第26話 バーサク少女の名前である?

 何分少女の額に触れていたか、確認していなかったが、頭の中に先程同様の声が響いた。


『バーサクの呪い及び各部の損傷を治療が完了しました。』


 ふむ、この言葉を信じるのであれば、この少女は安全になったという事であるか。見るに首を絞めたときに出来た痣も綺麗さっぱり消えている、

 とりあえず外の2人に安全であることを伝え、部屋の中に招き入れる。

 タオラは吾輩の言葉を信じ、すんなり入ってきたであるが、ラダンは腹に一発受けたこともあってか、恐る恐る入室した。

 床に伏す少女を目の当たりにしたラダンは信じられないとでも言いたげな目を向けた。


「ど、どうやって少女を抑えたんですか?」

「?どうってこう首をキュッとな?」


 二股の尾を輪っかにしキュッと締めるしぐさをする。思いのほか、簡単に意識を失ったから焦ったである。


「えぇ……?バーサクの呪いは肉体硬化の能力もあるんですが、そんな簡単に言うんですか?」

「いや、簡単であったぞ?」

「は?」

「ラダンさん、ネコさんに常識を求めてはいけませんよ?」


 おうタオラ、それは吾輩が非常識とでも言いたいようであるな。……まぁ異世界から来た吾輩がこの世界の常識を知っているかとなると……うむ、非常識なのか?

 ラダンが言うにはまだ呪いが解除されたことを信用できないようなので、少女の手首を吾輩の尻尾でぐるぐる巻きにし、封じることにしておいた。


「……ぅ……ぁ。」


 む、少女が意識を取り戻したようであるな。ラダンの唾をのむ音が大きく聞こえるほど部屋が静まり返る。さて、鬼が出るか蛇が出るか。はたまた……


「こ、こは……私、は……」


 獣の唸り声ではない。その口からはしっかりとした言葉を喋った。バーサクの呪いが解呪されたのはこれで証明されただろう。

 ラダンに確認の視線を送り、彼が頷くのを確認し、少女の拘束を解除した。

 少女はゆっくりと体を起こし、吾輩に視線を向け、深々と頭を下げる。


「私を呪いから解き放ってくださり有難うございます。」

「ほう?吾輩が解いたと分かるのであるか?」

「……はい。バーサク状態であっても意識はありました。ですが、常に私の意志と反して体が動くもので、数々の方にご迷惑をおかけしました。」


 ラダンに対しても頭を下げ謝罪する。呪いが原因なので不可抗力とも言えるのだがそのため、まさか謝られるとは思わなかったのだろうラダンは軽く焦りながらも少女を許した。


「なら今のこの状況は理解できているであるか?」

「えぇ、今の私は奴隷。そしてあなた様が私の呪いを解いて奴隷にする……ということでよろしいでしょうか?」


 おおう、大当たりであるか。そこまで把握していたであるか。

 ならば話は早い。吾輩が買うと決めたから買うのみであるが、一応少女の意志を言聞いてみると


「私を救っていただいた御方に仕えさせて頂くなんて願ってもいないお話です。是非私をあなた様の奴隷として扱ってください。」

「魔物であるが?」

「そんなこと、些細なことではありませんか。」


 とまぁ、素直に受け入れてくれたのでラダンに奴隷契約を頼んだ。

 吾輩と少女の足元に黒い魔法陣が浮かぶ。どうやら奴隷契約魔法は闇魔法のようであるな。もしかして吾輩も使おうと思えば使えるのだろうか?


「おっと、そう言えば名前を聞いていなかったであるな。吾輩は黒魔猫のネコである。」

「私はコーリィ・ディ……いいえ。ただのコーリィと申します。私のこの命、ネコ様のために捧げることをここに誓います。」


 色々面倒事はあったが、結果無事吾輩はコーリィという奴隷を手に入れた。バーサク状態の時とは異なり大人しそうな娘なので冒険者として大丈夫かと不安は残るであるが……まぁいいか。


『スキル、奴隷テレパシーを習得しました』

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