第62話 質問である?
オークの渾身の襲撃があっさりと返り討ちとなり、その日の夜は全員で火を囲みニーフィの言っていた通り豚肉パーティとなった。
「いやぁ、オークが来てくれて助かりましたね。食料は用意していたのですが、支給されたのは乾燥肉とか乾パンとかですからね。新鮮な肉は本当に有難いです。」
言葉通り嬉しそうにロディンは丸焼きされたオーク肉に豪快に齧り付いた。
ガゾッドも同様に喰らいつき無言でオーク肉を楽しんでいる。
そう言えばロディン達はアステルニに来てから一切寄り道せずに吾輩たちを乗せ王都に向けて発ったのであったよな。
寄り道して野菜でも何でも買えばよかっただろうに……ま、吾輩もマジックボックスに自前のオーク肉以外は食料とか何も入れてないであるがな!!
しかし、こうしてただでオーク肉にありつけたのはラッキーであったな。この時ばかりはオーク様様であるな。生きてる姿は暫く見たくないであるけど。
5体目のオークを食らい終わった頃、ロディンはどこからか取り出した行儀よく肉汁で汚れた口元を拭い吾輩たちに目を向けた。
「――さて、食休みに少しお話でもしますか。あなた方は何か私たちに聞きたいことでもありますか?」
ほう?これは少しの間とはいえ寝食を共にする仲になるから少しでもコミュニケーションを取ろうという算段であるか?それとも、吾輩たちの情報を探ろうとしているか、であるかな。
……いや、我ながら考え過ぎであろう。
「あ、んじゃ聞きたいんですけど……」
そう言って片手を上げたのはリンピオ。
ロディンは「どうぞ」と答え、リンピオの質問を聞く体勢となった。
「あのさっきのニーフィさんの豹変ぶりは一体……?」
お、それは吾輩も気になっていたことである。
今オーク肉に未だに貪りついているニーフィ――この面子の中で一番食べているのではないであろうか――を見ているとあの時のニーフィはどうしても別人にしか見えない。
そっくりな双子がいると聞いた方がしっくりくるレベルの豹変ぶりであったな。
当のニーフィは「はにはに?わはひのははひー!?」と口に含んだ状態で大声を出している汚いであるなぁ……
「あー……そう、ですよね。気になりますか。気になりますよね。まぁ、隠すことではないので、言いますけど……彼女、こと戦闘となると性格変わりましてね。今のあの姿見たら想像つかないかもしれませんけど、ニーフィは実は、騎士団屈指の実力者なんです。私やガゾッドよりも強いんですよ。」
「「「「え?」」」」
衝撃の事実にリンピオもコーリィもロッテもそして吾輩も気の抜けた声が出てしまった。
他の3人と同じタイミングで声がも出たしバレてないであろうと思ったがその見通しは……フン、甘かったようであるな。騎士団3人の目がバッチリ吾輩に向かっている。
「おや、噂通り言葉を理解して話すんですね。」
「ほう?吾輩が話せることすら噂になっていたであるか。カカッ、噂とは侮れないであるな。改めて自己紹介をするであるか。吾輩はネコである。」
「これはどうもご丁寧に……しかしいいのですか?その、喋られるのは秘密だったり……」
今までずっとただの喋らない魔物だと猫を被っていたであるからな。そう思われても仕方ないであるが……
「いや?あまりばれなきゃいいであるな程度である。別に最初から話しても構わないのであるが、警戒されかねないであろう?」
「ふむ、確かにその通りですね。王国にも喋る魔物はいますが、漏れなく強力な者ばかりですからね。」
ほう、そのような魔物がいるのであれば出会ってみたいものであるな。
歓迎されるかどうかは別としてであるが。
「で?吾輩が話せる魔物だとして、脅威だと感じて襲いでもするであるか?」
「ハハ、御冗談を。私達はあなた方を無事王都に連れてくる様に命を受けて来たんです。あなたが襲い掛かってくるならまだしも私達が自発的にあなたを手に掛けるなんて命に懸けてあり得ません。」
そう語るロディンの目は真剣さそのものであった。……信じてもよさそうであるな。
ニーフィに対する質問からいつの間にか話題がすり替わっていたであるな。
というか一番強いなら何でロディンがこの2人を仕切っているのかとリンピオが聞いてみたところ、ロディンが疲れた顔をして
「強いという事だけでリーダーは務まりませんよ……?」
と呟いたのでこの件に関しては触れないようにするである。
質問が終わり、今度はこちらからとロディンが吾輩たちに質問するようであるな。
吾輩に質問が飛んでくるのでは……などと思っていたであるが、意外にも質問の対象はコーリィであった。
「あなたは何故そのようなものを被っているんですか?噂によるとそのような覆面はしてないと聞いていたんですが。」
あぁ、確かに気になるであるよな。今のコーリィの顔を見ようとしても何となく分らないであるからな。
さて、コーリィの返答はというと……
「ファッションですので気にしないでください。」
一蹴であるか。というかその言い訳には無理があるのではなかろうか。
「いやあの……ファッションで顔認識しにくい覆面はしないと思うのですが……?」
案の定不信感を抱かれてしまったようであるな。コーリィは覆面するのはいいが、覆面する理由を考えていなかったのであるか?
しょうがない、ここは主である吾輩がフォローしてやらねばなるまいか。
「すまないであるな、ロディン。あまり話したくはないのであるが……実は先のオーク殲滅作戦でコーリィは他人を守るためにオークの攻撃を受けて、顔に大怪我を負ってしまってな。」
「え?そんなkムグッ!」
「あらリンピオったらまだオーク肉を食べ足りないのねーしょうがないわねーもう。」
おう危ない。吾輩の意図を理解していなかったのか、リンピオが口を挟みそうになっていたが、ギリギリでロッテがリンピオの口をオーク肉でふさいでくれたである。
普通ならこの行動だけで疑われてもおかしくないのであるが、幸運にもロディン達の耳には入っていないようであるな
では改めて……
「ン゛ン゛ッ!話を戻すである。で、治療こそできたものの、顔に傷が残ってしまってな。そんな顔を人に見せるのは嫌だというものでな。こうして覆面をしているわけである。」
「?ですが、その傷はある意味勲章の様なものでしょう?誇るこそあれ、隠すことなど……」
「んもーっ!ロディンくんったら駄目だよ!女の子にとって顔は命なんだよ?そんな顔、誰にも見せたくないものなんだよ?」
おお、意外なところから援護射撃がきたである。
同じ女だからこそ、ニーフィはコーリィの覆面の理由を納得できたのであるな。
ニーフィの同調にによってロディンも男と女の価値観の違いという事で受け入れた上で不躾なことを聞いたとコーリィに深々と頭を下げ、この話は終了したである。
(ネコ様、申し訳ございません。お手を煩わせてしまって……)
ふと、コーリィからのテレパシーが届いた。
ふむ。最近少し甘やかし過ぎているかもしれぬからちょっと厳しめに叱ってみるであるか。
(本当である。嘘をつくにしてももうちょっとちゃんとした嘘を考えるべきであるぞ。)
(はい……浅はかでした。)
(……まぁ覆面については今後はそういう設定でいくであるぞ。)
(は、はい。)
さて、この嘘についてロッテとリンピオにも話しておかねばなるまいな。
特にリンピオにはしっかり言っておかねばな!奴が一番不安であるからな!
夜は騎士団3人が交代で周辺警戒してくれるという事で、吾輩たちは遠慮なく寝ることにした。
ちなみにオーク共の魔核だが狩ったのはニーフィなので彼女に所有権があるので今回は諦めたである。
チッ!
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