第104話 ティナのことの報告である!

 冒険者ギルドに戻った我輩たちを迎えたのは我輩たちにティナを救援するように依頼した受付嬢とその隣で顔を俯かせ震えている若々しい受付嬢だった。俯いてるほうがやらかした受付嬢なのであろうな。


「あぁ良かった、間に合ったんですね。無理な依頼をしてしまい申し訳ありません。……ほら、あなたも。」

「ひゃ、ひゃいぃ!この度は本当に申し訳ありませんでしたぁ!死ぬ覚悟も出来てますぅ!でも死にたくありません!」


 何言ってるだこいつ。後輩嬢は泣き続けたのであろう、目を真っ赤に腫らせて何度も何度も頭を下げている。もはや風が発生するレベルである。

 こんなに謝られていて実は身内がやらかしたんですーとは言いにくいであるな。言わねばならぬが。


「いや、この騒動を起こしたこのワーウルフは、我輩の身内なのである。寧ろ、我輩の身内が迷惑をかけたである。本当にすまんである。」


 我輩が頭を下げるとティナも自分のことで我輩が頭を下げているのに気づき、慌てて頭を下げる。

 ティナ救助の依頼の報酬は受け取れないと申し出たのだが、先輩嬢が、いえいえこちらの過失なので受け取ってくださいと言ったので……まぁ受け取るであるな。貰えるもんであるからな。


「ほら、貴女も依頼の達成の手続きをしないと!」

「はひゃい!えぇっと、ゾンビ掃討の依頼ですが……!」

「あーあれ?なんかね、凄いでっかいゾンビがいたんだ。ネコが持ってるよ!」


 でっかいゾンビという単語に後輩嬢は、巨大ゾンビの存在を知らなかったのか、慌てて、依頼書を取り出し確認しだした。冒険者ギルドも巨大ゾンビの存在を把握していなかったのであろうか?先輩嬢も顎に手を当てて考えているようである。


「あなた達が嘘をついているようにも見えませんし……ネコさん。解体所にてそのゾンビ出してもらえますか?」


 勿論我輩たちはそれに同意。先輩嬢を先頭に解体所へ向かうことになった。後輩嬢は、先輩嬢に、このことをギルド長に報告するように指示され駆け足で向かっていった。あ、こけた。

 そして解体所に到着したところで、後方からこの冒険者ギルドの長、キッカが後輩嬢を伴って追いついてきた。


「なーんでギルド長まで来るであるか?」

「あなたね、報告が本当だったら見ておかないわけには行かないわ。」


 そんなもんであろうか。組織のトップというのも大変であるなー、我輩はそんなの絶対いやであるがな。

 さて、キッカと後輩嬢も合流したことで我輩たちは、解体所に入り我輩は言われた通り、氷漬けされた巨大ゾンビの頭部を取り出した。


「ひぃああああああああ!?」


 悲鳴を上げたのは後輩嬢で、彼女は尻もちをついてがくがくと震えながら巨大ゾンビの頭部を見上げる。解体所にいた他の職員も突然現れた巨大ゾンビの頭に驚く声が上がる。

 それとは対照的にキッカと先輩嬢は冷静に巨大ゾンビの頭を眺めていた。


「これ、複数体のゾンビが混ざってるわよね?」

「そのようですね。しかも頭部でこれなら全身はもっと大きく、構成しているゾンビも途方もない多さですよ。」


 先輩嬢に聞くと、大きいゾンビはこれまで確認されてはいるが、そのどれもが、1個体のゾンビであるらしく、こんな集合体のゾンビは初めて見たという。

 ついでにムカデゾンビについて話すとこれにも喰いついた。死体は焼失してしまったから無いであるがな。しかし、これについてもキッカたちは聞いたことがないとのこと。


「うーん、そのムカデゾンビと言い、ちょっと面倒なことが起こっているかもしれないわね。ねぇネコさんこれを譲ってもらうことはできる?」


 それというのは氷漬けゾンビのことであるよな。我輩としては食えんし素材にもならんであろうしいらぬが、これを獲ったのは我輩ではなく、ティナ1人なのである。

 そのことを話すとキッカは信じられないという顔でティナに顔を向ける。


「あなた、先日冒険者証明に来た子よね?」

「そうだよ?」

「Eランクよね?」

「そうだよ?」

「……ちょっとアニィナ?」

「ははははは、はぃい!?何でしょうかギルド長!?」


 後輩嬢はアニィナという名前であったのか。……んで、何でギルド長はそんな明らかに怒気を孕んだ笑顔をアニィナ向け……あ、またやらかしてたであるか。


「あなたこれ、Dランクの依頼じゃないの!」

「ふぇあっ!?」


 アニィナは慌てて依頼書を取り出し再度確認……あ、震えがさらに酷く……あ、へたり込んで……あ、土下座した。


「すみません、すみません!!本当にすみません!死んでお詫びしま、死にたくないです!」

「殺さないわよ……でもあなたねぇ、その間違いは冒険者を殺すものよ?それを自覚してるの?」


 冷え切ったキッカの声にアニィナは小さく悲鳴を漏らし何度も何度も頭を下げた。

 うーむ、流石にフォローのしようがないであるなと思ったところで


「あの、ギルド長さん。私がDランク依頼なの分かって出したの。その人悪くないよ?……ごめんなさい。」


 と、ティナがアニィナのフォローに回り、アニィナの隣に立ちキッカに頭を下げた。ほう、まさかティナがフォローをするとはなぁ。成長したものであるなぁ。だが?


「……ティナ。お前後で説教であるからな。」

「う゛う゛……はぁい。」

「分かったわ。今回は不問としましょ。でも、サラマーナ。あなたもう暫くこの子の補佐してあげて?」

「そうですね、分かりました。」


 あ、先輩嬢はサラマーナであるな。多分覚えた。

 さて、話を戻すが、ティナはゾンビの頭なんかいらないから好きにしていいよとのことで話は決まった。なお、報酬についてはやっぱりこんな巨大ゾンビ、想定してなかったからまた後日支払うそうである。


「このゾンビのことは王に報告でもするであるか?」

「もちろん。それと、城のほうで研究もしてもらわなきゃね。」


 なるほど、異質なゾンビが生まれた理由を解明するのであるな。それは我輩も気になるである。

 そんなわけで我輩たちはゾンビの頭部を冒険者ギルドに預け、キッカたちと別れた。ギルドから出る際にアニィナから再度謝られたので、今後は気を付けるようにとだけ言っておいたである。



 宿に向かう途中、ロッテが思い出したように話し出した。


「ねぇ、ティナちゃんをネコたちの部屋に入れるのはいいけど、ベッド足りるの?」

「ん?あぁ、大丈夫である。我輩とコーリィでツインの部屋をとってるであるからな。我輩のベッドをティナが使えばいいのである。我輩、毛布があればいいであるしな。」


 毛布の一つでもあれば我輩の大きさからしたら十分であるからな。

 トリプルの部屋にしてもいいであるが、部屋変えるの面倒であるからな。それぐらいはかまわぬ。やはりベッドは1人で使いたいものであるからな。

 そう思ったところで、コーリィとティナから驚きの声が上がった。


「え!?ネコ、私と一緒に寝るんじゃないの!?お嫁さん希望者として!」

「え、ネコ様私と寝ていただけないんですか!?」


 マジかこいつ等……

 結局我輩は、1日交替でそれぞれと一緒に寝ることになったのであった……

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