第120話 覗き見る視線ですか?

 スキルを発動し、バーサク状態と化した私は、最後の武装コボルトの首を切り落としました。これにて戦闘は終了……なのですが。

 流石に疲れましたね。私はもちろん、一緒に前線で戦ったティナもずっとバフデバフをかけ続けていたロッテも魔力が切れ始め肩で息をしています。


「異常も異常ね……1体なら100歩譲って装備をした魔物がいてもおかしくはないわ。でも群れはないわよ!」

「何なんだろうねー……これ、報告したほうがいいよねー?」


 採取の報告に加えてさらに報告とは……ネコ様と再会するまでの時間が伸びてしまうじゃありませんか。ですが、怠るのもあまりいい気分ではありませんから報告するしかないですか。

 私は悶々としながらコボルトを解体し魔石を取り出します。コボルトの肉は食べられませんし、皮も何か良い装備になるというわけでもありませんしそれも放置。もっと言えばこいつらが装備していた剣も弓も鎧も……目ぼしいものない!


「美味しくなーい!このコボルト割に合わないいいいい!!!」

「コーリィ落ち着いて。解体荒くなってるから。唯一の収入になる魔核欠けちゃうから!」


 おっといけません少し荒れてしまいましたね。欠けた魔核は価値が下がってしまいます。そんな失態をした日にはネコ様に顔向けできません。顔向けできなくても愛でさせていただきますけど……

 解体がようやく終わり残りのいらないものは全て私の魔法で焼却処分――放っておいてもよかったんですが、もったいない精神が発動してしまいました。余計に疲れますのにね。

 さて、漸く帰路につけますと思ったその時、周囲の警戒に当たっていたティナがハッと何かに気づいたのか、近くの木に目を向けました。私もロッテもその視線につられましたが、そこにいたのは飛び立とうとしていた小さな鳥でした。


「ティナ?あの鳥が――」

「コーリィ!あれ撃って!早く!」


 いつものティナとは思えないほど焦るような声。私は理由こそわかりませんでしたが、言われた通り、急ぎ発動のできるフレイムアローを小鳥に向けて発動しましたが……いち早く小鳥は飛び立ちフレイムアローは木々に揺れる葉しか燃やせませんでした。

 私のフレイムアローに続くようにコーリィが巨大な氷塊を生み出し投げつけますが、それも失敗。小鳥は空高く消えてしまいました。

 魔力が回復していれば、レイ・フレイムボールを使って命中させていたものの……ちょっと悔しいです。

 ですが、ティナは何故小鳥を撃つように言ったんでしょう?


「あの鳥、空気草取った時に感じた視線とおんなじものだったんだよ。」


 ティナのその言葉に私とロッテは揃って息をのんでしまいました。

 同じ視線を感じたということは、何者かが私たちを採取の時から監視されていた可能性があります。ていうか、視線が同じだと察するティナすごいですね。ワーウルフパワーですか。


「……ダッシュで帰りましょう。もし、今回の武装魔物とあの鳥が関係してるんだったら確実に面倒なことになるわ。"クイック・オール"」


 なけなしの魔力を用いたロッテの魔法は、私たちの足の速度を上昇させ、シャスティへと急がせました。まぁ、魔法使ったロッテはグロッキーでティナにおぶさているんですけれどね。



「ま た で す か。」

「またなんですね……」


 私たちの採取と武装魔物の報告を受けたサラマーナさんは大きなため息とともに大きくうなだれました。

 ここ毎日武装魔物の遭遇情報が相次いでいるんだとか。ほかの冒険者も討伐はしているのですが、一向に止む気配はない様子。どこから現れているんでしょうか。


「ただいまギルド内では、低ランク冒険者の依頼を出来るだけ簡単な採取依頼だけにするような話が進んでいるんですよね。下手に遭遇して死なれても困りますからね。」

「でも、それでも過信して挑んじゃうのはいるんじゃないの?」

「一応説明はするつもりですよ。それ以上のことはもう知りません。自業自得ってものですよ。」


 ……まぁ、そうなりますよね。

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