第6話 異世界初の食事である

 ギィガから紹介された娘、ティナに捕まって数刻後……吾輩はというと……


「ネコ!これ美味しいよ!食べて食べて!」

「言われなくても食べるである!だから離すである!!!」


 今、吾輩はギィガの家で約束通り飯をいただいている。いつの間にか、空が暗くなってきていたから晩飯であるな。

 ギィガの家族+吾輩でゆっくりご相伴に預かるつもりであったが……吾輩、未だにティナに捕まったまんまであったである。

 てっきり飽きられると思っていたであるが、ティナはその様子は全く見せず、寧ろこいつどんどん構ってきている気がするである。

 今もティナに抱き抱えられ、頼んでもいないのに肉を口元に近付けられているである。


「だから!吾輩は自分のペースで食べ……うまっ!!」


 押し付けられたらたまらないので、食べはしたであるが……

 何であるかこの肉!?絶妙な焼き加減で吾輩の口の中に美味な肉汁が暴れまわっているである。こんなの前世で食べたこと一度もないであるぞ。


「ふふっ、満足していただけて何よりです。」


 ラナイナの料理の腕は素晴らしいである。

 異世界最初の食べ物がラナイナの作った料理でよかったである……

 しかし、この食卓に並べられた料理を見てみると意外なのであるが、肉以外の食べ物もある。

 例えば魚とか……色とりどりの野菜とか。確かこの集落の片隅に畑のようなものもあったであるな。


「野菜もあるのであるな。美味いである。」

「ん、不思議か?まぁ確かに大昔ワーウルフは肉しか食わなかったみてぇだが。」

「ほう?食べるようになったことでもあったのであるか?」

「あぁ。昔々、俺たちの先祖が集落を持たずただただ魔物を狩って肉を食っていたころに、異世界からやって来たとかいう人間が訪れたんだ。」


 異世界からやって来た人間であるか。

 別におかしなことはないであるな。

 クシャルダは言っていたであるな。「色んな人間を転生させてきた」と。ともすれば、その転生された者が元の世界の技術やらを伝えたということであるか。

 吾輩の予想は的中しており、集落・畑などの知識を教え込まれたワーウルフはそれらを時間をかけて作り上げ、今では人間との交易もしているらしい。

 ……ワーウルフ意外に賢いである。


「魚が並んでいるのもそういうことだ!ほれ食え食え!」

「そうだよネコ!もっと食べて!」

「だから吾輩自分で食べられるである!自分のペースで食べさせるである!!」



 やだ吾輩。ティナ苦手である。

 ラナイナが、たまにティナを優しく叱り、それにより少しの間は解放されるのであるが、すぐに忘れて抱き抱えてくる。

 だから吾輩、もう諦めたである。もう好きにすればいいである。ポジティブに考えれば抱き抱えられておけばティナが勝手に料理持って来てくれるであるからな。

 ……そうだ。


「ギィガ、少し頼みがあるである。」

「ん?何だよ。そんな真剣な顔をしてよぉ」

「少しの間、この集落に留まらせてくれないであるか?」


 吾輩の発言に、ギィガは目を丸くし、口もポカンと開ける。

 む、これは図々しすぎたであるか?


「ネコよ……お前何言ってるんだ?」

「へ?」

「別に少しの間と言わず、ずっと居てもいい位だ!なぁ2人とも!」

「えぇ、ネコさん。ゆっくりしていってもいいんですよ?」

「そうだよネコ!一緒に暮らそうよ!」


 ……杞憂だったであるか。皆、温かい笑顔で見たこともない種族の魔物であるはずの吾輩を受け入れてくれたである。

 あ、でもさすがにずっと一緒に暮らすつもりはないとティナに言ったら滅茶苦茶駄々こねられたである。


 ギィガの家に居候させてもらうことが決まった翌日、吾輩は集落近くの森に来ていたのである。

 森に来た理由はほかでもない。吾輩のスペックを確かめるためである。

 猫パンチの威力こそ確認はしたが、他のスキルの確認まではしていなかった。だからこそこの森で魔法とかの力を見ておこうと思ったのであるが――


「ネコー!どうして森に来てるのー?遊ぶのー?」


……何でティナがついてきているであるか。

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