第63話 王都シャスティである!

 3日後、吾輩たちを乗せた馬車はオークの襲来以外のトラブルに見舞われることなく、今日王都に着く予定とロディンが言っていたであるな。

 ふぅむ、もしかしなくても窓から見えるあの白く大きな壁……


「あれっぽいであるなぁ。」

「うっわ!流石に立派な城壁ねぇ」


 馬車の窓から顔を覗かせた吾輩とロッテが感嘆の声を漏らした。

 ここまで立派な城壁は吾輩はゲームの中でしか見たことはないである。この城壁であらゆる外敵からの攻撃を守るのであろう。

 ロッテと凄い凄いと語彙力の低い会話をしていると……おや、空から一羽の真っ白な小鳥が窓の淵に舞い降りてきた。


「あら?見たことのない鳥ね。」


 何とも警戒心の無い鳥であるな。元いた世界であればある程度警戒されてもおかしくないのであるが。

 いやぁしかし、ここまで小さな鳥を見ているとな。人間の精神を持った(らしい)猫である吾輩と言えどな?猫である本能には抗い難くてな?

 ……うずっ


『あ、あのネコ殿?何だか目が怖いのですが?』

「えっ、喋った!?」


 ロッテの驚愕の声にコーリィ達も何事かと吾輩たちの方に寄り、今しがた発生した鳥に注目する。

 だが鳥は一切驚くことなく落ち着き払った様子であるな。高位の存在でも無さそうなのであるのに……

いや待て、先程の声……聞いたことがあると思ったら、ロディンの声ではないか。


「お前、ロディンであるか?」

『えぇ、その通りです。』

「驚いたであるぞ。お前は鳥に化けることが出来るのであるか。」

『いえいえ、これは私の式神ですよ。そろそろ王都に着きますのでお知らせしておこうかと……あぁ、ネコ様のことは門番に口外されてませんので隠れていてくださいね。』


 アステルニに入るときも吾輩隠れていたであるな……余計な混乱を避けるという意味では正しいのではあろうが……釈然としない。しょうがないからロディンに従っておくである。


しかしロディンがこぼしていたが、式神とな?確か日本式の召喚獣みたいなものだったはずであるが、何で異世界に?そう言うことも含めて何でもありなのであろうか。

 気になるので聞こうと思ったが、それよりも先にロディンの式神の鳥がもう告げることは無いと言わんばかりに飛び去ってしまった。

 まぁいつか気が向いたら聞いてみるとするであるか。

 よし、では吾輩は忘れないうちにシャドウダイブを発動し、コーリィの影の中に身を忍ばせておくである。



 さて、王都に入るとなると厳正なチェックでもあるのではないかと思っていたが、何とロディン達の顔パスで身体チェックとか調べられることなく入ることが出来たのである。

 それでいいのか王都よ……いや、ロディン達が信頼されているあかしという事であるか?門番たちは吾輩たちが見えなくなるまで敬礼していたようであるし。


 無事王都に入れたようで吾輩は真っ暗な影の中から出て、外の明るさに目をシパシパさせながらもポチの背中へと乗りふかふかを堪能する。

 馬車の中からでも外から活気のある声が聞こえてくる。祭が催されている訳でも無かろうに中々に盛況しているようであるな。


「コーリィよ、外はどんな感じであるか?」


 門番から隠れていろと言われたからもういいだろうと思っていたが、門から抜けた後、すかさず先程のロディン式神が飛んできて


『皆様にはこれから王城へと向かっていきますのでそれまで王都シャスティをどうぞご覧になっていてください。あ、ネコ殿はどうかジッとしてくださいね?』


と告げられたので吾輩は窓から顔を覗かせることが出来ないから外の様子を空以外見ることが出来ないのである。


「凄いですね……まだ入って間もないですが、それだけでもアステルニよりも盛んな街だと分かります。」

「そうね、アステルニと違って人が多くてひしめき合っているようね。でも、逆に言えばアステルニはアステルニで落ち着いていい街だってよく分かるわ。」

「冒険者の数も結構いるみたいだ。ちらほら聞いたことのあるような名前の冒険者もいるぞ。お!美味そうな飯もある!」


 何だと!?くそっ、城に召喚されていなければ今すぐにでも飛び出して飯に食らいついていたというのに口惜しい……っ!

 この一件が終えれば絶対にこの王都を闊歩してやるであるからな!

 そんな吾輩の決意を知らない馬車は速度を速めることなくゆっくりと王都の奥に堂々と建っている(らしい)王城へと向かって行く。

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