何を考えているかわからない人形のような人間、彼。
彼がこの戦いにおいて圧倒的数の暴力を使わずに予選を突破した始めてのテイマーだ。
3匹という少数勢力で予選を突破した。
地獄に変えたとはいえ。
民衆が言葉に詰まったのは、予選を地獄に変えたことが一番ではある。だがそれだけではない。恐怖をした、おびえもした、だけれども彼が恐れられているのはまだあった。
はじめてをつくった。
例外をうんだ。
ありえないと思われたことを、ありえたことにした。そういう実力があるやつが凄惨なものを生み出せば、何をしでかすかわからないと怯えられるのも仕方が無いことなのだ。
目立つもの、価値観にそわないもの、強いもの、をはじきつぶそうとするのが民衆意識だ。
出るくいはうたれる。
民衆は危険な彼をくいとして打ち付けたいとは思っているが、何もできずにいた。
逆に。
出たくいに打たれることになってもかなわない。それを危惧した民衆は結局何もできずにいた。
それも今日まで。
いくら彼という存在が強大であろうとも、2回戦目は進めないだろう。何せ対戦相手が対戦相手だ。
なりあがった支配者、出たくいは民衆とは違う鎚が打つ。
静かだった。
第一予選と続き、第一本選へと舞台は変わった。
彼は今、開いた門の奥、暗闇の中から一匹の魔物をつれて、現れた。緊張から体が震えそうになっているが、それはいつものことだ。
気にすることではない。
その入り口付近では、暗闇の中ではあるが僅かに動く影がある。彼のボディーガードであり、家族のオークとリザードマンだ。
二匹は彼の指示で待つよういわれて、そのとおりにまっている。
残りの一匹。
牛さんは。
彼と一緒に戦いの場へと赴いていた。
中央まで歩き、開始位置とされるところで動きを止めた。
彼は待った。本選第一回での対戦相手をまっていた。
やがて向こう側から姿を現した対戦相手。屈強な肉体とがたいのよい男、黒のコート。歩くたびに羽ばたくコートの隙間からは独特の民族衣装がみえた。コートと同じ黒色の華やかさを一切排除した地味な衣装。華やかさはないが、抑えるところは抑えたような規則性があった。
中華服といえば目立ちすぎるが、それを徹底的に黒というもので統一し、華という華はすべて排除されていた。目がいくのはコートのほうだ。
コートのほうがまだ目立つ。
男は彼を見つめ、頬をゆがませた。獲物をみつけた猛獣のような凶暴な笑み。初めて出会った変わり者のテイマーに男は己を抑えることができないようだ。何せトゥグストラを支配下に収めた化け物と聞く。
誰の指図も受けず、仲間意識なんか薄いあの獣を支配したのだ。
トゥグストラは彼に頭を押し付け、ぐりぐりとこすりつけていた。
あの化け物が人間に。
媚をうっている。頭を押し付け、己の弱さを訴えている。
自然と男は笑い出しそうになった。さすがにやめたが。
ただの愛情表現なだけなのだがそうは思われなかった。
トゥグストラがなぜ恐れられるか。
圧倒的な力はある。だが、それじゃない。力だけならばミノタウロスのほうが強いのだ。ただ、彼が支配するトゥグストラは例外のようだが。それでもごく一般的なトゥグストラはミノタウロスには勝てない。
それでもミノタウロスよりもトゥグストラが恐れられているのは。
人間の手に余るからだ。
ミノタウロスは人間の手で支配できる。刻印というものでも支配はできる。
だがトゥグストラにおいては人間の文化を理解できない。いくら教育をしても奴らは決して覚えない。人間という弱者に対して従うことはありえない。徹底的な上下関係を持ち、弱者とみれば人間以上に同属を裏切る。
殺しはしない。
死ぬまでは追い詰めない。
同属に対してもそのぐらいの自制心がある。
刻印に関して強力な耐性があるようで、まるで意に返さないといわんばかりに人間の指示を聞くことは無い。
人間の手に負えない魔物として有名どころの一角である。隣町のベルクというところではトゥグストラの猛威に怯え、通常の城壁から一定の距離に魔物よけの結界をはるまでだ。
安くは無い。
結界の維持費だけでも騎士の1軍団の金額は飛ぶ。
そのため、ベルクは無法者だろうと何者だろうと金がありそうな、また実力がありそうな人間を簡単に招き入れる。
金を落としそうな、金を生み出しそうなものを集めて今の形を維持しているのが現状だ。
