第28話 これは食べられるである?

「おう、代表に魔物殿……いや、ネコ殿か。解体はちゃんと終わったぜ。ほれ、そこにあるから確認してくれよ。」


 解体所に出向いた吾輩たちを出迎えたのは解体師達のまとめ役1人だった。他の解体師は他の仕事に出向いたり自室で休憩しているらしい。

 ワイバーンだが、見事に解体されたようで、布の上に骨や肉塊、目ん玉や内臓までも並んで一見グロテスクな光景が広がっているが……この世界では普通の光景なのか、コーリィは平気そうである。


「ご苦労様ですネコさんは肉と皮と骨と……魔核でいいんでしたっけ?」

「うむ。おっと、肉は少し送ってほしいところがあるのであるが。」

「送る?どこにですかね。」

「ギィガ達の集落にである。そう言えば宿泊の礼もしていなかったであるからな。」

「あぁ、なるほど。了解しました……中々律儀なんですね。」


 フン、宿泊代金を支払ったようなものである。色々お世話になっておいて何もしないというのは吾輩は嫌なだけである。

 ……で?ワイバーンの頭蓋骨の横に並んでいるそれが


「これが魔核であるか?」

「えぇ、そうですよ。使い道は武器や魔道具の材料というのが基本ですかね。魔物によっては観賞用として一部の貴族に高価格で売れますよ?……まぁワイバーンは希少価値はありませんけどね」


 所詮は亜竜であるか。これがタオラによるとドラゴンであるなら価値は何倍もするらしい。

 まぁそれを言うと黒魔猫なんて吾輩しかいないことだからドラゴンなんて比較にならないだろう。

 ぶっちゃけどうでもいいが、そうも言ってられない。吾輩の魔核狙いに襲い掛かってくる輩は必ずいるであるな。ま、そう言うことはその時に考えるである。


 コーリィに魔核を目の前に持ってきてもらって触ったり観察してみると、生物の中に入っていたとは思えないほど硬くて鮮やかな赤色をしている。

 ふむ、この魔核……美味そうだ。

 普通だったらこのような石、美味そうだとは思わない筈なのに、何故か惹かれる。

 どうせこれは吾輩がもらうことになっているのだ、であれば――


 パクン


「「ッ!!??」」


 えっ、何2人してそんなに目ひん剥いて吾輩凝視して……あっこれ絶妙に不味い。でも噛む口は一向に止まる気配はない。本能のまま食っている気分である。


「ネっネコ様!?今すぐ吐き出してください!ほらぺって!ぺって!」

「ネコさん!魔核は人にとっても魔物にとっても口に入れたら毒なんですよ!?死にますよ!?」


 コーリィはともかくとしてタオラがここまで慌てているのは初めて見る。吾輩は本格的にヤバイ行動を起こしてしまったようだが、もう遅い。

 ゴクリと気持ちのいい音を立て、魔核は吾輩の喉を通り胃の中に入っていった。もしかして吾輩、本当に死ぬのだろうか……?


『スキル、イーターの効果によりワイバーンの魔核の吸収が完了しました。』


 あ、そんなことなさそうだ。頭の中にあの声が響いてイーターの効果で吸収が完了したとか何とか聞こえた。

 ん?イーターの効果?イーターって確か吾輩が何でも食べられるようになるためのスキルじゃなかったであるか?食べ物だけにとどまらないのか?


 しかしこれで吾輩が魔核を食べて死ぬことは無く、寧ろ今。吾輩の腹から力が漲るような感覚がする。これが吸収したということなのだろうか。イーターで魔核を食べれば吾輩は強くなるのだろうか。

 検証が必要であるが、まずはこの2人をどうにかせねばならんな。

 コーリィ、背中バシバシ叩くな。そんなことをしても吐かないから!


「2人とも、落ち着くである!吾輩はいたって健康、体調も全く問題がないである!」

「……あれ?確かにネコさん普通に話せてますね……普通だったら数十秒もしたら息も絶え絶えになるらしいのですが。」


 何それこわっ


「ネコ様!本当に大丈夫なのですか!?」 

「当然である。吾輩が弱っているように見えるであるか?」

「いいえ全く!」


 とりあえずタオラには吾輩が毒耐性持ってるから大丈夫だったと適当なことを言って無理矢理納得させた。まだ疑っているようではあるが。

 コーリィには……うむ、吾輩の奴隷であるからな、あとでちゃんと話すであるかな。


 さて、吾輩が得た肉と素材だが、アイテムボックスの中にすべて収納し、それ以外の物はタオラに買い取ってもらい、大銀貨2枚を受け取った。

 が、その後その全財産ははコーリィの武器の代金へとあっさり消えるのであった。

 いやまぁ、これから必要になって来るんだし……それなりに良い武器を買ってやったであるから……ハァ


 コーリィは、バーサク状態に吾輩と対面した時も見たが、火魔法を習得しているらしいのでメインウェポンとして杖を。更にタオラに勧められ色々必要になるかもしれないからとナイフも買い与えておいた。

 吾輩が主に闘うとは言え、コーリィ自身も闘えなければいつか危険な目に合うかもしれないであるからな。備えあれば患いなしである。


 今日はもうパーティとやらでいっぱい飲み食いしてやるである!ただなんであるからな!もう一回言うであるがただである!!!

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