第45話 フラグ回収である!?

 全員、ギルドカードを無言で読んでいたが、読み終わると同時に持っていた荷物を持ち上げ、帰還の準備をし始めた。

 これには吾輩も同意である。帰還命令も出ているし……上位種と遭遇したとあっては誰か死ぬ可能性だってある。


「急いで帰りましょう。まさか、ギルド長が出るほどの事態になるなんて。」

「あぁ。オークビショップやプリーストはCランク。ジェネラルはBランクと言われているからな。そんな奴らがいる中で狩りを続けるなんて無謀もいい所だ。」


 最後のオークを吾輩が回収し、パーティは来た道を走りながらアステルニに向けて戻る。

 しかし、ギルド長が戦いに赴くとは……確かにあの金剛力士像、闘えそうな雰囲気はあったであるが、やはり相当な実力者なのであろうな。じゃないとギルド長は勤められないのであろうか。

 本当は吾輩1人でも狩りたいところなのであるが、パーティを組んでいる手前、リンピオはともかくとしてロッテにも迷惑がかかる。ので今回は上位ランクやギルド連中に任せておくである。



「は、ようやくっ!森から出れるわねっ!」

「あと少しだ……コーリィさん、大丈夫か!?」

「平気ですから問題ないです。」


 ロッテは疲労困憊し、息も絶え絶えでリンピオもコーリィもそれに劣らず疲れているようであるな。

 吾輩とポチは依然余力を残しているが、この場面でただのオークであっても遭遇はしたくないものであるな。っ!?この足音は!?


「グルルルルルルゥ!!」


 吾輩が重く何かが歩いてくる音を聞こえたと同時にポチも背後を振り返り、威嚇混じりの唸り声を上げた。

 オークの足音は闘っている内に覚えていったが、今吾輩たちに近づいてくるこの複数の足音は、オークのそれより重々しい。ポチの鼻も今までのオークとは違う匂いをかぎ取ったのだろう。


「ポチ……!?な、何が来るっていうの?」


 ポチの威嚇の意味を分かっているためか、ロッテが足を震わせながらもポチに声をかけたところで――そいつらが現れた。

 今までのオークからは見受けられなかった鉄の鎧を纏い、剣を持ったオークが3体。そしてその背後に鎧のオークの一回り大きい大剣を持ったただならぬ雰囲気を放つオークが1体。

 見たことのない個体……こいつらが上位種であるか!?


「最悪だ……!オークソルジャーにジェネラル!」


 チッ、ソルジャーは聞いたことないが、ジェネラルはBランクの魔物であったな!?厄介な魔物が追ってきたであるな。

 こちらの殆どは疲労し切っているから、ジェネラル以下であろうソルジャーと闘ったとしても……最悪な状況にしかならない。

 その時だ。


「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!」

「ポチ!?止めなさい!」


 ポチがいきなり雄たけびをあげ、ロッテの制止の声を無視し、奴らに向かって駆けた。

 俊敏な動きでオークソルジャーの足元を潜り抜け、オークジェネラルの眼前に迫り……鎧が纏われてない顔の鼻に噛みついた。うわ、あれは痛いであるぞ。

 

「ブギアアアアアアアアアアア!!」


 ジェネラルは鼻の痛みに耐えきれず悲鳴を上げ、痛みを作り上げた原因であるいまだ鼻に噛みついているポチを剛腕で引き剥がすと――怒りのままに地面に思い切りたたきつけた。


「ギャイン!」


 このまま止めを刺すつもりなのか、オークジェネラルはオークソルジャーを手で制すると自らの背に担がれた大剣を持ち上げる。


「ポチィ!くっ……"プロテクション"!」


 ロッテがかけたのは防御バフの魔法であるな!しかしあの魔法で耐えきれるとは思えない。……急がねばポチが殺されてしまう!

 助けるべく吾輩も走るが、オークソルジャーがそれを阻まんと立ち塞がる。が、お前ら今は邪魔である!!


(”魔爪”!)


 念じ、魔爪を出現させ横に薙ぐが……やはり鎧が邪魔で切断こそできなかったが、弾き飛ばすことは出来たである。

 よろめいたソルジャーを避け、ジェネラルの大剣が振り下ろされたよりも早く、吾輩の尻尾がポチを絡めとり、ギリギリ大剣の一振りから救出した。


(コーリィ!ポチを投げるであるぞ!!)

(えっ!?)


 緊急事態のため、コーリィの返事を待たずにポチを思いっきり後方に投げ飛ばす。


「ポチっ!」

「任せろ!!!」


 声から察するに、リンピオが上手くポチを受け止めてくれたようであるな。

 さぁて、今吾輩は豚面共に囲まれているであるが……まぁこの場合は少しでもコーリィ達を離した方が良さそうであるな。


(コーリィ、吾輩が時間稼ぎするから逃げるである。)

(ネコ様!?い、いけません!私も残ります!)

(いや、お前がソルジャーなり倒せるのであれば考えないでもないであるが……今は邪魔である。吾輩の命令に従うである。)

(っ!……命令なんて卑怯です。)


 卑怯でもなんでもいいであるから、さっさと逃げてほしいである。こいつら、テレパシーの間も剣を振るって攻撃してくるもんだから面倒なのである。


「皆さん……逃げましょう」

「えっ、コーリィ何を言っているの……?まだネコが闘ってるのよ!?」

「ネコ様の意思なんです!!!」


 泣き叫ぶような声。それに気圧されたのかロッテは何も言わず……走り出したのか3人の足音がこの場から離れてゆく。

 もちろんオーク共も、コーリィたちを逃がす気はないのかソルジャー2体が、追おうとするが、当然吾輩だってそんなことをさせるつもりはない。


「まぁ待つであるぞ、豚共。」


 追おうとするソルジャーの足に尻尾を巻きつかせ、転倒させる。

 突然言葉を発したことにジェネラルは驚いたのか、一瞬恐れを抱いたように吾輩を睨んだ。


「カカ、かように小さき魔物を何を恐れているであるかぁ豚共。月並みであるがひとこと言わせてもらうである。」


――あ奴らを追いたければ吾輩を殺していけ。

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