第101話 キモい洞窟である!
冒険者ギルドで追加依頼を受注した我輩たちは職員に教えられた通りの場所に急ぎ目で向かい、人が2人以上余裕で入りそうなほどの大穴を発見した。
「ここであるよな?そのゾンビの沸く洞窟というのは?」
「ですね。実際にそこにゾンビの死体が転がっていますし。」
ゾンビ《死体》の死体とは……?いや、動かなくなったゾンビというのは分かるのであるがな?まぁそれはさておき、コーリィの言った通り、洞窟の入り口の周りにはゾンビの頭部だとか手だとかが転がっており、そのどれもが、断面が凍り付いているではないか。
「例の女冒険者がやったみたいであるな。」
「急ぎましょ!簡単に倒せちゃったもんだから調子に乗ってどんどん先に行ってる可能性もあるわ!」
「ヴォウ!」
ロッテの言葉に我輩たちは頷き、ポチと我輩を戦闘に洞窟へと侵入した。
……臭いである。ゾンビの蔓延る洞窟なのだから当たり前なのであろうが、腐臭がもう、凄い。一刻も早く女冒険者を助けて出たいである。
ポチを見るとポチもポチですごく嫌そうな顔をしているである。
洞窟は一本道のようで一応確認はしているが、壁に隠し扉や隠し空間なんてものもない。しかし、何故かその何でもない壁からゾンビが這い出てくるのだから意味が分からないである。
とは言え、我輩たちにとってゾンビは相手ではない。強いて苦戦するというのであればロッテくらいである。そのロッテも自分にバフを掛けることでゾンビを打ちのめすことができるのであるから、ゾンビの程度が知れるというものである。
ちなみに、いつもは噛みつき攻撃を主とするポチであるが、流石に腐った死体は嫌なようで体当たりだったり前足でつぶしたりしている。
ゾンビを打ちのめしながら進んでいくと、1体、今までと違うゾンビが現れた。
その容姿というと人間の胴体はいつもの通りなのであるが、腕がカマキリのような鎌を持ち、下半身がムカデなのである。巨大なムカデ。
姿を見るや否や、ロッテは「ヒッ」と小さな悲鳴を上げた。いやぁ、これは上げるであるな。我輩だってキモいって思うであるもん。ほら、コーリィも嫌そうな顔。
ムカデゾンビは、その虚ろな目で我輩たちを視認すると――
「fじゃいpj;sdっじあrjwjぢっじゃい;wjヴぃh」
とまぁ、言葉にもなってない耳障りな叫び声をあげながら鎌を振り上げ振り下ろしながら突撃してきたのである。
もちろん奴だけではなく、普通のゾンビも目前にいるのであるが、ムカデゾンビはそれをものともせず、同族のゾンビを斬り捨てることも厭わず真っ直ぐ向かってきた。
なるほど、これは普通であれば難敵であろうが、我輩たちの敵ではないであるな。
我輩は3本のうち2本の尻尾で奴の鎌を縛り付け動けなくする。……っと、中々力が強いであるな。
「ポチ!」
ロッテが名を呼ぶとそれに応じ、ポチはムカデゾンビの顔面向かい体当たりを繰り出す。高速で迫る黒い物体を顔面に食らったムカデゾンビはうめき声を漏らしよろめいた。この好機にコーリィは杖を突きだし魔法を唱えた。
「"レイ・ラヴァ・ボール"」
この1年でコーリィの魔法の力は増大した。
今発動したものは、ファイアボールの上位ともとれる火の玉ではなく、溶岩の球を複数生成し、操ることでそれを敵にぶつけるというものである。
10個ほどの溶岩の球は四方八方からムカデゾンビに降り注いだ。
着弾し、一気に燃え上がるムカデゾンビに我輩はすぐに尻尾を放し距離をとる。正直、熱いのである。
我輩たちに一矢も報えなかった奴は苦し気に炎から脱しようともがくが最早遅い。
やがて体は炭化し、ボロボロと崩れ去り――魔核がカランという音を立て落ち、残りは消滅した。……魔核無事なのであるか……意味わからん。
「はぁーっ!気持ち悪かった!何あれ、あんな趣味悪いのなんで生まれてきたのよーっ!」
「ゾンビってあーいうのいるのね……思い出したくないわ。」
女子二人はさっきまでの醜悪な姿を忘れたいとばかりに頭を振り大きくため息をついた。我輩もあそこまで気持ち悪い系は好んで戦いたくないであるな。
ムカデゾンビとの戦いを終え、やれやれと一息ついたところで洞窟の奥から
「DuRuooooooooooooooooooOOOOOOOO!!!!」
と明らかに人間ではない何かの叫び声のようなものが聞こえてきた。
その声からはムカデゾンビのそれよりも力強さを感じさせ、声の主の強力さを感じさせる。
そしてそんな存在が、声を上げるということはそいつの敵が近くにいるということで――
「急ぐであるぞ!」
事の重大さに気づいた我輩たちは急いで洞窟の奥へと駆けた。
そして行き着いた先で見たものは……
限りなくでかい氷塊だった。その中には、化け物がいた。
見た目は巨人だが、よくよく見るとその体はゾンビが集合することで出来ていた。
こいつが動けばそれはもう、大きな被害が発生したであろうが……凍ってしまっては意味がない。
こんな巨体を氷漬けにしたのは、足元にいるあいつであるか!?そしてその者の銀髪の頭には犬のような耳がついている。あぁ、あれが件のワーウルフの女冒険者であるか?
我輩たちがその女冒険者に視線を向け、声を掛けようとしたところで、女冒険者の犬耳がぴくっと反応した。
「誰?」
気配に気づいたのであろう、振り向いた女冒険者は……ん?あれ、どっかで見たことあるような?あ、視線が合った。
どこかで見たことある。だが思い出せない。頭の中ではてなが止まらない我輩に女冒険者が呟いた。
「見つけた、ようやく。……ようやく!」
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