第100話 追加依頼であるか?

 闇ギルド騒動から1年、我輩たちは別段何かを決意して新たな世界に旅立った!――というわけは勿論なく、王都シャスティでのんびりゆっくりと依頼をこなしていたのであった。


 今、我輩たちは依頼報告をすべく、パーティ全員で冒険者ギルドに入ったのだが、それだけでギルド内の冒険者たちの半分ほどの視線が我輩たちに集まる。

 この視線の原因は、何も珍しい魔物の上に喋ることのできる我輩だけではない。……ほら、コーリィもロッテも整った顔立ちをしているであるからな。中には頬を染めている男もいるである。

 たまに下心全開で近づいてくる男がいるのであるが、そういう男は大抵我輩に尻尾でビンタされるか、ポチに噛みつかれるか、コーリィ&ロッテに言葉でボロボロにされるかである。何気に女組のがダメージ大きいであるよな。

 さて、そんなこともあり、今や我輩たちに下心目的で話しかけてくるものはいないので視線だけを感じながら受付まで向かった。


「お疲れ様です。依頼報告でよろしいですか?」

「はい。これが、マグマタートルの甲羅です。」


 コーリィの視線に応じ、我輩はマジックボックスから数時間前に狩ってきたその名の通り、マグマが煮え立つ甲羅を持った亀の甲羅を受付嬢の目の前にドンと3つ置いた。甲羅は亀が死んでいることで、すでに鎮火しているのでそのまま持っても大丈夫である。

 一瞬受付嬢の目が驚きに目を見張ったが、そこはプロなのであろう。すぐに気を取り直し、マグマタートルの甲羅を回収しその代わりに報酬である銀貨数枚を差し出してきた。


「確かに。それではこちらが報酬です。」

「ありがとうございます。では、私たちはこれで」

「あ、ちょっと待ってください。」


 普段であれば、依頼を完遂すればさようならで終わるのであるが、今日は何やら違うようで、去ろうとした我輩たちを受付嬢が引き留めた。

 全員で何事かと見合わせたが、とりあえず話を聞いてみることにしたのである。


「実は皆さんが戻られる前に1人の冒険者証明が済んだばかりの冒険者さんが推奨人数3人以上の依頼を受けて行ってしまったんですよ。」

「何故ギルドはそれを受注したのであるか?」

「それがですね、受注したの新人の娘で。冒険者さんの勢いに押されて推奨人数確認し忘れてたみたいで。」


 新人なら1人でやらせずもう1人サポートに職員付けておけよと思ったのであるが、面倒だから口にしないでおくであるか。

 しかし何故我輩たちに声を掛けたのであろうか。


「その冒険者さん、女性なんですよね。だから男性ばかりのパーティには少々頼みづらくて。その点皆さんであれば実力も申し分ありませんし……受けてもらえますか?」

「戻ってきたばかりの我輩たちによく頼むであるよな……?」

「も、申し訳ございません。ですが、本当に急を要しますので。」


 その瞳に焦りを滲ませ、必死に頭を下げる受付嬢。我輩としてはその冒険者は、依頼をよく確認せず受けたのだから自業自得。我輩たちが苦労して助ける必要も感じられないのであるがな……


「報酬に色付けるであるか?」

「ちょっとネコ……」


 我輩の提案にジト目を向けるロッテ。大方、人の命がかかっているのになんてことを言い出すんだとでも言いたいのであろう。


「ロッテよ、我輩たちは慈善団体ではないのである。色付けてもらわねば苦労する意味はないであるぞ?」

「はぁ……分かったわよ。」

「ううん……分かりました。こちらの不備も原因ですから、ギルド長に掛け合ってみます。」


 であればと、我輩はその依頼を受けることに決めた。勿論、コーリィもロッテもポチも賛成でとりあえずその女冒険者のことを聞くことにしたのである。


「で?その冒険者はどんな奴なのである?」

「えーっとですね、ワーウルフの女性で……すいません、名前は記録し忘れてたようです。」

「ワーウルフ?」


 懐かしい種族名であるな。我輩、何かとワーウルフと縁があるようであるな。というか、その新人大丈夫であるか。教育ちゃんとするであるぞ。

 ともかく、そのワーウルフは、大量のゾンビが蔓延る洞窟に向かったそうである。

 ……なんか耳がざわつく気がするであるが、行ってみるであるかな。


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お久しぶりです、銀です。

この度、ポケットWi-Fiレンタルというあまりにあっさりとしたネットなし環境から脱したので投稿しましたぁん

あ、100話突破しましたありがとうございます。

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