そんな魔物を従えている彼こそ。
己と同格の化け物と判断した。
男は対戦位置でとまった。
彼をライバルと認定した男。
その男こそ、冒険者Sランクという人類の枠をはずれた化け物である。Aランクの上に位置するSランク。それが冒険者最高ランクとして認定されている。この王国でもSランクは数は少ない。
指で数えられるぐらいなのだ。
逆にAランクはそれなりに多い。
AとSには格別の差がある。たかが1ランクしか変わらないのにその壁は大きかった。Aランクは冒険者として一流として目指すべき目標に対し、Sというのは冒険者として区別されるのではなく、兵器として扱われる。
冒険者でありながら冒険者として扱われない。
Aランク100人迫ったところで、Sランクには勝てない。
絶対の差。
人外。
そんな化け物がこの戦いに参加したのは敵を見つけるためだ。金のためではなく、名誉のためでもなかった。
Sランクに到達した男の前に立ちふさがるものは現れず、障害となろうとする壁も出てこない。
退屈だった。
せめて敵がほしい。
一撃で葬れるような雑魚ではなく。
ライバルが。
男は己と同格の敵を求めている。前回は大会に参加した。面白いやつはいるかと思ったが誰もいなかった。すべて一撃で沈んだ。
オーガを持ち出したテイマーもいた。だがつぶした。
つまらない。
今回も参加して現れなかったらどうしようかと悩んでいたところに3人の有力者を見つけた。予選第一回を惨劇にそめた彼と小さな騎士、そして最後の8回戦目の勇者。
たった3つの希望。
男にはそれだけで十分だ。今までおらず、あいていた心を敵という対抗心によって渇望がうめつくした。
小さな騎士のほうは壊れるほどはつぶさない。まだ未熟なところが見えた。この大会では通じるであろうが、化け物というランクまでは今は届かないだろう。
だからつぶさない。
成長するまで待つ。
ライバルとして己の前に立ってくれることが楽しみだからだ。
だが、目の前の彼と勇者は違う。
あれならば楽しめる。
手加減はいらない。
男はそういった思いでここにきた。
対戦位置でとまり、彼を見た。
彼もそれに応じた。ただ男を見て、魔物を目配せした。一瞬だが魔物も彼の視線に応じうなずいたように見えた。
男には目の錯覚かと思えた。
だが、すぐにその考えを捨てた。
この大会は男にとってレベルが低い。だが、その中でも目をつけた3人のうちの一人だ。
決して馬鹿にしてはいけない。
それは己の敵となるべき存在なのだから。
馬鹿にした相手を倒しても、己の勝利が薄くなるだけだ。その彼が魔物を己の手先に操れるというのであれば。
それは喜ばしいことだ。
己は武器を持たない。
己の体のみ。
その一つでここにいる。
男は王国から遠く離れた華やかな国で生まれた。国の文化が美というものに埋め尽くされ、男には故郷でありながら、居心地がわるかった。
男はもう少し血が踊るものを望んだ。そうした思いから男は必死に探し、ようやく見つけた。
魔王軍とまだいざこざがあり、隣国とも仲が悪い、いってしまえば争いの種がつきず、絶えず血が流れる王国にやってきた。
名は クキ。苗字はすてた。
名前だけがここにある。
勝負しよう。
最高の戦いを。
己は望んだ。
トゥグストラを支配した人類未踏の人間と。
人類を超えた肉体をもつ人間。
化け物同士が今ここで衝突する。
そしてすぐ終わることになる。
始まりの鐘が響いた。それと同時に牛さんが駆け出した。一気に全速力に加速し、クキをひき殺さんとばかりつっこんだ。
予選でクキを見たとき、彼は通常の手段ではかてないと本能で理解した。手加減なにかしてても負けるだけだ。弱者だからこそ、強いもの、関わったらいけないタイプという人間はよくわかる。常に負け続けの人生だ、勝てない相手なんかたくさんいる。
その中でもクキは何をしても勝てそうに無いという確信がある。勇者と同じように感じた絶対強者の力。
予選でクキは重装備の参加者たちを軽々と持ち上げて放り投げていたところを見ていたのもある。というかそれが原因。
彼からすれば常人よりも強い人間は化け物。常人でも化け物としてみている彼にとってクキは人をはずれてた化け物のトップクラスと読んでいい。
彼は油断しない。
本気で牛さんにつっこませた。怪我をするとか、相手がもしかしてするかもという感情は考えないようにして、指示をだした。
