第53話 ついてくるのであるか?
ロッテ達と別れ、吾輩たちはいつものようにタオラの店向かっているのだが……何故かカルラがピッタリついてきている。
しかも何か話すでもなく黙ってついてくるのだから不気味極まりないのである。こいつは吾輩を狙っているようであるし少し警戒している。
なのでコーリィに聞かせてみたところ――
「あ、あのカルラさん。どうしてついてきてるんです?」
「あなた達と行く方向が一緒だから。」
「そうですか……」
と、このような具合に話が終わってしまう。
元々コーリィも進んで吾輩以外の人と話すタイプではないであるからな。基本言葉少なめマイペースのカルラとは相性が悪いのであろう。
そうこうしているうちに、タオラの店の前まで着いたのであるが、結局カルラは吾輩たちと別れることなく一緒に来てしまったのである。
「私達はここに用があるのでカルラさん、失礼しますね。」
「いや、私もここに用がある。」
「へ?」
いや、まさかであろう。そんな都合よく吾輩たちと同じ店に用があるなんて、ある訳がないである。これはきっと吾輩についてくるための口実に過ぎんであろう。
と、思っていた矢先、店の中から扉が開き、そこから現れたのは木箱を持ったニアであった。
「おや、ネコくんにコーリィちゃんじゃないか。久しぶりだね。」
「帰って来ていたのであるか。」
そう。ニアとマキリーにはギィガ達の集落に商売のついでにワイバーンの肉を届けてもらっていたのである。
そのため、ここのところ会っていなかったのである。
「帰ってきたのは今日だよ。と言ってもオークの事もあって結構急ぎめで帰ってきたんだけどね。おっと、入って入って。」
「んじゃ、失礼するであるぞ。」
「失礼しまーす。」
「お邪魔する。」
「どうぞどうぞーってん?」
次々と店の中に入る吾輩たちを笑顔で迎えていたニアだったが、吾輩たちに紛れ入店するカルラに目が留まる。
「……何やってんだよカルラ。」
「久しぶり。」
え゛っ?ニアとカルラは知り合いだったのであるか!?
ニアの事であるからどうせ大した交友関係はないと思っていたのであるが!?
「ネコくん。今失礼なこと考えてなかったかな?」
「気のせいであるぞ。……だが、お前ら知り合いだったのであるな。」
「まぁ、昔少しね。でカルラ。Aランクの君がここにいるってことはオークの対処に来たの?」
「そう。でも私の仕事は終わったからこうして会いに来てあげた。」
「金を落としてくれるんだったら歓迎だよ。」
ふーん。会話から察するに別に仲が悪いという訳でもなさそうであるな。昔何かあったのかは気になる所ではあるが。
それにあながちここに用があるってのは間違いではなかったようであるな。少し疑いすぎたである。
「ニア。吾輩たち解体してほしいもの……というかオークがあるのであるが、使っても構わんであるか?」
「いいよいいよ。あ、でも今日タオラさん忙しくて部屋に籠りっきりだから私が同行するよ。」
ほう、それはまた珍しいであるな。吾輩たちが来ればどこからともなくやってくるタオラが来ないとはある意味新鮮であるな。
ちなみに解体することはパーティ全員の許可を取っている。
「ってネコくん何か雰囲気変わってない?気のせい?」
「気のせいじゃないである。進化したであるからな。」
「え、早くない……?」
「知らん。」
何故か軽く引かれたである。解せぬ。
解体所に向かう吾輩たち一行。そういえば吾輩、聞いておかなければならないことを忘れていたである。
「ニア、ワイバーンの肉はちゃんと届けたであろうな?」
「もちろんだよ。私は仕事をちゃんとこなす優秀な人材だからねー。」
……優秀な人材ねぇ
吾輩のジト目に気付いたのかニアがばつが悪そうに目を逸らす。
「そ、そうそう!それに関してギィガ殿から伝言だ!」
「ほう、ギィガから。」
ギィガ。吾輩がこの世界に来て初めて出会ったワーウルフの族長で気の良い奴であった。
別れてひと月も経っていない気がするが、なんとも懐かしい気分になる物であるな。
「『上等な肉をありがとうよ!また近くまで来たら遊びに来てくれ!お前なら大歓迎だからよ!』ってね。」
「カカッ、そうであるか!」
相変わらずの気の良い伝言で安心したである。
言われなくてもいつか遊びに行くつもりではあったである。ティナにも会っておきたいであるからな。
「おっと、ギィガ殿だけじゃ無かった。ティナちゃんからも伝言があるんだよ。」
「ティナからであるか?」
「うん。ただ一言だけね。『楽しみにしててね』って。」
「楽しみにしててね?」
ついオウムがえしをしてしまったが、それ以上ニアは何も返答せずニヤニヤとしていた。これはイラッと来るであるな。
しかし、楽しみにしててねとは……何に対して楽しみにしててねということなのであろうか。
うぅむ、よく分からんである。
「ネコくんも罪な男だねー?いや、オスの方が正しいのかな?」
「何であるか、その含みのある発言は。」
「フフッ別にー?さって、着いたよーと!」
あっ、話題を逸らしやがったであるなコイツ。
気になるがまぁいい。どうせ次集落に行ったとき、その意味が明らかになるであろうからな。
解体所はいつもに比べ、解体師が少ない気がしたが、実際少ないらしい。いるのは親方と4人の解体師のみで他は冒険者ギルドに依頼され、あちらで解体しているのだとか。
「よう、ネコの旦那。もしかしてオークかぃ?」
「そうである。頼みたいのであるが、大丈夫であるか?ちょっと多いかも知れんであるが……」
「おうよ!5体でも10体でもどんと来やがれ!」
流石は親方。気持ちよく言ってくれるであるなぁ。
ではお言葉に甘えて吾輩はコーリィに頼んで少しずつ移動してはオークを出してを繰り返し20体のオーク+オークソルジャー2体+オークジェネラルの並べる。
最初はニコニコしていた親方が段々と青ざめて言ってる気もするが……ま、気のせいであろう!
合計23体。ふむ、こうしてみると中々に壮観であるな。
ちらりとニアを見ると口を開閉させ呆然としている。
親方はというと
「お、多すぎじゃねぇかよ……」
などと呟きながら肩落としながらも他の解体師とともに宣言通り解体に取り掛かってくれたである。
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