どこから来たの?
――どこから来たの?
へえ、この都市の工場で作られたんだ。じゃあ私と同じね。私たち、顔もどこか似ているし――本当の姉妹みたい。もちろん私がお姉さんよ。背格好は同じくらいでも、私は作られてからもう三年にもなるんだから。なんでもきいてちょうだい。
え? ここが、どういうところなのかって? いつ外へ出られるのかって?
んー……はっきり言うね。私たちは運が悪かったわ。外へ出られる日はもう来ないの。ここはね、来たが最後、この場所でこき使われ、壊れたら捨てられるだけ。そういうところなの。
やだ、そんな顔しないで。お客をとるのはそりゃあつらいけど、たまには楽しいこともあるのよ。そうね、例えば……もし客のなかに、この人とはまた会いたいなあ、また来てほしいなあって人がいたらね、こうして指を絡めて……ゆびきり、げんまん、必ずまた来てくだしゃんせ、指、切ったーって。そうすると、幸せな気持ちになれるんだって。
そうそう、絡めた指は離すの。離すだけ。べつに本当に指を切ったりはしないのよ。昔は本当にね、スパッと切ってたこともあるみたいだけど、そうしてもほとんどの相手は二度と来やしないから、ばからしくて本当に切る遊女はいなくなったんだって。
変な話よねえ。幸せな気持ちになりたいっていうなら、破られるとわかっている約束なんかしないほうがむしろいいと思うの。たとえばこうしてひやし飴を飲みながらおしゃべりしているだけで、じゅうぶん幸せじゃない?
ふふっ。私たち、気が合いそうね。
私は、蛍火。
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