牛さんが勢いクキにせまった。クキは体を斜め前方にそらし、突進をぎりぎりとかわした。牛さんの側面とクキが元の体制に戻ろうとする動きが重なったとき。
牛さんが横にふっとんだ。ふっとんだ体は地面をバウンドし、そこから引きずるように体が投げ飛ばされた。
縮めたばねが反発するようにクキの体が元の位置に戻ったとき、肘がつきでていた。その肘が牛さんの側面を捉え、衝撃で牛さんをふっとばした。
それは一瞬の出来事だった。
観客が一瞬静まり、歓声をあげた。彼が関係したことで黙っていた民衆の声のストッパーがはずれ、歓喜をうんだ。
彼が所有する最高戦力の一匹が一撃に吹っ飛ばされた姿は観客たちのストレスを発散するのと同時に今まで抑えてきた感情が爆発したためである。
出るくいはうたれる。
たかが一撃。
あてた程度で観客はクキがかったつもりでいた。
支配者ざまぁみろ そういう悪意があり、彼に親指を下に向けるものもあらわれた。親指を下に向けてやる行為は異世界でも同じ意味をもっていた。
観客席から物がなげこまれた。あちこちから飛び交うごみの群れ。それは彼に直撃し、衝撃をともなった。
牛さんは立ち上がらない。
手ごたえはよかった。
受け流しも無く、カウンターがきまった。
起き上がる様子も無く、クキは牛さんから目をそらした。
クキはこんなものかと退屈そうに息をはいた。
創造していたのと違う、クキが考えていたのは接戦だ。命をかけた戦い、相手の様子を見ながら隙を見ては攻撃を行う。
そういうやりとりを望んでいた。
だが一撃。
彼と牛さんが意思を確かめ合うようにしていたのは錯覚で、ただの魔物。
ただのトゥグストラだった。
やみくもに突進して。
つっこんできて。
カウンターをくらって沈んだ。
つまらない結果に終わった。期待は惜しくもくずれたわけだ。
期待はずれに終わった。
観客のごみに彼が苛められている姿にさらにクキはため息をついた。この程度も我慢できないのかと。痛そうに身をよじっていた彼。
歩き出した。
彼に向かって。
普通の参加者なら降参させるが、彼はさせない。期待させておいて、このざまだ。少し地獄を見せる必要がある。
彼が起こした第一予選と同じように味わわせてやる。
油断していた。
あっけなくおわったと思い込んだ瞬間、クキの集中力が途切れた。今までツンと張った糸のような緊張が今はたるんだように動いていた。
民衆が声をあげた。
それはどこか悲鳴にきこえた。
ざっざっ
観客の暴言とごみが散らばり、それは巨大な音となっていた。魔法で会場の音を響かせたことも重なり、戦いの場の音をかき乱していた。
ごみが落ちる音。
観客のスタンドアップと大声。
ひどいものだった。
普段の観客なら節度を守るのだが、彼に対してはそれがなかった。普段とは違う民衆がもっともやってはいけない行為を行っていた。
禁止行為の中にまじるわずかな音。
何かをかける音。
暴言は何かをクキに伝えるようにも聞こえた。
ざっざっ
劇音。
ここまでうるさくなるのか。クキは思わず耳をふさぎそうになったが、それもそうだと納得した。
嫌われものや目立つものは弱い立場を見せた瞬間キバを見せるのが人なのだ。
己も弱さをみせればこうなる。
だからこそ、クキは耳をふさがず、彼にせまった。
距離としてわずか5歩。
悲鳴が。
声が。
ざっ。
かき消している。
何かをける音が聞こえた。
先ほどからごみの落ちる音と声にまじって何かがきこえていたのは気づいていた。だが期待はずれだというクキの感情から生じた油断はそれを重要視していなかった。
終わりが近づくであろう彼の顔を始めてみた。
彼はずっとクキを見ていた。
無表情で。
無感情で。
何もあらわさない人形。
それにクキはとらわれた。テイマーの彼自体は弱いとクキは思っている、それは確信している。
余裕そうに予選を突破した彼と目をそらせば消えそうな気配からみてもアサシンとかそういう類の職業だというものを含めても己より弱い。
それは事実。
それは目の前の彼だってわかるはずだ。牛さんを吹き飛ばしたクキの一撃の強さ、鍛え上げた肉体は彼のような気配が薄く、人の油断を取らなければ勝てないアサシンでは届くものではない。
圧倒的な実力差があるはずなのに。
なぜ。
ん?
油断?
