第27話 顔を出せたである。
しかし、こうして見るとコーリィは中々の美形である。別に奴隷に美醜を求めるつもりはないが……まぁ美形の方がいいっちゃいい。
ラダン曰く呪い云々が無ければ、価格は何倍もあったと言うのでいい買い物をしたのではないだろうか。借金をしたという事実を除けばであるが。
さて、件のコーリィではあるが、今現在従業員の1人につれられ、更衣室にいる。ラダンの方針でここから買われた奴隷は服を一着プレゼントされるのだとか。
吾輩的には服代が浮くので有難くてしょうがないである。
少ししてコーリィが出てきたのであるが、その顔は憔悴していた。その代り従業員の女がほくほくしていたので、着せ替え人形の如く服を着せられていたのだろう。
「ネコ様ぁ~」
「あぁハイハイ。頑張ったであるな。」
吾輩を抱き抱え、癒されようと背に顔をうずめるコーリィ。くすぐったいから止めて欲しいであるが……まぁ吾輩にもそういう経験あったであるから無碍には出来ぬ。
コーリィが結局着せられたのは、レザーアーマーであった。彼女を冒険者にするつもりという吾輩の意図を汲んでくれたようである。
では早速冒険者登録――という訳にもいかず、コーリィを休めるためにも今日の所は一度タオラの店に戻ることになった。
ラダンに見送られ、街頭に出る。吾輩はコーリィを手に入れたことで、一々陰に隠れていたが、ようやく表に出ることが出来る。
コーリィの肩に乗ることで吾輩はコーリィの魔物という認識をされ、無害という事を証明されるだろう。
実際にはコーリィが吾輩のものなのであるがな。
……視線うざっ!
通りすがるたびに振り返る人の多いこと多いこと。たまに魔物を連れた人間もいるのだが、そ奴らも吾輩をまじまじと見つめる。
黒魔猫が吾輩しかいないから、珍しいという気持ちは分かるのだが……ううむ慣れぬ。
しかして、冒険者として活躍していくうえで間違いなく吾輩にも注目が浴びる可能性があると考えれば慣れておくのも大事なのだろう。
(ネコ様、大丈夫ですか?もし優れないようでしたら私の影に隠れておきますか?)
(構わんである。コーリィは堂々と歩いていればそれでいいである。)
(かしこまりました。ですが、何かありましたらすぐ言ってくださいね?)
この会話はお互いに口に出したものではなく、奴隷契約の際に習得した奴隷テレパシーなるものの効果である。
その名の通り奴隷と声を発さず会話をすることが可能で、一定以上の信頼関係がないと発現しないスキルらしい。
結構便利なスキルなので重宝したいであるな。
時々吾輩ではなく、コーリィに視線が行くものもいた。まぁ美人であるからな、目を奪われるのも分かるが……一緒に歩いているタオラにビビっているのか、ナンパはせずにとどまっている。
「タオラお前、街の人間にどう思われているんであるか?」
「さぁ?私としては悲しいですよ。商人としてはお客様に好かれなくてはいけませんからねーハッハッハッ」
こいつ絶対何かやらかしたことあるであるな。
「そうだ、ネコさん。提案なのですが、今日はパーティと洒落込んでみませんか?」
「パーティであるか?」
「えぇ、良い取引相手の誕生ということでパーティを!ワイバーンの肉も仕入れたことですからね。」
「こちらから提供するものはないであるぞ?」
「心配いりませんよ。その分、つけておきますから。」
「おい。」
冗談とタオラ笑っていたが、本当に大丈夫であるか?
しかし、ワイバーンの肉は楽しみであるな。ニアに聞いたが、それなりに美味い肉だと言っていた。解体も終わっている頃合いだそうだし、魔核とやらも見てみたい。
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商店に着いて最初に吾輩たちを迎えたのはニアとマキリーのコンビだった。
「おや、お帰りなさい、ラダンさんにネコくん。それに君は……?」
「お初にお目にかかります。私はネコ様の奴隷になりました、コーリィと申します。」
「これはこれはご丁寧にどうも。私は――」
「あぁいえ、お2人の事はネコ様から聞き及んでいます。頼れる護衛のマキリーさんとおっちょこちょいのニアさんですよね?」
うむ、何の間違いもないであるぞ。
だからニア、そんな笑ってない笑みで吾輩を見るな。おっちょこちょいなのは本当であろうが。
ニア自身も間違っていないと自覚しているのか、それだけに留め、コーリィに挨拶を返した。マキリーは笑いを堪えるように震えていたのが見え見えである。
「ニアさん、準備は進んでいますか?」
「え?あ、はい。とりあえず仕事の無い人間で少しずつ準備していますよ。仕事がある人は終わった後に元気があったら手伝うように言っています。あ、あと解体が終わったので来てほしいと。」
「そうですか、ではそのまま進めてください。私は2人と解体所に行きますので。」
準備はパーティのことであろうな。さて、吾輩たちは解体所に向かうとするであるか。いやーどれぐらい吾輩の手に収まるか、楽しみである。
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