第82話 進むである!

 落とし穴から奇跡の救出&脱出劇からのコーリィとリンピオのオーク瞬殺から数刻が経った後、ようやくロッテが目覚めた。が、まぁあんな体験をしたからか、その表情は暗いである。


「はぁ、本当に助かったわ。ありがとうね、ネコ。」

「あれは事故と捉えるである。誰のせいでもないであるぞ。」

「だよなぁ、にしても仲間を落として数が少なくなったところでオークの襲来とか……いい性格してるよな、このダンジョン。」


 リンピオの言葉に全員が頷いた。

 もし、目の前にこのダンジョンを作った何某が現れたとしたら、吾輩思わず猫パンチを叩き込むであろうな。

 ロッテの体調を気遣い、入って本当に間もないが、休憩をはさむことにした。

 ロッテが休んでいる間に、コーリィはオークを捌き、吾輩はこっそりとコーリィが取り出した魔核を口に入れていた。……だが、オークの魔核は正直飽きたである。



「さぁ、行くわよ!このダンジョンをきっちりめっきり攻略してやるんだから!!」


 元気も戻り、ついでに出会った当初の勝気な性格すら戻ったロッテを先頭に再びダンジョンを歩き出した。だがロッテ?お前は後衛なので尻尾を巻き付かせて後ろにぽーいである。……本当に投げたわけではない。


 しかし、このダンジョン本当に迷路みたいであるな。天井がなければ、尻尾やフロートで体を浮かせて迷路を上から攻略してやろうと思っただが、残念である。

 道が分岐していたり、行き止まりであったり……あぁ、時折定番の宝箱があったであるな。――中身は薬草ではあったがな。

 もちろん魔物も沸いてきた。ただ、このダンジョンの魔物は統一性は無いようで、最初オークを相手取ったが、ゴブリンやスライムといった雑魚に加え、オーク以上の力を持つトカゲが大きくなっただけの見た目をしたクレイリザードなる魔物も出てきた。

 土を纏っているようで、リンピオの剣がいまいち通らなかったが、吾輩の猫パンチはあっさりとクレイリザードの土の鎧を打ち砕いた。

 肉を喰らってみたが、普通に土の味がして普通に不味かったである。


 迷いながらも確実に進んでいくと階段に行き着いたのである。

 いやぁ、吾輩たち階段を下ってこのダンジョンに来たのであるよな?


「なんで上り階段なのであるか……」

「ほらネコ様、ダンジョンに常識は通じないと書いてありましたし……」


 確かにそうなのであるが……腑に落ちんであるなぁ。もしかしたら、そのまま外に出るなんてことはないであるよな?

 などと考えていたが、予想と反して1階と同じ石の通路……1階!?あれ、1階と捉えていいのか?

 そんなことは置いといて……多分考え出したらダメなのであろう。ダンジョンとはそういうものと考えておこう。


 さて、2階であるが中もさることながら、あまり1階とさして変わった点は見つからなかった。しいて言うのであれば、出現する魔物の中で雑魚魔物の割合が減り、その分オークといった吾輩たち……いやリンピオ・ロッテ・ポチからしたら丁度いい強さの魔物が立ち塞がることが多くなってきた。

 吾輩はもちろんコーリィは問題ないのであるが、2人と1匹には中々に重労働のようで今2度目の休憩をとっている。


 あまり無理をさせてもよくはないし……帰ることを念頭に入れてもよさそうであるな。

 依頼廃棄は違約金とやらが発生するらしいが。まぁ吾輩の稼ぎでも十分払えるであろう。

 またはこの後の全ての魔物を吾輩とコーリィが引き受けダンジョンを攻略する――正直に言うと吾輩はこれが一番だと思う。この2つの案を2人と1匹に聞いてみると……


「「それはダメ。」」「バウ。」


 声を揃えて否定した。ポチの言葉は分からぬが、その目はロッテのそれと同じであるな。


「見縊らないでくれ、ネコ。俺らだって意地はある。お前達ばかりに戦わせて指をくわえてみてるなんて出来ない。」

「そうよ。私もポチもみんなと戦いたいの。――でも、どうしようもないときはさすがにお願いね?」

「わうん。」


 コーリィに目配せすると、コーリィは優しく微笑み、頷いた。

 彼女もみんなと一緒に戦うことに賛成のようである。

 ……余計なお世話だったようであるな、反省せねば。

 吾輩は、リンピオたちに謝り再び全員で一緒に戦いながらダンジョンを進むことに決めた。


 こうして吾輩たちはダンジョン2階を進んだ。

 やはり罠もそれなりに増え、慣れから罠を避けることも出来るようになってきたが、度々引っかかったりもする。

 魔物も魔物で同じ種類の魔物でも力とか速さとか徐々に強くなってきた。

 そして宝箱も1階のものとは異なり鍵付きとなっていた。

 おそらくどこかで拾うか……魔物が落としたりするのであろうか。

 まぁ、関係ないのであるがな。何故なら吾輩にはスキル、鍵尻尾がある。

 実はこっそり練習していたので、滞りなく発動できるのである!まずは、尻尾を1本カギ穴に差し込んで、回して……ほらガチャリと。


「お前……鍵開けスキル持ちが泣くぞそれ。」

「知らん。」


 中にあったのは赤い宝石のようなものがついた指輪であった。

 指輪と言えばバーサクの指輪が懐かしいであるな。この指輪も最悪変な呪いがかかっているのやもしれぬし、今は吾輩のマジックボックスに入れておくことに決めた。

 ギルドにはそういったものを鑑定してくれる所もあるみたいであるから帰ったら行ってみるであるか。


 そこからも魔物を倒し、進んで宝箱を開け(鍵付きではなかった)、行き止まりに突き当たったりで――ようやく新たな階段を見つけた。今度も上り階段であった。

 今度もまた同じことの繰り返しであろうか、そう思いながら階段を上ると、思いっきり今までと違うことがあった。


「ったく、ようやく片付いたぜ。くそ雑魚どもが時間かけさせやがってよ。」

「そういうなよ、フォル。お前がうっかり踏んだ罠で沸いてきた魔物なんだぜ?」


 ほかの冒険者がいたのだ。

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