第110話 黒くなったであるな!?
我輩の猫パンチを完璧な形で喰らった九尾は我輩の予想と反し、吹き飛ぶことなく地を削りながら後方に退いただけであった。今までの殆どの敵を吹き飛ばしてきた猫パンチだけあって我輩、ちょっとショック。
だが、重いのは間違いなく入ったはずである。九尾は苦し気に喀血しているであるからな。弱らせることができたである……る?
「ゴ、ゴロ、ギュルルアアアアアアアアアアア!!!」
怒り心頭。そんな言葉が似あう咆哮を上げるのは九尾……おい待つである。九尾お前、黒くなっていないであるか?明らかに強化しているであるよなそれぶっ!
油断した我輩を襲ったのは速度が増した九尾の黒い尾で、小柄な我輩を正確に捉え突き飛ばした。貫けなかった辺り、我輩の皮膚とか結構頑丈なのであるな。でもめちゃくちゃ痛いである!
「ネコっ!」
「ティナ、狐に集中するである!」
痛みをこらえ我輩のもとに向かおうとするティナを止めようとしたのであるが、遅かった。完全に九尾から意識を外したティナも尻尾を叩きつけられ、洞窟内に吹き飛ばされた。
ティナは心配であるが、今はこっちであるよな……何故って九尾がこっちに大きな足音を立てて歩み寄っているであるからな。その目には憎悪とも呼べる色がにじみ出ている。ちょっと待て、我輩まだ体が動かないのであるが?おい、前脚を上げるなそれ踏みつぶすつもりであるよなそれ!
「ガルルルルルルァ!」
九尾が我輩を踏みつぶさんとしたその瞬間、九尾の物とは違う獣のような叫びとともに九尾は横に吹っ飛んだ。
九尾を吹き飛ばした者の正体を我輩は知っていた。が、明らかに普通の状態ではない。その赤い髪はまるで獅子のように逆立ちその目は赤く血走っている。
「コーリィ、お前バーサク使ったのであるか!?」
(緊急事態です、お許しを!)
「うん!?」
頭の中に響くコーリィの声。これは主従テレパシーのものであるよな?まさかと思いコーリィを見ると見た目はバーサクの状態そのままであるが、前に見たバーサクよりも落ち着いている様に見える。
「お前コントロールできるようになっていたであるか?」
(少しの間みたいです!今だって徐々に体が熱くなって……ロッテ達は大丈夫です。すぐに戦線復帰します。それまでは私が!)
主従テレパシーでそう飛ばしてくるコーリィに我輩は意識が途切れそうになったらバーサクを即解除するよう伝えティナが吹き飛ばされた洞窟の中に進んだ。
洞窟の出口から2つの獣の声が聞こえることからコーリィは善戦してくれているようである。
「ティナ!無事であるか!」
「う、うん!痛いけど平気!」
思っていたよりも早く、ティナは見つかったである。九尾に吹き飛ばされ、ダメージを多少負っているようであるが、その目からは闘志は消えていない。それに動けるのに休んでいろと言うのは……絶対駄々こねそう。
ティナを伴い、洞窟の外に出ると、コーリィと九尾の戦いに、ポチも参戦していた。その後ろには的確に支援魔法をかけているロッテもいるであるな。
「キュルルルルルルァ!」
「ガルアアアアアアアア!」
「グルアアアアアアアア!」
獣の鳴き声が辺りに木霊する。これ、1つは人間の物なのであるよな。我輩も鳴くべきであろうか。こうニャアアアアアアアアアアってそんなこと考えてる場合ではないわ我輩の阿呆!
「コーリィ!無事であるか!」
(ネコ様!正直もうだめです!解除します!)
コーリィは残ったバーサクの力で大きく後ろに跳躍。我輩のもとに着地したところでバーサクを解除したのか、逆立った髪が落ち着いた。そして下がったコーリィの代わりにティナが九尾に向かって駆け出した。
しかし、この状況全くよくないであるな。ティナは手負いで回復させている暇がない。……仕方ないである。
「体を借りるであるぞ!」
「ご随意に!」
我輩の言葉を瞬時に理解したコーリィは片膝をついて我輩に向かって首を垂れる。
その頭に乗り憑依スキルを発動させ、我輩はコーリィの体を借り受けた。さらに……
「”バスt”」
「ギュオッ!?」
「えっ!?」
「ワウッ!?」
バステトを発動しようと瞬間、ティナたちの驚きの声が上がった。発動を打ち切りティナたちの方を見てみると……九尾が消えていた。
「え、えぇ……?」
思わず、コーリィの口で困惑の声を上げた。何であるか、この消化不良感……!
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実は新作を書き始めましたー
タイトルは「俺の知らないファンタジーを彼女は知ってる」です
異世界と異世界の狭間でそれぞれの異世界作品を書き連ねるトーヤとリューカルは、それぞれの世界のことを話し合う。でも2人の世界は2人の思っていた世界とどこか違って……?
現代ファンタジーです!なろう風で言うと、ローファンタジーの作品となっております!
基本的に1話読み切り型で息抜きにどうぞ!
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