第80話 赤い依頼書である?

「何であるかこの依頼?」

「赤い――ですね。」

「うーん、ちょっとコーリィ。受付に聞いてきてはくれぬか?」

「かしこまりました。」


 初依頼から1週間ほど過ぎたある日。吾輩たちは依頼板に貼られた見慣れた依頼書の中に1つ、真っ赤な依頼書があった。

 ロッテもリンピオも見たことないらしく首をかしげている。

 その依頼書に書かれてあったのは――森の中で発見されたダンジョン探索のパーティ募集4/5とあった。


「ダンジョン……であるか。」

「こんな依頼、アステルニじゃ見かけなかったよなぁ。」


 うむ。アステルニでほぼ毎日依頼をこなしていたが、このような依頼は初めてである。

 RPGをプレイしたことのある吾輩からしたらなじみ深い言葉ではあるが、この世界にも存在していたのであるか、ダンジョン。

 ポチの頭に乗り、思案していると受付に聞きに行ったコーリィが小走りで帰ってきた。


 コーリィは懐から一冊の本を取り出し読み始めた。その内容によれば、こうだ。

・最近、シャスティ近くの森……ウッズシェルのよく採れる森でダンジョンへの入り口が発見された。

・ダンジョンとは稀に何の予兆もなく発生する一種の災害の様なもので、ある時は海の中、ある時は崖に洞窟として現れ、またある時は民家の中で無い筈の地下への階段として現れる。


「いきなり地下への階段が出てくるとか恐怖以外の何物でもないであるな。」

「よくアステルニでは発生しなかったわね……」


・ダンジョンの中では魔物が発生しており、強さや魔物の種類はダンジョンごとにランダムで決められ、種族バラバラで現れる場合もある。その代り、スライム統一のダンジョンでいきなりゴブリンが出てくるなんてことは今まで確認されていない。

・内部にはあらゆる罠が施されており、これもランダム。即死級の罠ももちろんあるため、気を付けなければならない。最後まで罠が無く、最後の最後に落とし穴――なんて性格の悪いダンジョンもあるので悪しからず。


「罠については確認されている限りはこのダンジョンマニュアルに書いてあるらしいです。まさかの商品でしたが必要だと感じ購入しましたが……よろしかったでしょうか?」


 先程から読んでいた


「よい。寧ろよく買ってきたであるな。偉いであるぞ。」

「えへ、お褒め頂きありがとうございます。」


・内部は空間が定められておらず、狭い通路だったり広大な大地だったり形態はまちまち。地下にどんどん降りていくパターンもあれば、どんどん登っていくものもあり、一階だけのダンジョンもある。

・道中にたまに宝箱が落ちている。また最奥にも宝箱があるが、道中の者と比べると豪華であるが、誰が手にするかは好きにどうぞ。ただし強力な魔物が守護している場合もある。

・ギルドを通してダンジョンに挑戦するのが一般的であるが、勝手に侵入しても咎められることは無い。しかしギルドの依頼を受けた状態の方が報酬をもらえるのでお得。

・最奥の宝箱を取らず放置していると、次第に魔物がダンジョンの外まで進出し始め、外の人間を襲い始めるため、早急にダンジョンの踏破が求められる。

・踏破してもダンジョンは消えないが、何故か魔物が外に出ることはなくなる。


「そんな都合よく出なく無くなるものであるか?」

「何故かって書いてあるところからすると本当に分かっていないんだろうな。調査はされているんだろうが、まだまだ分からないことだらけなんだな。」

「む、とりあえず次が最後ですね。残りは罠の解説や魔物の情報ですね。えーっと……」


・ダンジョンに絶対はない。物理法則が狂った空間もある報告もある。慢心する事なかれ。


 ……最後だけいやに意味深な言葉であるな。物理法則が狂った空間とは何ぞや。というか、その空間クリアした人間もいるのであるな……


「総括すると、ダンジョンはヤバイってことであるな。」

「ハイリスクハイリターンなのかしらね。即死の罠もあるんじゃ余程自信が無い限り行きたくないわよね。」

「ネコ様、どうします?紙に書いてあった4/5は参加パーティ数のことらしくて、依頼としてダンジョンに潜れるパーティはあと1枠みたいですよ。」


 個人的にはすごく興味がある。あるのであるが――やはり考えてしまうであるな。

 というか、コーリィ当たり前に吾輩の意見優先し過ぎではないだろうか。

 奴隷としては正しいのかもしれぬが、一応パーティなのであるからなー?


「吾輩の一存では決めぬ。多数決で決めるであるぞ!ほら、ダンジョンに潜りたいものは挙手するである!」


 吾輩の一声で挙手をしたのは……全員であった。ポチまでも。


「え、えぇ……?いいのであるか?即死するかもしれんのであるぞ?」

「その時はその時よ。死ぬのが早くなるだけじゃない。勿論極力死にたくはないけどね?でも冒険者なんだし冒険しなきゃいけないでしょ?」

「ワウン!」


 ロッテはいい笑顔で答え、ポチも気持ちよく鳴いた。

 そういえばロッテは初めて会った時、ギルドのトップになる期待の星――とかのたまっていたであるが、なるほど相応の覚悟はあったのであるな。


 リンピオに目を向けると奴は何も言わずにやけ……微笑み頷き返してきた。

 ふぅ、仕方のない奴らであるな。とは言わない。正直に凄く嬉しいである。楽しそうなダンジョンに潜れるのであるからな。


「ぃよし!それじゃ、ダンジョンに向かうとするであるか!」

「はい!」

「えぇ!」

「ワン!」

「おう!」


「あ、でもその前に森にいるウッズシェルの刺身を食べるである!」

「はい!」

「ワン!」

「えぇ……って本当に締まらないわね!!」


*****************************************************

アンケート閉め切りました

ご回答してくれた方、ありがとうございました!

結果は「人化にならない」が票多数となりましたので、その方向で進めてきたいと思います!

まぁ本当にすぐに関係する話ではないので気長にお待ちください!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る