第81話 いきなりであるか!?

「これが入り口であるか?」

「そのようですね。」


 赤の依頼書、ダンジョン探索の依頼を受けた吾輩たちは発生したと言われる森に入り込み、ダンジョンの入り口と思しき階段の前に立っている。

 入口だとすぐに分かった訳は、余りにも森の中あると思えないほど不相応な石の階段がそこにあったであるからな。


「他のパーティーはもう侵入したんだよな?俺たちも急がねぇとな。」


 リンピオの言葉に全員が頷き、彼を先頭に階段を下り、ダンジョンに足を踏み入れたのである。

 ……しかし、ウッズシェルの刺身は美味かったであるな。帰りにも採って食べるであるかな。

 口の中に残ったウッズシェルの後味に幸せを覚えながら暫くの間階段を下りていくと、石で造られた通路に辿り着いた。

 通路の先は二手に分かれているようであるなぁ……しかしこれはどう見ても


「典型的なダンジョンであるなぁ、懐かしい。」

「おや?ネコ様はダンジョンに入ったことがあるんですか?」

「……似たようなものではあるがな。」


 RPGゲームの中での話であるがな!もちろん実際にこんなダンジョンの中に入ったことはないであるぞ。

 さて、このダンジョン。吾輩の今までのゲームの経験から察するに迷路に近い形なのであろうな。


「どうするよ、ネコ。」

「とりあえずこの前決めた陣形で行き当たりばったりで進んでみるであるか。」

「そうね。ポチ、警戒をよろしくね?」

「ヴォウ!」


 ポチが了承の一吼えをし、リンピオと吾輩は先頭に並び進み、その後ろにコーリィ、そしてポチとロッテが最後尾である。

 よし、進もうと思い、全員が一歩踏み出したところで、ガコンと嫌な音がした。音の発生源を探すと……ロッテの足元である。そしてよく見ると……彼女の右足元が凹んでいるである。

 全員の視線が集まり、ロッテの表情がどんどんと青ざめていく。そう、ロッテはやってしまったのだ。いやまぁ、誰も気付かなかったしロッテに非は無いのであるがな。


 瞬間、ロッテの足元の地面が小気味良い音と共に開いた。……開いた!?


「え?」


 気の抜けた声と共にロッテが重力に逆らえず開いた穴の中に落ちていった。

 何が起こったか分からず動けなかった吾輩たちの中で真っ先に動いたのはロッテの従魔、ポチであった。

 彼女を追うように穴に中に飛び込んでいった。


「イカン!」


 ポチが追ったところであいつには出来ることが無い!魔法も使えるようではあるが、今まで見てきたポチの魔法で役立ちそうなものではない。

 主が落ちたことで焦り飛び込んだのであろうが、それはいけない。最悪両方とも死ぬことになる!


 吾輩も1人と1匹を追い穴に飛び込む。

 少々出遅れたが、2人は未だ落ちている。ポチはロッテの服を咥えこちらを向いている。そのロッテはピクリとも動いていない。気絶しているようであるが、今はそんな考察をしている場合ではない!

 何せ落ちている先には――お約束と言うべきか極太の針が並んでいるではないか!


「なぁっ!?オーク!?」

「ネコ様!こちらにオークが来ました!」


 気にはなるが、そちらに応えてる暇はない!吾輩は急ぎ2本の尻尾を伸ばし、ロッテとポチの体に巻き付け、残りの1本の尻尾を壁に刺した。

 うっぐぇ!尻尾が抜け落ちてしまうのではないかと危惧したであるが、バンジーが如くビヨンと跳ねるだけで済んだである。衝撃はそれなりにあったであるがな!!


 上では戦闘音が聞こえ、コーリィが魔法を唱える声も聞こえる。

 今度は上か!急がねばならぬ。


「ポチ!2人を頼むである!」

「ウォウ!」


 吾輩は力を振り絞り、尻尾で掴んだポチとロッテを上方に投げ飛ばす。

 ポチは器用に吾輩の投げ飛ばした力を利用し、ロッテを咥えたまま、壁を蹴り上がり穴から飛び出た。

 よし、吾輩も追いつかねばな。

 吾輩は急ぎ空いた残り2本の尻尾を次々と壁に抜いては刺し抜いては刺してを繰り返し、壁をどんどん登っていく。……これ、傍目からしたら大分気持ち悪い登り方ではなかろうか?


 だがそんなことに構っている暇はない。自体は急を要する。

 まさか、入ってすぐにこんなピンチになるとは――!!

 時間を要してしまっていたが何とか援護に回ることが出来――


「あ、ネコ様!お疲れ様です!」

「はぇ?」


 吾輩が穴から舞い戻ったところで目にしたものはまっ黒焦げの物体と、切り刻まれた豚のような物体であった。

 コーリィは笑顔でこちらに振り返り、リンピオは剣を肩に担ぎ息を整えていた。

 ……あれ?結構簡単に終わっていたのであるか?

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