第111話 不可解ながら報告である。
突如消えた九尾に我輩は不信感を覚えながらも憑依したコーリィの体から抜け出る。……待て、あの魔力欠乏症がバステトの副作用ではなく憑依の副作用であるならば!なんて考えは杞憂だったようで憑依から抜けた我輩には何の以上も感じられなく、コーリィも何ともないようである。
「ロッテにポチはもう大丈夫なのであるか?」
「まだちょっと痛むけどね。動けはするわ。」
そう言ってロッテは腹の辺りを辛そうな顔で撫でる。ポチも同様のようで気丈にふるまっているが、脚はプルプルと震えているであるな。早めに街に連れて帰らねばな。
一応気配を探ってみるが、我輩たち以外感じられない。九尾は完全に去ったようであるな。
とりあえず、このことはギルドに報告せねばなるまいな。元々は盗賊の調査という名目でここに来たのであるからな。九尾が異常なのであるよ九尾が。
我輩たちは、盗賊の死体をそのままにシャスティに向かって歩を進めた。
そこで九尾の話になった。
「何で九尾は逃げたのであろうな。」
「九尾?アンタ、あの魔物のこと、知ってるの?」
ゲーム内で知ったことであるが、本で読んだと適当に嘘をついて誤魔化しておいたである。異世界のゲームのことを話してもちんぷんかんぷんであろうからな。
「案外、恐れて逃げたのかもしれませんよ。」
「しかし拮抗していたと思うのであるが……?」
「いえいえ、ネコ様あの時バステトを出すつもりでいたでしょう?」
その言葉に間違いはない。確かに我輩はあの時すぐにバステトを発動させようとしてコーリィに憑依をしていたのだから。それでも見ないうちからバステトが驚異だってわかるのであるか?
「ねーえ、ネコ。そのバステトって何?ネコがコーリィの中に入ったのと関係しているの?」
「む、そういえば教えていなかったであるな。」
今の今までティナの前でバステトは元より憑依をしていなかったであるからな。簡単に説明していたら次第にティナの顔が恨めしいそれに変わっていった。
「ずーるーい!コーリィばっかりぃ!私もネコと合体したい!」
「憑依と言え憑依と。」
その言い方だと誤解を生むであろうが!周りに誰もいないから良かったが……
しかし、ティナのやりたりやりたいとは違うが……ふむ。やってみる価値はあるかもしれぬな。
我輩は歩くティナの頭に乗り憑依を発動させた。他のものは知らないが、我輩の憑依は両者の合意が必要なもの。どちらかが拒めば失敗するスキルである。今回はティナ自身がばっちこいな体勢なのでコーリィ時同様、するりと入り込むことができたのである。
視界が高くなり右を向くとロッテが、左を向くとコーリィの顔が近くにあった。掌を見ると五本の指。我輩の思うようにグッパー開いたり閉じたりした。
「おぉ、やっぱり入ることができたであるな。うむ、コーリィの経験があるからすんなり行けたであるな。」
「うわ、元気溌剌なティナがそんな落ち着き払って……似合わないわ。」
いや、それには我輩も同意であるがな?今我輩が入っているからその苦言は我輩に刺さるわけであるからな?ちょっと心がいたいである。
ティナの方も我輩の頭の中で不思議だ不思議だと楽し気であるな。……うん?
『スキルが追加されました』
このタイミングでスキルが発現?別に魔核も食べてないし進化もしていないのであるが……まぁ得られたのであるから確認するであるか。ステータスっと。
ユニークスキル マ×コ▽〇ス
この流れは……バステトと同じようなあれであろうか?だが聞いたことがない名前であるよな。バステトと言えばエジプト神で、その流れからしたらティナは狼だからそれに近いアヌビスとか思ったのであるが、どうにも違うみたいであるな。発動も出来なさそうであるし。
・
・
・
その後、無事シャスティへと戻ることのできた我輩たちはそのまま、ギルドに向かい、盗賊の惨劇について説明した。この報告を受け、ギルド職員が数名現場に派遣されるとのことである。疑うわけではないが、人相を照らし合わせたいらしい。
その報告の際にだが、サラマーナから奇妙な話を聞いた。
――従魔が突如姿を消したり、主の命を奪い消えるといったことが発生しているらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます