第67話 王からの質問である?
ライアット・クランネルスと名乗った椅子の親父――まぁあんなに豪華な椅子に座っていたのだから予想は出来ていたが、やはり王であったか。
しかし、素直に謝罪を述べるとは、思わなんだ。周りが周りだけに同じような人種かと思ったであるぞ。
ライアット王が謝罪を口にすると、となりの赤髪親父がわなわなと震えはじめた。
「お、王よ!何故王が魔物如きに謝らねばならないのですか!」
「俺は黙れと言った。彼らは俺が呼んだ言わば客人だぞ?俺に黙って騎士をけしかけた様だが、クレードよ……お前、いつからそんなに偉くなった?」
「し、しかしですな……!」
まだ何か言おうとする赤髪親父、クレードにライアット王は一瞥しただけで黙らせたである。
目を向けられたクレードは蛇に睨まれた蛙のように震えだしすごすごと後ろに引き下がっていったが、迫力だけで黙らせたのであるか?
やはり王というだけあってただ者では無さそうであるな。
さて、吾輩もいい加減にふかふかを堪能するのは止めておくであるか。そのような雰囲気では無さそうであるしな。
吾輩はいつの間にかライアット王の目前の小さな階段の前で跪いていたコーリィ達の元に移動し腰を下ろし、少し高い所に位置しているライアット王を見上げ、とりあえず思ったことを口にしてみた。
「礼は言わぬであるぞ?悪いのはそっちであるからな。」
「ちょっネコ!?」
何をそんな咎めるような声を上げるのであるか、ロッテ?周りもざわざわしてきたし……誰がどう見ても色々と悪いのは王側であろう?
あ、もしかして王の前で、不遜な物言いだとかそういう意味であるか?
いや、そんなこと吾輩知らんし。
だが、少なくともそのライアット王は楽しそうに笑っているであるぞ?
「ククッ……あぁ、そうだな。元よりこちらの責。こちらが謝ることでそちらが感謝する必要はない。」
「であろう?」
ほうら、別に何ともなかったであろう?という意味を込めてロッテに視線を送るが、当のロッテは視線に気付かず、隣のリンピオを一緒に安堵のため息を吐いているではないか。
解せぬがまぁいいである。しかし、吾輩は何をすればいいのであろうか。
吾輩が危険かどうか見極めるだか言われた気もするであるが……まさか闘うのであるか?
そんなことを考えていると頭の中にイーターの吸収効果と同じような声が流れた。
『外部から鑑定スキルの干渉を確認。ユニークスキル吾輩は猫であるを自動発動しました。』
え?吾輩は猫であるが発動した?どういうことであるか?アナウンスによると外部から鑑定スキルが干渉してきたから発動したらしいであるが……
待て?鑑定スキル?異世界チート御馴染の鑑定スキルだと?誰だ、そんなプライバシー(笑)なスキルを吾輩に向けて発動したのは!
犯人を捜すように辺りを見渡すが、怪しいものは誰一人いない……じゃなくてコーリィ達以外全員怪しいである。
チッ、鑑定されてそれが誰にされたかが分からないのは痛いであるな。
だが、吾輩は猫であるは何故自動発動したのであるか?確かクシャルダは、精神的状態異常を全て無効し、誰にも服従されず、物理的にも精神的にも縛られることのない吾輩だけのスキルだと言っていたであるが……もしかしてまだ能力があったのであるか?
急ぎ状態把握を発動し、吾輩は猫であるを見てみると、あったである。
何々……?鑑定スキルを受けた場合、鑑定を行使した相手には名前がネコという情報しか公開されない?
ほう、面白い能力であるな。つまりは、いくら鑑定しようと相手には吾輩がネコであることしかわからぬのか!ハハハッ、焦って損したである。
「何……ッ!?」
そんな時、小さな声ではあるが、ライアット王が明らかに動揺した声が、吾輩の耳に入った。
そのライアット王を見てみると、いつの間にか王の脇に1人、黒ずくめの背の高い女がライアット王に耳打ちをしているではないか。
ライアット王が声を漏らしたのは一瞬ではあったが、目を見開きその視線は特定の人物を捉えていた。
だが、王はすぐに気を取り直すように目を閉じ頭を振ると、改めて吾輩に視線を向けた。
「さて魔物よ、確かお前の名はネコだったか?」
「そうである。吾輩はネコである。別に忘れてくれても構わぬであるぞ?」
「フン、貴様のようにおかしな魔物の名を誰が忘れようか。で?お前の種族は?」
おかしな魔物て。吾輩、いたって普通の考えをした魔物だと思うのであるがなぁ。
む、もしかしてこれが、吾輩が危険かどうか見極めるための質問であるか?
まぁいい、答えてやろうではないか。別に知られたからとて困る情報は……スキル以外ないであるからな。
種族であったな。黒魔猫でも良かったが、あまり嘘をつき過ぎても宜しくないから本当のことを言っておくであるかな。
「漆黒魔猫であるぞ?」
「やはり聞いたことないな……何を使って闘う?その尻尾か?」
「そうであるなぁ?尻尾……であるな。」
正しくは、尻尾『も』であるがな。
「何を食っている?」
「お前達が食っているものとさして変わりはないである。だが、死肉とかは食いたくないであるな。あーでも最近は魚食べてないであるなぁ……食べたいであるなー」
ここでは魔核を食べることは隠しておくである。最初魔核を食べた時のコーリィとタオラの反応からしてどうにも異常な事のようであるからな。
不味いが癖になる味だというのに不思議であるなぁ。
後、本当に最近肉ばかり食べてきている気がするであるな。いや、不味くないからいいのであるが、もちろん飽きは来るからそろそろ魚を食べたいである。
「……人肉を食おうと思ったことはあるか?」
「ないである。」
これは本当。だが、思ったことがないからこそ即答しただけである。……人肉って美味いのであろうか?
機会があったら試してみてもよかろうな。あくまで機会があったらであるが。
「今まで、どのような魔物を相手取った?」
「魔物であるか?んー最初はワイバーンで、その後は、スライムにゴブリンに……あーすまん。雑魚は忘れたである。まぁあとはオークのジェネラルとかであるかなぁ。」
「何っ!?ワイバーンにオークジェネラル!?」
「馬鹿な……ワイバーンもオークジェネラルもそんな適当に流すように話せる魔物ではないはずだぞ」
いやぁ、ワイバーンを倒したのはもはや懐かしい思い出であるなぁ……ティナやギィガ達は元気であろうか。
うん、杞憂であろうな。ニアの伝言でも元気そうであったし何より、あいつらが元気じゃない姿が思い浮かばんである。
っていうか、何でそこで周りの騎士は食いつくのであるか?オークジェネラルは進化した吾輩からしたらそこまででもなかったであるし、ワイバーンに至っては手負いであったからな。これは内緒。
だとしても、そんな大げさにリアクションしなくても……確かにオークジェネラルは進化前ではいくらか苦戦はしたが今なら余裕で下せる自信はあるであるぞ?
オーバーリアクションな取り巻きとは相反し、ライアット王は「ふむ。」だとか「ほう?」だと一切動揺することを見せるなく、吾輩の言葉を静かに聞いていた。
しかしそうなると、さっきの動揺は何だったのであろうか?
「では最後の質問だ。……お前は人に仇なす存在にならんと約束できるか?」
「え、無理である。」
おっと、つい反射的に言ってしまったである。
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