外は宇宙空間

僕らは空気の中を泳いでいる。

空気中を揺れる花。空気中を漂う雲。


その人は、一度僕の体に入って出た空気が無いと、死んでしまう。


小さな密閉された部屋。僕の吐息でを充満させる。そこでだけその人は酸素ボンベを外す事が出来る。


マスクをした二人が手をつないで歩いている。僕の口からその人の口へつながっているチューブを隠すためだ。


ビニール袋に入れた吐息。離れた時はこれをストローでちびちび吸う。

他の人と向かい合っているときはチューブを伸ばしてマスクの下でちびちび吸う。

エアコンプレッサーを買ってきて缶スプレーから吸う方式を試してみる。そっちの方が不自然にならない。

鼻チューブは嫌らしい。


僕の吐いた空気を吸わないと、だんだん空気が薄くなってくるように感じてきて、目眩がして、呼吸困難な状態になるという。


部屋の外は水中、もしくは宇宙空間。その人は言う。


やがて医者に診てもらってわかったこと。僕の体から出た息には他の人には無いものが含まれているらしい。

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