第47話 食事という苦行である!?

 吾輩の元に現れたのは見紛うことは無く、リンピオであった。せめてここはコーリィが来るパターンではないのか!?吾輩思わず声を出してツッコんでしまったではないか!

 ってしまった!意識がリンピオに向かったせいで攻撃の手が!

 オークソルジャーの剣が直撃するかと思ったが、リンピオが吾輩の前に出て剣でオークソルジャーの剣を甲高い音を立てて受け止めた。


「やっぱりお前、喋れたんだな。」

「……助けてくれてどうも、である。ふん!」


 リンピオと鍔迫り合いをするオークソルジャーを猫パンチで弾き飛ばし、リンピオを巻き取り引っ張り後方へ下がる。

 というか、今さっきコイツやっぱり喋れたって言ったであるな。


「貴様、覚えていたのであるか?あの時のことを」

「まぁ……な。最初は夢かと思ったが、段々と夢とは思えなくなってな。」


 ちっ、聞かれていたであるか。ま、吾輩が喋ることをそこまで頑なに秘密にしていなくてよかったであるな!最高機密であれば「知ってしまったか……ならば死んでもらおう」的に死んでたであろうな。

 状況的に今死にそうであるが。


「お前、どうしてここに来たであるか。コーリィ達はどうした?」

「彼女たちは無事アステルニに戻ったさ。俺がここに来たのは……まぁ贖罪さ。やっぱりお前を見捨てようとしたことで謝った奴がお前を置いて逃げ出そうなんて蟲が良い話だろ?」


 吾輩的にはもう気にしていないから逃げても構わなかったのであるが、コイツの心が逃げることを許さなかったのであろう。

 結果、吾輩は助かったのだし、これに関しては文句の言い様がないである。それに状況を打破する可能性も見えてきた。


「なれば、リンピオ。お前少し時間を稼ぐことは出来るであるか?」

「時間稼ぎって……彼女たちと離れる時、ロッテに支援魔法をかけてもらったから多少はいけるが……よくて1分くらいだぞ!?」

「十分である。そうすれば、ひっくり返せるかもしれぬ。」


 あくまで可能性であるが、それを言ったところで何かが変わるわけでも無い。

 格上の魔物、それも軽いトラウマであろうオークにリンピオは難色を示したが、すぐに顔を引き締め、オーク共に立ち向かった。


「無茶振りしやがって……くそがあああああああ!!」

「ブギイイイイイイ!」


 リンピオの大きく振りかぶられた一撃は、受けようと構えたオークソルジャーの体ごと押し出し、後方のジェネラルにぶつけ大きな隙を作りだした。

 これが俗に言う火事場の馬鹿力と言う奴であるか……?

 よし、これならば任せてられそうであるな。


 さて、折角リンピオが時間を稼いでくれているのだ。吾輩もそれに応えるよう努力せねばなるまいよ。

 マジックボックスからすべての魔核を出し、貪りつく!とにかく不味いであるが、ンなもん今は気にしている場合ではないである!食う!食う!喰う!!


『スキル、イーターの効果によりオークの魔核の吸収が完了しました。』

『スキル、イーターの効果によりオークの魔核の吸収が完了しました。』

『スキル、イーターの効果によりオークの魔核の吸収が完了しました。』



 喰らうごとにアナウンスが流れる。これは今までと同じであるが、やはりオークは雑魚魔物とは異なり、吸収する度に得る力が思った以上に多い。ワイバーンの時以来であろうか。

 何とか抑えていたリンピオも次第に押され始めて来た。

 時間稼ぎさせた挙句殺されては駄目だ。吾輩は残った魔核をかき集め、無理矢理口の中にねじ込み噛み砕いた。


『ス『スキ『スキ『スキル、イーターの効果によりオークの魔核の吸収が完了しました。』ル、イーターの効果によりオークの魔核の吸収が完了しました。』ル、イーターの効果によりオークの魔核の吸収が完了しました。』キル、イ『スキル、イーターの効果によりオークの魔核の吸収が完了しました。』ーターの効果『スキル、イーターの効『スキル、イーターの効果によりオークの魔核の吸収が完了しました。』果によりオークの魔核の吸収が完了しました。』によりオークの魔核の吸収が完了しました。』


 「うがああああああ!!」

 うるせえええええええ!発散するように叫んだであるが、同時に食べるとアナウンスも同時に響くのであるかこれェ!!

 無機質な声が頭の中で反響する。頭が狂いそうであるぞ……

 吐きそうな感覚を抑え込み、震える口で咀嚼し、逆流しそうな喉で飲み込む。


「お、――い!?おm――じょ――うぶか!」


 リンピオの声も遠くに聞こえるほどの吾輩の頭をかき乱すアナウンスの音が1つ、また1つと聞こえなくなっていく。そろそろ吸収も終わりに近づいているようであるな……

 耐えきった自分を褒めたいところである……


『スキル、イーターの効果によりオークの魔核の吸収が完了しました。』『スキル、イーターの効果によりオークの魔核の吸収が完了しました。』


 さ、さて……漸く20ものの、アナウンスが流れ終わった。1分間がとても長く感じたであるぞこれぇ……

 だが、ここからが本番である。20の魔核を食い終わった吾輩に何か変化は起きるのであろうか。起こらなくても、オークソルジャー程度であれば倒し切り、リンピオを連れて逃げ切れるかも知れぬ。

 出来れば、新たなスキルや魔法が欲しいところであるが――


『イーターの効果よって吸収された魔力が一定の値に達しました。』


 おうおう、これであるこれ。さぁて、どのような力が手に入るのであるかー?


『これにより進化権を獲得しました。進化しますか?』


 ……は?

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