第29話 吾輩にとってコーリィは?
「杖にナイフ……ネコ様、本当にありがとうございます!」
「あー、うむその武器を使って今後とも励むように。」
吾輩の気落ちに気付かず、コーリィは元気のいい返事を返す。まぁ気付かれて恐縮して折角買った武器を売りに行くなんてことも無い訳じゃないからな。
よし、出費の事はこれっきりで忘れるである。今はパーティー。食う時間であるぞ!
パーティーは商会の地下にて立食式で行われており、50人は優に超える数の商会の従業員が飲み食いしている。
吾輩自身は食べ物を取りに行かず――というか、取りに行こうとするとコーリィが走り出し、皿に山盛りにされた料理を持ってくる。奴隷として主人に尽くそうとするのは分かるが……やり過ぎではないだろうか?
吾輩だけ食べているわけでも無くコーリィもちゃんと食べているからうるさく言う必要もないだろう。
ワイバーンの肉は上等で料理人の力もあるのだろうが、とても満足のいく味だった。
料理を食べているとたまに従業員が吾輩に話しかける。単に喋る魔物が珍しいというのもあるだろうが、この街(今更聞いたが、アステルニという名前らしい)のことなど色々と吾輩に教えてくれた。時々聞き飽きた勧誘の話も出てきたが、もちろん一蹴した。
一通り料理を平らげたので、酒をちびちび飲みながらゆっくりしていると、酔ったためか、顔を紅潮させたニアがにへらにへらと笑いながらやって来た。
「やぁネコくん、飲んでるかい?」
「飲んでいるが……お前は飲み過ぎではないか?」
「え~?これくらい飲んだうちには入らないよー?」
本人が言うなら大丈夫……なのか?まぁ倒れようものならマキリー呼んで介抱してもらうであるか。
「ところで、ネコくんたちは明日から冒険者になるんだよねぇ?冒険者登録にギルドに行くんだろう?」
「うん?そうであるな。正確にはコーリィを冒険者にして吾輩は従魔?として登録するつもりである。」
「そっかー……気を付けなよ。」
その顔はどこか寂しげな表情も相まって美人に見えた。が、吾輩的には借金返すためにここに寄ることもあるはずなのでそこまで寂しくなることは無いと思うのだが……
「コーリィちゃんはまだ若い。それに加えちょっと君に妄信的な節がある。まぁ君がやったことを聞けばそれも分かる気もするけど。そんな彼女が冒険者として君の代わりに色んな人と交流するんだ。騙されることもあるかもしれないから――君が守ってあげるんだよ?」
「ふん、当然である。」
吾輩とて何も考えていないわけでは無い。金で1人の少女の運命を握ったようなものなのだ。だから吾輩はコーリィを護る。奴隷としてではなく……そうであるな。
ペット
としてであるかな?ハハッ!ペットとして生きて来た吾輩が転生してペットを得るか。何という皮肉か、面白い。だが、我が友は、史博は、ペットを、吾輩を家族として迎え入れてくれた。
で、あれば吾輩もコーリィを家族として迎い入れるつもりだ。こっぱずかしいから面を向って言わないであるがな!
一応は警告してくれたのだ、ニアに礼の1つでもくれてやろうかと思ったのだが……
「Zzzzzzz……」
凄いだらしない顔で熟睡していた。さっきまでの顔は嘘みたいである……やはりこいつはニアであるな。肝心なところで締まらない。
明日も仕事があるはずなのに、こやつは大丈夫なのか……?二日酔いでも起こしそうなのでこっそり癒しの肉球をしておく。頭の中に『二日酔いが解除されました』というアナウンスが響いたので明日はいい気分で起きれるだろう。
なお、寝坊するかはニア次第だ。今日吾輩とコーリィは別室を借りるので、ニアの目覚ましになることは無い。
「えーそれではこれにてパーティーは終了です。みなさん、明日からも業務よろしくお願いしますね。」
タオラの言葉でパーティーは終了。一部の従業員は片付ける作業に入り、吾輩はそっとコーリィを尻尾で持ち上げ、マキリーの案内で吾輩たちの部屋へと向かってそのまま就寝した。……マキリーがニアを引きずりながら案内していたのは見なかったことにしよう。
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