ナマエトアナタ



12月24日、クリスマスイブ


聖夜の前日


キリストの誕生日の前日


俺には何の関係もないただの平日


そこら中で恋人がイチャコラしてやがる

俺だって彼女くらい欲しかったさ


クリスマスデートして、一緒にケーキ食べて、プレゼント交換して一緒に寝て…


今さら明日で人生が終わる俺には関係のないことだが、やはり改めて考えてみると悲しいものだ


さて、早く家に帰らねば

こんな寒い中じゃどうやって死ぬかなんて考えられない


商店街を抜けて少ししたところに俺の家はある

もう少し歩けば温い家だ






「…ねえ」





『?』

何か聞こえただろうか




「ねえってば…」




やはり聞こえた

この声はどこから聞こえている?



ふと左の細い路地を見てみると、小柄な人影が見えた





「あなた明日死ぬんだよね。だったら僕に時間を売ってくれないかな」





聞いたことのある台詞、単語、内容

もしかしてあの噂か?



「あなたは明日死ななければ、あと約50年生きる予定らしいから1年を5万だとすると…」



5万×50年=250万…

俺の残りの人生の価値は250万なのか


「ま、待ってくれ。君は何を言っているんだい?時間を売るなんて非現実的だよ。そんなの不可能だろう」


「それくらい簡単さ。僕には時間を買う能力がある。自殺しようとしてる人の寿命も分かるんだ。だからあなたに声をかけた。僕の噂は当然知っているだろう?」


「もちろん知ってるさ。でも、噂では対価は金じゃなかった。それは何なんだ?」


「さっき言った金額っていうのは、日本円じゃなくて

交換できる物に使えるポイントみたいなものなんだ。例えば"友達"は50万。」


「それは"恋人"ってのもアリなのか…?」


「もちろんさ。君が願うなら何でも手に入る。恋人は150万になるけどね」



「…少し考えさせてくれ」


「ご自由にどうぞ。僕は明日まで待ってるよ。気が向いたら外を歩いてて。そっちに向かうから。」



こう言って人影は去っていった


噂は本当だった


しかも俺に話しかけてきた


俺の人生は残り50年

1年が5万

友達と恋人を手に入れるならば200万必要だ

そうなると残りは10年…




一晩中悩んだ末に出した答えはこうだった

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