第85話 ついに最上階である!?

 実はこっそり練習していた……何てことはない。思い付きではなった技であるが存外いい具合になったであるな、雷猫パンチ。

 さて、この技を喰らったグラディウスサーベルタイガーはと言うと凄まじい速さで飛んでいき壁に大激突。ダンジョンを大きく揺らしたのである。体はぐちゃぐちゃにはなっていないが、雷猫パンチを受けたせいか、痺れるかのように体を時折跳ねさせている。


「生きているであるか?」

『間もなく死ぬであろう。いやはや、見事。体躯の差があるゆえ、何発かは耐えることができると高をくくっていたが、満身であったようだ。』


 グラディウスサーベルタイガーのその顔は満足げで全力を振り絞った感がにじみ出ている。

 もはや、動けそうにないんで我輩は遠くより見守っていたコーリィ達に終わったことを知らせこちらに呼んだ。ちょっ、コーリィ全力疾走できるなである。

 あえなくコーリィに捕まった我輩は大事そうに抱えられあげコーリィの胸に収まった。


 グラディウスサーベルタイガーはそんな我輩たちを穏やかな目で嬉しそうに、しかしどこか寂しそうに見ていた。


「何であるか?」

『いえ、そこな人間が羨ましく思えたのだ。御方に仕えることの出来るなど至上の喜びであろう。』

「えぇ……?」


 至上の喜びだとかそんな大層なもんじゃない思うのであるが?というか、こやつ、何故コーリィが我輩に仕えているとわかった?ーーあぁ、そういやこいつポチが多言語・多鳴理解のスキルを持っていたのに気づいたのであるな。つまりは鑑定持ちであるか?ただ単に察しが良かったとも言えるかもしれぬであるが。


「ネコ様、あの、魔物が私を見ている気がするんですが?しかも何か唸ってません?」


 おぉ、そうか。コーリィにはグラディウスサーベルタイガーの言葉は聞こえなかったであるな。代わりに我輩がやつの言葉をそっくりそのままコーリィに伝えると、コーリィは晴れやかな笑顔を浮かべ


「分かっていますね、この魔物!ネコ様の素晴らしさを見抜くとは……えぇ、確かに至上の喜びです!」

「……何も言うまい。」

『クククッ……願わくは、御方と並んで戦ってみたくも思ったが残念無念。ここまでのようです。御方よ、我が死ぬことにより次の、最後の階へと繋がる階段が現れる。』


 グラディウスサーベルタイガーは瞳を閉じ、告げ始めた。もうそうそろ命が尽き、その最後の一時まで我輩に伝えようとしている。


『上で待ち構えている魔物は、我には分からぬしかし間違いなく我よりも強く賢いだろう。御方であれば突破できるやも知れぬが、後ろの人間たちを守りたいのであれば気を、付け、ら、れよ……』


 ついにグラディウスサーベルタイガーの一切の力が抜けきった。我輩は無意識に瞳を閉じ黙祷していた。……?

 では、奴の体を解体させてもらおうかと、コーリィに声をかけようとしたとき、死したはずの奴の体が目映く光だし、部屋を覆い全員目を伏せた。

 やがて光が収まると上へと繋がる階段とひとつの大きな宝箱が存在し、グラディウスサーベルタイガーの巨大な体は影も形もなくなっていた。

 どういうことかと首をかしげながらも全員で宝箱を確認してみると……


「これは……二つの牙?うぉっ、ピリッときたである。ん?何であるかこの赤い珠。」

「これは、毛皮ですね。中々に暖かいです。」

「おっきな魔核ねーこんなサイズ初めて見たわよ?」

「お、これは鉄鉱石か。」


 結構色々なもんが入っていたである。しかし、このラインナップ……間違いなくグラディウスサーベルタイガーの体の一部だったものであるよな。いや、鉄鉱石は知らんけど。

 ようするにあれか。奴を倒した賞品と言うことであるか?解体しなくてももらえるのはそらありがたいが……まぁいいか。もらっておこうである。


 宝箱のアイテムは一旦我輩のマジックボックスに収納しておいて……確認をとる。

 これより、上に向かうが、大丈夫かと。いやノータイムで全員頷くのはさすがに予想外であったであるが、休憩はできているようであるし、行こうではないか。


 再び、我輩とリンピオを筆頭にパーティは階段を駆け上る。

 何段か目の階段を上ったか、ようやく最上階についた。果たして、どのような魔物が待ち受けているのだろうか、その先には


「よぉ、遅かったじゃねえか。」


 宝箱に腰を掛け獰猛な笑みを浮かべたフォルと、地に杖を突き刺し我輩たちを見据えるライザがいた。

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