第69話 客室に通されたである!
外は質疑応答のうちにいつの間にか時間蓮大分過ぎていたようで、部屋に案内されたころには夜になっていたである。
確かにライアット王は客室を用意させるとか言ってはいたが……
「まさか1人一室とは思わなかったであるぞ。」
「これくらいは余裕でしょうね。私としてはネコ様とご一緒の部屋であれば問題はありませんが。」
そう、吾輩たちはそれぞれタオラの商店にいたときの部屋とは比べ物にならないほどに豪華な客室に案内されたのである。
従魔である吾輩とポチは臭い魔物専用の部屋に通されるのかと思ったが、その主と一緒の部屋に案内されたである。
吾輩は早速備え付けられてあるベッドに飛び込み身を丸くする。
ふむ。流石と言うべきであろうか。このベッドまですっごいふかふかで、体が良い感じにベッドにうまるである。
コーリィは顔に巻き付けていたハイドマフラーを取り、やっと一息つけるといったようにベッドに腰を落ち着かせる。
「久しぶりにお前の顔を見た気がするであるな。」
「ネコ様以外といる時間が殆どでしたからね。息苦しさはありませんでしたが、空気は美味しく感じますよ……」
え、そのマフラー通気性いいのであるか?
試しにマフラーを借り、顔を突っ込んで大きく深呼吸。おぉ、確かに息苦しくないであるな。
タオラめ、いい商品を扱っているではないか。
「それでネコ様、今日は城に泊まらせていただくとして明日はどうしましょうか?」
「そりゃもちろん城下町の探索である。……というかそれ以外ないである。」
シャスティに来た大本の理由がそれであるからな。質疑応答は吾輩の中では、ここに来るためのきっかけであり、重要度は高くないである。
今日、馬車の中で隠れていた分明日は羽根を伸ばしてシャスティを一杯回るつもりであるぞ。
そして美味そうな飯を探すのである!
「しかしネコ様、ライアット王が簡単に許しますかね?」
「許すも許さないも関係ないのである。吾輩は誰が何と言おうとシャスティに赴くつもりであるぞ?」
禁じられようと何のその。吾輩を縛ることは出来ないのである。
……まぁそのためにロッテやリンピオが変に疑われるのは困るであるな。
その時は、「この2人は一時の付き合いだから別に深い関係はない」とでも言っておくであるかな。……我ながら苦しい言い訳だとは思うが。
そんなことを考えていると、コーリィがくすりと笑みをこぼした。
「フフ、ネコ様ならそう言うと思っていました。その時は私もお供させて頂きますね?」
「何を当たり前のことを。……というかお前がいなければ吾輩、この身で満足に買い物出来んであるぞ?」
「それもそうですね。ネコ様が私を頼りにしてくれて嬉しいです。それに明日はお任せください。私、実はシャスティは少し知っているんですよ?」
何それ、初耳なのであるが……?コーリィはシャスティに来たことがあるというのであろうか。
「では何故最初に言わなかったのであるか?」
「申し訳ありません……あの時は動揺して色々考えていまして……お話する余裕がなかったんです。」
「そうであるか。別に構わんであるぞ。」
確かにあの時は一目で異常に動揺していると分かったであるからな。今思えば知っているからこそ動揺するようなことがあったのやも知れぬな。
……あれ?そういえば吾輩、コーリィの過去とか知らないであるな。別に興味があるわけでは無いから聞かなかったであるが。
む?では、ギルド長からシャスティ行きを告げられた時に震えていたのは……?
ま、いいか。今のコーリィはいつもと変わらぬ様子であるし、吾輩が心配するのもおかしな話である。
そんなことより。コーリィがこの街を知っているというのは僥倖である。
「コーリィ!ならば何か美味い飯を教えるである!」
「かしこまりました!では、近くの森で採れるウッズシェルの蒸し焼きというものがありましてですね……!」
などと明日の事について話をしていると、客室の扉からノックする音が聞こえ、吾輩たちを案内したメイドが夕食の支度が出来たことを教えてくれた。
ロッテ達は既に移動済みで残すは吾輩たちだけなのだと。早に教えてくれればいいのに、吾輩とコーリィの白熱した話に水を差せなかったのだとか。
「もう飯であるか。では、コーリィ話はまた後で……ってマフラー被るの速いであるな!」
「練習しましたので。」
すでに巻かれたその顔からは目しか見えなかったが、これだけは確信をもって言えるである。
こいつ、ドヤ顔しているであるな?
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