第79話 王都最初の依頼である?

「さて、どれを受けるであるかな。」


 食べ歩き翌日、冒険者証明のための依頼受注の制限から解除された吾輩たちは再び冒険者ギルドへと赴き、依頼を探していた。

 やはりアステルニと比べて、この王都シャスティは人口が多いためか、あちらよりも依頼が多く感じるであるな。

 採取のものもあればもちろん討伐系や護衛系の依頼もあるであるが……ふむ。何をするべきか。


「ねぇ、ネコ……後ろのはいいの?」

「無視するである無視。だからコーリィ、そう睨むな。ポチは唸るな。」


 ロッテの言う後ろとは、コーリィ達の体に隠れている吾輩を何とか背伸びして覗いてやらんとす冒険者たちの事だ。

 絡んでくるわけでも無いし敵意を向けてきている訳でもあるまいし無視でも良かろう。

 煩わしくないかと言えば全くもって嘘になる――嘘になるが、騒ぎにしても宜しくないであるからな。黙って観衆の好奇心の的になっておくである。

 ……ところで、コーリィに睨まれて嬉しそうにしている輩がいるのは気のせいであるか?


「ネコ様、このエントの討伐はどうでしょうか?」

「エント?えっと、木の魔物であったか?」

「はい。オークと同等のランクの魔物と聞いていますよ。」


 木の魔物であるならばコーリィの火魔法が良い感じに刺さりそうであるな。

 吾輩に異論はなく、ロッテもポチも同意の様であるし、このエントの討伐を――


「待った。」


 ん?待ったをかけたのは、リンピオであるな。

 と言うかお前さり気に武器新調しているであるなオイ。


「待ったとはどうしたであるか?リンピオ。」

「俺はエントでは無くて、このハイゴブリンの討伐を受けるべきだと思うんだよ。」


 リンピオの指差す先には確かにハイゴブリンの討伐という依頼が貼られているであるな。

 だが、名前からしてゴブリンの強くなったバージョンの様で依頼に書かれてある適正ランクもEランクと記載されている。

 ちなみにエントはDランクの依頼の様である。


「わざわざランクの低い依頼を受けるその心は何であるか?」

「思ったんだけどさ、俺等ってパーティ組んでから連携らしい連携してないだろ?オークの時はその時限りだと思ってたから各々自由に闘ってただろ?」


 思い返せばそうであったな。一応援護等はしていたが、その援護の殆どがロッテの魔法によるものだ。吾輩たちは本当に自由に闘って連携というものは気にしていなかった。

 吾輩も好き勝手に暴れていたであるなぁ


「だからさ、ここで一回強くなくて弱すぎない魔物の討伐で俺たちの戦い方を考えるべきだと思うんだよ。」

「あら、リンピオさんも結構考えているんですね。」

「あれっ!?コーリィさん俺の事考えてない人間だと思ってた!?」


 コーリィはあえてその質問に答えず、意味深にほほ笑んだ。

 その笑顔にリンピオはバツが悪そうに、しかし頬を軽く染めながら顔を逸らした。野郎のテレ顔見てもなぁ……

 しかし、リンピオのいう事ももっともである事は間違いない。

 一度見直しておかなければ後々痛い目を見るやも知れんであるからな。


「では、今回はリンピオの意を酌んでハイゴブリンの討伐を受けるであるか。」

「ネコ様が言うのであれば」

「えぇ、私は賛成よ。」

「ワウン!」

「ありがとよ、ネコ。」


 礼を言われる筋合いは無いのであるがな。寧ろこっちが気づかされたのだから礼を言うべきであるな。言わんけど。

 いやーにしてもリンピオも本当にパーティのことを考えてくれているようで少しうれしいであるな。


「すまんであるな、リンピオ。お前がハイゴブリンの討伐をしたがったのは新しいその武器の試運転やランク昇格の調整かと思ったであるぞ?」

「ソ、ソンナコトアルワケナイジャナイカーハハハハハッ」


 はははははは。

 コーリィ達には黙っておいてやるであるか。



「ハイスラッシュ!」

「ギィエ!!」


 リンピオは新調された剣で下から切り上げることでハイゴブリンに致命的なダメージを与える。

 しかしまだ殺し切れておらずすかさず吾輩が三本の尻尾でハイゴブリンの腹を打ち貫く。


 よし、最後のハイゴブリンを倒し終えたであるな。

 30体余りいたハイゴブリン……ゴブリンを少し背を高くして顔をほんの少しイケメンにさせた魔物は本当にゴブリンより少し強い程度で陣形練習相手にはうってつけであった。

 ――結局吾輩たちのパーティの構成は以下の通りとなった。


 前衛が攻撃力のあるリンピオと吾輩。中衛に魔法で攻撃的援護の出来るコーリィ。そして後衛にバフデバフで全員のサポートをこなせるロッテ、と攻撃手段をあまり有していない彼女を守るためにポチ。

 これが吾輩たちの行きついた陣形であった。


「こんなところだな。結構いいんじゃないか?」

「そうね。ポチもいるしいざとなればコーリィが後衛にも援護くれるし、私は安心してサポートできるわ。」

「ネコ様、ハイゴブリンの解体が終わりましたよ。魔核も確保しました!」


 メンバーからも好感触の様であるな。コーリィは吾輩が良ければよいのであろう。

 魔核は大事に喰わせてもらったであるぞ。ま、別に成長はしなかったであるが。

 これにて初めての王都での依頼はいい結果で達成されたのである。




 ん?リンピオ?昇格?あぁ……またの機会に、だと。



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