第31話 最初の依頼はこれである!

「これで、コーリィ様はFランク冒険者となりました。ランクは依頼を受け、達成し、周りの信頼を得ていくことで上がることもあります。また依頼外でも魔核など魔物を倒した証拠になる物を提出していただいてもランク上昇につながります。」


 確かにコーリィが受け取ったカードにはコーリィの名前とFという文字(恐らくはこの世界におけるFと呼べる文字を言語理解がFと判断させているのだろう。)が書かれている。

 いわゆる見習い冒険者なのだろう。勿論Fランクに留まるつもりはないし、狙うのなら上を目指すつもりである。


「さて、これで私からお話することは以上ですね。なにかご質問はありますか?」

(私はありませんが、ネコ様はありますか?)


 質問であるかー。大体の事は冒険者をやりながらでも分かってきそうであるから、特に聞きたいことは……ふむ、1つあるな。コーリィに聞いてもらうである。


「ランクが一気に上昇することはあるんですか?」

「あー、たまに聞いてくる方がいますねー。基本的にそのような事はないのですが、たまに起こりうる、街を脅かすような魔物を低ランクの冒険者1人2人の力で討伐したら特例として2段階以上のランク上昇が認められます。」


 同じことを考えている奴はやはりいるものであるか。吾輩は可能性の1つとして聞いておきたかったのだが、そういうことを聞く大半の輩は自分の力を過信している奴だと吾輩的にはそう感じる。


「一ギルド職員からすると低ランクの方は無茶をせず地道に依頼をこなしてランクを上げてほしいんですけどね。いるんですよね、無謀にも強い魔物に挑んで死んでいくFランクの冒険者が……お願いですからコーリィ様はそのようなことが無いようにお願いしますね?」


 吾輩はもちろん地道に依頼をこなしていくつもりだ。吾輩は一般的な魔物より強いのではあるのだろうが、やはり過信はいけない。

 吾輩のイーターで魔核を食べれば、能力が上昇することは分かったので、弱い魔物討伐をこなして段々と力を上げる。ジャイアントキラーはその後でもいい。まぁその頃には?ジャイアントキラーとは言わないかも知れぬがな。


 ペルラに礼をし、登録受付から離れ、依頼の紙が貼られるという掲示板に向かった。

 依頼は多数掲載されており、Fランク適性の依頼もちゃんとある。

 ふむふむ……薬草採取に護衛、倉庫掃除手伝いに店番……店番!?結構種類はあるみたいだが、これ本当に冒険者は便利屋扱いされていないであるか?


(ネコ様、どの依頼を受けましょうか?)

(うーむ、やはりというか最初はスライム討伐でいいのではないか?吾輩だけではなくコーリィ自身の能力も見ておきたいであるからな。)

(なるほど、流石はネコ様ですね。では、この依頼にしましょうか。)


 いや、流石というほどの事ではないと思うのであるが、突っ込むだけ無駄な気もするので、紙を掲示板から剥がし、登録受付の隣の依頼受注の受付へと向かう。

 今度は頭が寂しいことになりかけた男性職員であるな。


「はいはい、依頼ですね。えーっとFランクのコーリィさんね。はいはい、問題ありませんよー。依頼達成条件はスライムの核、またはスライムゼリーを5つ持ってきていただければ達成となりますねー。はい、それでは頑張ってください。」


 登録と比べるとあっさりしているがこんなものであろうな。さっさと作業しないと後ろが閊えるのだろう。実際吾輩たちの後ろにも何人もの冒険者が並んでいる。

 登録受付と違い、依頼受注と依頼達成受付は2つほどあるのは長い行列を避けるためだろう。


 ともかくだ。吾輩たちはこれで初めての依頼に挑むことが出来るという事だ。未だに視線は感じるが知ったことか。

 逸る気持ちを抑えきれず、コーリィに急ぐように伝え、駆け足で外へ向かう。

 待っていろスライムよ、今吾輩たちがお前らを退治してやろうぞ!……冒険者家業楽しみである。





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 コーリィとネコがギルドから出て行った後、ギルド内では2人の話題でもちきりだった。


「何だ?あの嬢ちゃんの連れた魔物はよ。見たことねぇゼ?」

「あぁ、ウルフ系とはまた違った風貌だし何より奴らより一回り小さいときたもんだ。」

「でもー結構可愛くなーい?登録している時もしっぽふりふりしててー愛らしいよねー」

「ありゃーいい毛並みしてたよな。皮剥ぎ取って売ったらいい値段しそうだぜ?」

「バッカおめぇ、人の従魔殺したら重罪だろうがよ。」

「俺ぁあっちの嬢ちゃんの方が気になるなぁ。ありゃ成長したら化けるぜ?」

「だよなぁ!唾付けとくかぁ?」


 それは冒険者たちの話だけでなく、ギルド職員の中でも結構な話題となっていた。

 現に登録受付対応をし、更にネコを撫でていたペルラは他の女性職員に質問攻めにあっていた。


「ねぇ!あの魔物の手触り本当によかったの?!」

「あ、はい。すごいフワフワで,やわらかく,手触りもよくて,気持ちがよくて……とにかく最高でした!」

「あーいいなぁ……私も触ってみたいなー」

「結構人懐っこいみたいだから大丈夫じゃない?今度頼んでみようよ!」


 勿論、好意的にとっているものばかりではない。ペルラの報告を受けたアステルニの冒険者ギルド長、バジットは両腕を組み、重苦しい表情で書類を凝視していた。


「見たことのない魔物にそれを連れた少女だと……?どう考えてもおかしいだろ。何で誰も警戒しないんだ……!?ここは俺がしっかり見定めねばならんか……?」

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