第65話 謝れぇである!
今回、不快に感じるかもしれないキャラ(前回からいました)・展開がありますが、あくまで異世界物小説で、価値観も考え方もそれなりに違うということでよろしくお願いします。
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「ま、待ってくださいネコ殿!」
未だ状況を呑み込めず唖然としているコーリィ達三人を尻目に先に城から離れようと歩み始めた吾輩を声で制止したのはロディンであった。
彼の顔は必死そのもので、すがるような視線を向けている。
だが、吾輩としては――
「すまんがロディン。王都は善意で召喚に応じた者にいきなり剣を振りかざすのを良しとしているのであるか?このまま城に入れば吾輩殺されるのではないか?そんなとこ、怖くていられんである。」
……まぁ、恐怖心はないのであるが。
ただ、これで殺されるまではいかなくても危害を加えてくる可能性が増した気がする。
「い、いえっ!そんなつもりは……私達3人はとにかくあなた方を連れてくる様に王命を受けましたが、このようなことは一切聞いておりません!」
嘘、ではなさそうであるな……そんな顔には見えぬである。視線をガゾッドとニーフィに向けると2人とも無言で頷くことで返し、肯定を示しているし何より旅の一日目にロディンの口から自発的に手に掛けるなんてあり得ないと言っていたであるしな。
しかしあの言葉がフラグになろうとはな……
ロディン達は知らなかったとなると、この騎士団長がやらかしたことであるか?
その騎士団長を見るとあからさまに動揺しているようで、目が泳ぎまくっている。おう、こっちを見るである。
「騎士団長とやら?弁明はあるのであるか?」
「い、いや、すまん。ネコ、だっけか?アンタが見たことも無い魔物ってんだからよ、ついつい闘ってみたくだな……」
「お前の戦闘意欲など知ったことか。吾輩は王命とやらは知らんが正式に呼ばれてきたのだぞ?そんな客人とも呼べる存在に剣を向けたのだ。これを無礼と言わず何というのであるか?」
しかも団をまとめる騎士団長あろうものがである。
ロディンは強いだけではリーダーは務まらないとか言っていたが……こいつ本当に騎士団長でよいのであろうか。
あえて言いはしないが、もし吾輩がこの行動にキレて辺り一面破壊しつくすような魔物であったならばこやつはどう言い訳をするつもりだったのであろうか。
この調子だとそこまで考えていなかったようであるな。
……あれ?これやっぱり帰った方がよくないであるか?と考えたところで不意にロディンが吾輩の前に立ったかと思うと片膝をつき頭を下げた。
「申し訳ございません、ネコ殿っ!!不快に思われてもしょうがありません!騎士団長が騎士団長で無ければ殴り倒して思い切り罵倒していたほどです!」
「え、おいロディン。」
突然の部下からの口撃に騎士団長は言葉を詰まらせるがそれに一切取り合わず無視してロディンは言葉をつづける。
「ですが、どうか、どうか召喚に応じて城に入っていただけませんか!」
「都合よくないであるか?こっちは余裕だったとはいえ、命を脅かされたのであるぞ?」
「ええ、仰る通りです。ですからせめてもの謝罪の意として……」
ロディンはそのままの体勢で懐から一枚の紙を取り出し、空に投げるとその紙は真っ白な巨大な人型ののっぺらぼうへと姿を変えたのである。
ほう、ロディンの式神であるか。だが何故それを今……?しかもその式神、これまた真っ白な剣の様なものを持っているであるが?
「私の、この腕を切り落とします。」
……え?ハァ!?え、ちょっと待て、腕!?腕を切り落とすって今言ったであるか!?
え、ロディンも例に漏れず、騎士であるよな!?腕は命みたいなものではないのか!?それを切り落とすなどとさらっと……うわ、式神がもう斬りおとす体勢に入ってるである!
「待て待て待て!そこまでするなである!」
「しかしこのままではネコ殿に申し訳が!」
「いや、お前の気持ちは分かったであるが!腕はいらん腕は!ンなもん落とされても吾輩困るだけである!」
「で、ですが……」
というかそもそもっ!
「なぁんで部下がここまで謝罪してるのにお前は何のアクションも起こさないのであるか騎士団長っ!」
「え、あ、俺!?あ、す、すんませんっ!」
「大体お前がこんなに騎士共で取り囲んで斬りかからなければこんなことにはなって無かったのであるぞ!?」
「い、いや!斬りかかったのは確かに俺が馬鹿だったが、こ」
「知るかぁ!それでもお前は騎士団長なのだから謝れぇ!」
「すんませぇん!」
はぁ、はぁ……ふぅ、こんなに大声を出し続けたのはこの世界に来て初めてやもしれぬであるな。
だが、スッキリしたである。
呼吸を落ち着かせているとコーリィからテレパシーが届いた。
(ネコ様、どうされるのですか?私もネコ様に剣を向けたのは許せませんが、ネコ様にお任せします。)
ふむ、ロッテもリンピオも何も言わないし……彼らも判断を吾輩に……あーポチが凄い騎士団長に向けてグルグル唸って威嚇しているである。
さて、吾輩の判断はというと――
「分かったである。あくまでもロディンの謝罪を受け入れ、中に入ろうではないか。」
「っ!ありがとうございます!」
「ただし!吾輩もただで許すほど甘くないである。」
その一言で騎士たちの間に緊張が走った。
吾輩は見たことも聞いたことも無い魔物。一体何を要求されるのか……もしかして自分たちの命なのではないかと思っている奴もいるであろう。
もちろんそんなものはいらん。吾輩が欲しいもの。それは
「ロディン。お前あの時のオークの魔核。持っているであるよな?」
「え?は、はい。ありますけど……」
「それら全部寄越すこと――それと騎士団長!」
「は、はいぃっ!?」
そんな驚いたような奇声を上げて……自分に声がかかると思っていなかったのかコイツ!?
ンなわけなかろう!キッチリ代償は払ってもらうであるぞ!
「お前が思うここらで一番美味い飯屋で吾輩らパーティに一食分奢るのである。勿論、ポチも一緒であるし……それなりに高い店を選ぶであるぞ?安くてうまいではなくて美味いから高い店を選ぶのである。」
甘いかもしれないが、正直それ以外に欲しいものが思いつかないし、ロディン達の持ってる魔核はBランクのジェネラルのものもあるし吾輩の強化もできるから、これで構わないのである。
騎士団長の方も肩を落としているしある程度はダメージは受けているようであるな。
大きな音を立てて開かれる城門。こうして吾輩らはやっと城へと入ることが出来たであるが……騎士団長が言ってた、『この包囲網は違う!これは俺も上から言われて実行したに過ぎないんだ!』というのは……うぅむ。まだ波乱がありそうであるなぁ。
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