第102話 1年越しの再開であるか!?

 その既視感の覚えるワーウルフの女冒険者は、その整った顔立ちを徐々に喜色に染めていく。はて?ようやく見つけたって……我輩を見ながら言ってるであるよな。

 女冒険者は、我輩たちに向かって歩き始めたかと思うと、徐々に速度を上げていき、歩きから早歩き、更には走り出し……速っ!?少なくともコーリィよりも素早く駆け、気づいたときには我輩はコーリィたちの背後で立ち止まった女冒険者に抱きかかえられていた!?


「ネコ様っ!?」

「えっ、いつの間に!?」


 反応が遅れてコーリィとロッテが振り返るが既に我輩は女冒険者の腕の中。しこたま撫でられているのである。……こ奴の匂いもどこかで……?ってそんな場合では!


「ちょっ、離すである!いきなり我輩を抱きかかえるなである!」

「あーっ!この喋り方!やっぱりネコだ!懐かしーよー!」


 我輩がしゃべると、女冒険者はさらに抱きしめる力を強め、手だけではなく、顔を擦り付けてきたではないか。たまにポチもやってくるであるけど!

 というか、懐かしい?我輩が今まで出会ったワーウルフって、それこそギィガ達ぐらいしか……え?


「あなた、ネコ様に何を!」


 女冒険者の奇行に呆気に取られていたコーリィは、意識を戻すと、我輩を取り返さんと手を伸ばすが、女冒険者はまるで後ろに目がついているかのように背後をちらりとも見ずに、近接戦もこなせるコーリィの手を軽々と回避した。そして回避した後、ようやくコーリィの顔を視認したかと思うとにやりと笑って


「何って折角の再開を楽しんでるだけだもん。」


 再開であるか……?ということはやっぱりギィガのいたワーウルフの村人ということになるであるよな。確かにあの村のワーウルフ達とは短い間ではあるが、仲良くやったであるが……ここまでのスキンシップをするほどの仲など、それこそギィガの家族くらいであるぞ?ティナはまだ小っちゃかったであるしな。


「再開って……あなた、ネコ様の何なんですか?」

「私?お嫁さん希望者。」


 女冒険者の発言にその場の空気が凍り付いた。かく言う我輩も、開いた口が塞がらないである。こ奴、今何と言った?お嫁さん希望者?待て待て待て、我輩そんな好意持たれるような出来事あったであるか!?ワーウルフの村で?ん゛ん?

 え、いや、いた。いたが……えぇ!?だっておま、お前、お前!?

 場が凍る中、唯一女冒険者だけが気にせず我輩を撫で続けている。じっくり見てみるとやはりこの女冒険者の顔立ちは見覚えがある。信じられないであるが、こ奴は……!


「お前、ティナなのであるか!?」

「あーっ!その言い方、もしかして忘れてたの!?酷いよネコ!」


 やはりこいつティナであるか!?しかし、その体は何であるか!?別れたのは1年前であろうはずなのに、コーリィと同じ……いや、ちょっと低いくらいであるか?それでも会った時とは比べ物にならないほど大きくなっているではないか。

 顔立ちもどことなく、母親のラナイナに似てきているであるな。既視感はそのためであるか。


「え、えぇっと、ネ、ネコ様?そのティナっていうこの人は……前、話していただいたワーウルフの……?」

「そのようであるが……ティナ、お前なんでそんなに成長したんであるか?」

「え?いっぱいご飯食べていっぱい運動して強くなったから?」


 いや、それが成就するのはもうちょっと期間を要するであろうが!1年で人間はそこまで大きくならんであるぞ!


「いや、ネコ様!それよりもです。お嫁さん希望者って!」

「んんー……いや、確かにティナが我輩を好いてくれていたのは察していたであるが、嫁と言い出すとは。」

「だって私ネコ大好きなんだもーん。」


 そう言うとティナは再び我輩に顔をこすりつけてきた。最初こそ違和感を覚えたが、この甘え様は、あの頃のティナのままであるな。姿は変われど中身は全然変わっていないようで安心したである。

 が、嫁云々は話が別であるがな!?

 そして、ティナが一人でここにいるってことは


「ティナ、お前もしかして複数人推奨の依頼を1人で行ったであるか?」

「ほぇ?依頼は受けたけど?複数人推奨って何?」

「お前凄い勢いで依頼受けていなかったであるか?」

「勢いは知らないけど少し駆け足ではあったかなー?」


 あ、間違いなくこいつであるな。

 まさか、やらかしたのが知り合いだとは……いや、身内ともいえるであるな。これは追加報酬とか言うの止めとけばよかったであるな。

 ティナ以外の我輩たちは、大きくため息をついたが、当のティナはよく分かっていなかった。


「ねーえ、ネコ。そういえばさ、さっきからこの人たち何?ネコのこと様付けで呼んでるけど?」

「あぁ、それはであるな。えっと、そっちの白髪のがロッテ。で、その足元の魔物がブラックウルフのポチである。」

「ネコ……私の本名、ラカロッテよ?忘れてないわよね?」


 忘れてた。が、それを口にしない。勿論であるとだけ言っておくである。

 ……ってあれ?ポチいつの間にかティナに向かって伏せをしていないであるか?何してるであるかこいつ。まぁいいであるか。敬意か何かを示しているのであろう。

 そしてコーリィを紹介しようとしたところで――


「私はネコ様の奴隷、コーリィ・ディアントです。この1年間、ネコ様のお傍を離れず、ずっとお慕いしておりました!」


 お、おう。まさかそんな自分から言うとわ思わなんだである。というか、何でそんな声張っているのであるか?

 対してティナは、思案気な顔を浮かべたかと思うと、すぐに何か思いついたといわんばかりの顔をした。


「あ、奴隷ってあれ?ペットってこと?」


 ……なんか嫌な予感がするである。

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