クキは牛さんを吹き飛ばした横をみた。
そこには倒れた姿はなく、驚きの声をあげるまもなかった。彼を見つめようと横にそらした体を戻そうとしたとき、気配が真後ろから来た。とっさに振り返り、吹き飛ばされた。
反撃しようにも。
迎撃しようにも。
牛さんが飛び掛ってきたものをはじく力はクキにはない。そもそもトゥグストラは飛び掛らない。ただ闇雲に突進し、相手を粉砕することしかできない能無しの魔物のはずだ。
現にクキが倒してきたトゥグストラは皆そうだった。
経験。
ここでも経験がクキの邪魔をした。
大の字で衝撃で地面をすべる。体が引きずられ止ったのと同時に立ち上がろうとした。だがそれはできなかった。
第二の飛び掛り。
空から地面へ。急降下した牛さんの巨大な足は大の字でうつぶせになったクキの両肘を捕らえ、踏み砕いた。そしてのしかかるようにクキを拘束した。
「があっぁぁぁぁあ」
クキが痛みに声をあげた。
民衆が先ほどからあげていたのは最初は歓声だが、クキが目をそらしてすぐに立ち上がった牛さんに悲鳴をあげていたからだ。
観客がごみをなげ、声をあらげていたのと魔法による音量増大という邪魔な機能がそれを阻害していた。いろいろ混ざった音は耳が良いエルフですら聞き取れぬ混乱を生み出していた。
抑圧された民衆は必ず暴動を起こす。
彼によって起こされた抑圧がなくなった民衆は自ら、くいをうつ槌の邪魔をしてしまっていたのだ。
普段のクキなら油断していても気づく。こういう混乱の音の中でも聞き取れるぐらいの化け物ではある。
前回の大会と同じかもしれないという考えが戦いの場にいるという感情を消し去り、街の中にいるような感覚でここにいた。
それだけで。
クキはまけた。
Sランクであっても、油断をすればAランクモンスターを倒すことはできない。最初のカウンターは本気で挑んで行ったからこそ、容易に行えた。
だが弱点を自らみせた愚か者が奇襲を防げるわけも無い。倒したと勝手に思い込んだ強者に弱者の意地はわからない。
このままではまずい。
何とか脱出しなければと考えた。
「きさま!!どけ!!」
肘をつぶされ、上から押さえられて拘束されている中でもあばれて牛さんを振り払おうとする。
「どけ!!!」
その一言を発して。
「きさ...」
きさまといおうとした。
それはいえない。
頭に衝撃が襲ったからだ。
牛さんの頭突き。
突進ばかりする牛さんの頭は固く、鋼鉄のような強度をほこる。その鋼鉄がクキの頭を揺らし、言葉を最後まで言わせなかった。
「な」
頭突き。
「ふざ」
頭突き。
「や」
頭突き。
「き」
頭突き。
最後まで言わせない。言葉を発する元気があるのだから大丈夫というなぞ理論によって牛さんは頭突きを敢行。
逆に牛さんの頭突きをくらっても言葉を発することのできるクキは人間というランクをこえている。
普通の人間なら良くて脳震盪。
悪くて ばんとはじけ飛ぶぐらいの衝撃がクキを襲っている。
何度もくらう。
口を開いた瞬間。
頭突きをうけた。
まるで拷問だ。
声もごみも拷問の最中でやんだ。民衆がクキがかつと思ったからこそ最初に声を荒げ、牛さんが動き出した瞬間に悲鳴をあげる。そういった忙しい流れをこなす観客も今は自分の行動を後悔しはじめた。
勝てるとおもったからこそ、彼にごみをぶつけた。
暴言をはいた。
出る杭はうたれる。
だが、彼は出た杭ではない。
今でているのは観客だ。観客が杭として表にでていた。
何度も牛さんがクキに頭突き。
彼にはむかったもの。
敵に向かったものは。
拷問という洗礼をうける。
出る杭はうたれる。今までは民衆が打ってきた。それが逆の立場になっただけのこと。
もしかしたら報復を受けるかもしれない。
第一予選は惨劇だ。
第一本選は拷問だ。
民衆はただおびえ、己の軽さを恨むだけ。もう少し、我慢していれば。
クキの勝利だったというのに。
あわれなクキ。
クキは何もいえず、焦点があわなくなっていた。頭突きが20をこえたころにはさすがの化け物も目をまわしていた。
魔物に耐えた人間の体なんて頭が狂っている。
彼はそう本気で思った。
「...降参を」
彼は静かによびかけた。
今回目は瞑っていない。
本気で参加者として動いた。
最後まで戦いをみた。
クキはその勧告に。
少し躊躇するように口をひらいた。
「み、み、みとめる」
頭突きが何度もくれば一つ一つ言葉を発するのにも注意する。だが彼の呼びかけによって声を発することにかんしては牛さんは頭突きを行わなかった。
降伏をクキが認めた瞬間、彼はきびすをかえした。
オークとリザードマンが待つところへ動き出した。クキから飛ぶように退けて彼の横に追いつくように走り出す牛さん。
緊張した。
ごみをなげられたのは、本選というのがこういうものなのだと勝手に彼は思っていたから別に気にしていなかった。野球でもマナーの悪いやつはごみはなげるとかよくあるようだし。
彼は気にしない。
だが牛さんは気にしていた。
誰が彼に投げたのかをしっかりとみていた。
オークもリザードマンもそれは入り口付近でしっかりとみていた。
愚か者は許さない。
彼が止めるだろうから何もしないが。
許せない。
この3匹の意思は同じだった。
主人に対して。
親に対して。
家族に対して。
ふざけた行為はゆるされない。
怒りを心でおさえ、彼に付き従う家族たち。
かならず、必ず報復を。
魔物は人間よりも強い。
当たり前のことを当たり前のように証明した。
たとえSランクという人外でも。
例外はない。
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