第103話 修羅場なのであるか!
ティナの発言で本日2度目の空気が凍った。このでかいゾンビの氷像を見る限り、ティナは、コーリィと相対す氷の力を使うみたいであるが、空気も凍らせるのが得意なのであるかこいつ。
我輩は、ペット呼ばわりされたコーリィに恐る恐る視線を向ける。
うぉっ、目線を落として肩が小刻みに揺れておる!?しかも拳も固めているである!
ロッテもコーリィの様子を見てあわあわと慌てふためていている。
これは避けようもなく、喧嘩が巻き起こるであろうな……さて、どうやって止めたものであるかな……と我輩が考えたその瞬間コーリィが動いた。
不味い、怪我をするようなことがあれば!癒しの肉球で治せても怪我をしたさせたの事実は残る。禍根になってしまえば2人の関係が悪くなるである!
我輩がコーリィを止めんと口を出そうとしてもコーリィのほうが早かった。
ティナの片手を握り締めたかと思うと
「あなた、良く分かっていますね!!」
なんてコーリィが言うものだから
「「……はぃ?」」
まさかの反応に我輩もロッテも気の抜けたような声が漏れた。
いやいや待て、そこはペット扱いされて怒るところであろうが!?平手打ちでもして怒号を上げるところであろうが!いや、それを望んだわけではもちろんないのであるがな?
言葉が出ない我輩とロッテを尻目に、コーリィはティナの手をぶんぶんと振りながら言葉を続ける
「そうです、私はネコ様の忠実なるペットであるべきなんです。可愛らしいネコ様の所有物に奴隷という言葉は少々似つかわしくないと思っていたんです!その点ペットならば平気ですよね!」
「ンなわけなかろうが!!」
これ以上何か変なことを言い出す前に、我輩はコーリィの頭を尻尾で思いっきり引っ叩いた。合わせてティナの頭も叩いておいた。1年前ならやらなかったが、これくらい成長していれば問題ないであろう。
「いだっ!」
「ひぅっ!?」
それなりに痛かったのか、2人は頭を抱えて蹲った。ティナの腕から解放された我輩は2人の間に座り、まずコーリィを睨んだ。
「コーリィよ、我輩はお前を
「え、違うんですか!?」
「違うわ!そんな心底意外そうな顔をするな!我輩はお前を金で買いはしたが、家族だと思ってるである。……だから、ペットなどというな。」
我輩の言葉に、コーリィは雷に打たれたかのように目を見開いた。そして、目に涙をためたかと思うと深く頭を下げた。
「ネコ様……申し訳ございません。そして、ありがとうございます。」
1年前に化けて出てきたディアント夫妻から託されておいてペット扱いなどしておれるか。
普段から我輩を慕ってくれているのは分かっていたであるが、まーさか、ペットを目指していたとは……変に悪い影響が出る前に気づいておいてよかったであるな。
さて、次だ。ティナに向かう。
「ティナよ。お前は今こうして外に出ているということはギィガの許可をもらってのことであるよな?」
「うん……」
「それはお前が一人前と認められたからであるな?」
「うん。」
「であれば、もう少し考えて物を言うである。村では良かったかもしれぬが、外の世界には外の世界の常識というものがある。」
「う゛ん゛」
ティナは、1年前我輩と別れることを知った時のように涙ぐみ始めた。その顔を見て、改めてこ奴がティナなのだと再認識させられるであるな。まぁあの時のように我儘を言ってないだけましであるか?
「コーリィが異常だったから大ごとにはならなかったであるが、いくら奴隷とは言え、ペット扱いをされれば怒る者もいる。我輩のように家族のように扱っているものからしても不快でしかない。」
「ごめんなさい……」
「お前は素直であるからな。一度失敗して叱られればもうしない、であるよな?」
「うん……え、と、コーリィ?ごめんなさい……」
不意に名前呼ばれ、頭を下げられたコーリィは慌てて手を振り、こちらこそ変なこと言ってごめんなさいと頭を下げた。本当にな!!
まぁ、仲が悪くなるよりかはいいであるか。歳もちか……くはないであるな。ティナ確か今年で11歳であるもんな。
そんなこんなで、事態は収束したが、疲れたであるな。臭いゾンビに、ムカデゾンビ、巨大なゾンビにティナとの再会。マグマタートルを狩りに行った時の何倍も衝撃があってさっさと帰って寝たいであるな。
おっと、ティナの依頼のこともあったであるな。……だが、いつかのジャイアントオークをも凌ぐ巨体を持って帰るのは骨が折れるので――
「ほい、"猫パンチ"。」
迫力もくそもない我輩自慢の技を凍った巨大ゾンビに叩き込むと、亀裂が瞬時に広がり砕け散った。
もちろん、粉々にしたわけではない。巨大ゾンビの頭と魔核が我輩の目の前に大きな音を立て落ちてきた。
ふっふっふ、我輩の計算通り――なわきゃない。ぶっちゃけ運頼みだったがな!そーんな、猫パンチで亀裂を調節なんて無理無理!上手くいって良かったである。
巨大ゾンビの頭部と魔核をマジックボックスにしまい込み我輩たちは帰路についた。
そこで気になることをティナに聞いてみた。
「ところでティナ、お前宿はどうしてるのであるか?」
「野宿してるけど?」
「え、1人で?」
「うん、1人で。」
我輩たちは全員で顔を見合わせ、一つの結論に至った。
「ティナ、我輩たちの宿にくるである。」
「あ、いいの!?」
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