第70話 飯である!

 メイドに案内され、通された食堂には既にリンピオとロッテとポチが飯にありついていた。

 心配していたリンピオであったが、ようやく慣れてきたようで緊張から減らしていた空腹を満たすようにマナーもへったくれもない勢いで飯を掻っ込んでいたである。

 対してロッテはぎこちながらも綺麗に食事をしている……ん?あいつ泣いてないであるか?


「おう!2人とも来たか!すげぇぞこの料理!」

「うぅ、こんな美味しい料理初めて……コーリィとパーティ組んでよかったわ……ほら!コーリィもこっち来なさい!」

「えぇ、そうね。」


 コーリィはロッテに誘われ、彼女の隣に座り、吾輩はそのコーリィの隣の椅子に座った。

 テーブルに並べられた料理を見ると、一つ一つが芸術のように洗礼された物だと、料理そのものには疎い吾輩にもよく分かる。

 ま、味さえ良ければ吾輩は何でもよいのであるがな!

 ん?よく見ると、比較的魚料理が多く見受けられるであるが、もしかして質疑応答の時、吾輩が最近魚食べてないなーとか言っていたから気を遣ってくれたのであろうか?


 いやぁ、吾輩そんなつもりなんて全然無かったのであるがなー

 出してくれたのなら、そりゃもう有難くいただいておくであるか。


 さて、尻尾を並べられたフォークに巻き付けてと。

 ……おう、メイドたち変な目で見るのは止めてくれるであるか?どうせ皿から直に食べるかと思ったのであろうな。

 しかし吾輩は断固として道具を使って食うからな!それだけは譲れんであるぞ!

 まずは、一番最初に目に留まった牛乳のように白いソースがかけられたサーモンに近い魚のソテーを一口。


「っ!?」


 これは……美味い。このソースは……何かの果物であるか?さっぱりとした味わいでこの魚の味を引き立てているようである。

 くっ……吾輩、口に出して美味いという事すら出来なかったであるぞ。城で出される料理は伊達ではないであるな。

 これはリンピオがかっ食らい、ロッテが泣いて感動するのも無理はない。

 それほどまでに美味い。この世界に来て一番ではなかろうか?

 これにはコーリィも感動しているだろうと彼女を一瞥してみると……あ、あれ?割と普通に食べてるであるな。

 少なくとも不味そうに食ってるわけでは無さそうであるが……ううん?


 その後も料理はどんどんと運ばれ、吾輩たち……主に吾輩とポチとリンピオは次々と皿に盛られた綺麗な料理を食べつくした。

 途中から料理人が面倒になってきたのか、少しずつ飾り付けが雑になり、最終的には飾りそのものが無くなっていた。

 しかし、ポチの飯も一口もらったが、そちらも絶品であったのは驚きであったぞ。



 テーブルの上に積み重なられた皿の山を後にし、吾輩たちは食堂から退室した。

 これから食堂のメイドたちは皿洗いにヒーヒー言うのであろうなぁ……頑張れ。

 とはいえ、満足した吾輩たちは膨れた腹をさすりながら


「げふぅ……食べた食べた。」

「王族って毎日こんな料理食べてるのよねー……羨ましいわ。」

「わふぅ……」


 

 みな、料理の感動が忘れられないのか、いまだにだらしなく恍惚とした顔をしているであるな。

 まぁ無理もないであるか。吾輩も口の周りをペロペロとしているのだからな!意地汚いと分かっていてもやってしまうのだから罪な料理であるな。


 それぞれの部屋に戻るためロッテ達と別れたが、吾輩は違和感を感じていた。

 吾輩とコーリィの部屋からこの道通ったであろうか?この廊下に飾られた花……見たことない気がするのであるが。

 考えても仕方ない。ならば吾輩たちを案内しているメイドに聞いてみればよかろう。


「おい、吾輩たちは今部屋に向かっているのであろうな?ここ、通った道と違うようであるが?」


 吾輩の質問に、メイドは淡々とした様子で


「……申し訳ございません。あなた方のみ、連れてくる様にに申し付けられているのです。」

「誰から……であるか?」

「それは、この部屋にその御方がいらっしゃいますのでお聞きください。」


 例に漏れず豪華な扉がメイドの手によって開けられる。

 その部屋は吾輩たちの泊まっている部屋よりもずっと豪華……というわけでは無く煌びやかさがちっとも感じられない質素な部屋が広がっていた。

 そしてその質素な部屋に全く副わない人物たちがいた。

 ライアット王と、謁見の間で王の隣にいた黒ずくめの女である。


「来たな?料理はどうだった。」

「大満足である。――が、吾輩に用とは何事だ?」

「あぁ、そうだ。だが、勘違いさせて悪いが……用があるのはお前ではない。」


 吾輩ではない?という事は一緒に来た……


「お前だ。ネコのコーリィ。いや、別の言い方があるよな……そう、久しぶりだな。コーリィ・ディアント。」

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