第87話 我輩の相手はお前である!?
闇ギルド。確かにフォルはそう言った。
予想していなかったわけではない。が、いくらなんでも早すぎではなかろうか!?
そして、奴等の狙いはコーリィ……久しぶりと言っていたし、コーリィの両親を殺し、コーリィにバーサクの指輪をつけた者共と同一のギルドなのであろう。
当のコーリィは平静を保っているように見えるが、微かに指が震えていた。
「リンピオ、ロッテ、ポチ、すまぬ。厄介ごとに巻き込んでしまったであるな。」
「今更だ!闇ギルドまで来ると思わなかったけどな!」
「そうよ!後でちゃんと説明しなさいよ!?」
勿論である。ここはいっそのことコーリィの事も話しておくべきであろうな。
だが、今はそんな余裕はない。
「なぁ、コーリィ・ディアント!てめぇさえこっちにおとなしく来れば他の連中は見逃してやーー」
「うっさい死ぬである。」
我輩は3本の尻尾を束ね、未だに厭らしい笑みを浮かべたフォルの顔面を問答無用で刺し貫いた。うむ、人間の頭蓋骨はカボチャと同じくらいと聞いたが、オークの腹を貫いたときよりは容易かったであるな。
「お、おいネコ。あいつ何か言ってたんじゃなかったか?」
「いや、闇ギルドが遭遇した人間見逃すわけなかろう?なら殺せばよいのである。」
悪に情けは無用、それが世の常であるが……んん?仲間が死んだと言うのにライザは表情一つ変えない。死体を見向きすらしない。
仲間意識とかそういうのはないのだろうか?まぁいいである。こいつもさっさとーー
「魔物の癖に分かってんじゃねぇか。」
!?聞こえるはずのない声に我輩たちパーティ全員の目が一つの死体に向く。
確かに貫いた。未だに貫いた時の感触と血の熱さが残っているのであるぞ!?
しかし、頭のない死体はピクリと動き始めてしまった。弾けた頭の血が一ヶ所に集まり、形を成していく。元通りのフォルの頭に。
木っ端になったはずなのに傷一つついてないその顔は出会った時と変わらない笑みを浮かべ体を起こした。
「死ぬ感覚たぁ慣れねぇなぁハハッ。」
「油断しすぎだ。あいつの魔法は一回分しか付与できねぇんだぞ?」
どんな手品を使ったかは知らぬであるが、生き返ったのであればもう一度殺せばいい!
「コーリィ!お前たちはカイザをやるである!我輩はフォルを殺す!」
「っはい!」
呆気にとられていたようであるが、気を取り直し、コーリィは片手にナイフ、片手に杖を持ち、リンピオは剣を、ポチは牙を剥きロッテを除く全員が目標目掛け駆け出す。
「援護は任せなさい!"ストレングス・オール"!"クイック・オール"!」
ロッテの魔法により、全員の速度と筋力が上昇する。我輩もその恩恵に与り、フォルを今一度尻尾で貫いてやる!
「おいおい、止めてくれよ。今ので分かった。俺にはお前は太刀打ちできねぇってことはな。だから別のやつを紹介してやるよ。おい出てこいシロー!てめぇの出番だ!」
フォルが虚空に向けて叫ぶと空間に亀裂が入った。亀裂は徐々に広がりを見せ、穴が開いた。
穴の奥には闇が広がっておりそこより一人の人間、男が現れた。人間が完全に穴から出てくると、穴は閉じ亀裂はまるで最初からなかったかのように引っ込んでいった。
我輩がその人間に注目したのはその服だ。その服はあまりにも――学生服であった。それのも学ラン。
少年は我輩を見るとニヤリと笑った。一見、細い体の気弱そうな少年に見えなくもない男だが、嫌な雰囲気を感じさせていた。
「わぁ!猫だ!すごいすごい!前まで普通に見たのにスッゴい懐かしく感じるなぁ!」
……確定である。
「異世界人であるか貴様!」
「あれ?何で僕が異世界の人間だって分かったの?しかも猫が喋った!」
何故分かっただと?我輩以外にこの世界には猫は存在しないであるからな。我輩自身、既に全うな猫ではないであるがな。
「おい、シロー。てめぇならその化け物も殺せんだろ?」
「うん!猫なら前から殺してたからね!何か僕の知ってる猫とはちょっと違うけど!」
「おいおい、こんなやつを何匹も殺してたのかよ。んじゃ任せたぜ。俺ぁカイザと遊んでくからよ。」
そう言うとフォルは踵を返しコーリィたちの戦闘に混ざろうとする。そんなことさせるわけがなかろうが!
尻尾を伸ばしフォルの進行を阻もうとしたとき尻尾に痛烈な痛みが走った。
「がっ!」
何が起こったのか、見ると我輩の尻尾の1本が断ち切られている。
「ダメだよぉー?君は僕が任されたんだから僕に殺されなきゃ!」
シローと呼ばれた異世界人は右手にノコギリのようなギザギザした小さなナイフが握られていた。
あれで我輩の尻尾を切り落としたのか……!
睨む我輩にシローは愉快そうに笑う。
「じゃあこの世界でもにゃあにゃあ鳴いて泣いて殺されてね?猫くん。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます