第4話 ギィガを解放するである
「……お前何してんの?」
「力加減誤ったである。何分初めて使うであるからな!」
「初めてかよ!?ってかさっさとしてくれ!外が気づいたみてぇだぞ!」
あれだけ音を立てれば馬鹿でも気付くであるな。
流石にこれは吾輩に責があるであるな。何となくであるが力加減は分かったであるし……さっさと壊すである。
体の動かし方も何となく分かったであるし、ちょちょいのちょいで跳んでもう片方の腕の鎖を破壊。続いて両足の鎖も破壊であるぞ。
「だっ誰だ!荷車を破壊しているの……はぁ!?」
むっ、小太りな男が荷車の扉を開けおったな。戦闘が出来そうにない様子からしてこやつが奴隷商か?
む、もう1人いるであるが、体つきはそれなりにしっかりしてるし奴隷商とは違うかも知れんであるが
だがまぁ、遅いのである。
「ぃよう……よくもまぁ俺を売ろうとしてくれたなぁ?」
「ひぃ!!わ、ワーウルフが!な、何故だ!?鎖は!?って壊れてるぅぅ!?」
おぉ、光が差し込んでギィガの姿が良く見えるであるが、これまた凄い強面であるなぁ……吾輩のクールフェイスが霞んでしまうほどである。
まぁ奴隷にされそうになったであるから怒るのも当然であるな。
「ただ逃げるんじゃあ俺の腹の虫がおさまらねぇ……だから死ね!」
ギィガは低く唸ると体勢も低くし奴隷商に向かって飛びかかり――首元に噛り付いた。
痛みからか奴隷商は叫び声をあげ、じたばたと暴れるが、ギィガはそんなものは関係ないとばかりにさらに噛む力を強める。
おー、血の噴水がびゅーびゅー噴射しているであるなー壮観壮観。
もう片方の輩も何とかギィガを引き剥がそうと奮闘しているであるが、ギィガに片腕振るわれただけで吹っ飛んだである。
ふむ、ギィガが殺し終わるまで暇であるな。……む?吾輩、目の前で人が死んでるのに割と落ち着いているであるな。……まぁどうでもいいであるか。知らん人間であるし。
吾輩は砕けて木の床に転がっている鎖に目を向ける。
あの身体能力のギィガを縛っていた鎖。吾輩が壊したであるが、まだ使えそうであるな。
確か……収納、であるか。
おおっ、鎖が吾輩の鈴の中に吸い込まれていったである。で、吾輩が鎖を出すように念じてみると……ふむ、ちゃんと鈴から鎖が出たであるな。
「なぁにやってるんだ?」
「む、終わったであるか?」
「あぁ、奴隷商も俺をおびき出した魔物を召喚した魔法使いも殺したぜ。」
やり切った顔のギィガ。返り血が凄いであるぞ……?
しかしまぁこれで静かになったであるな。外に出るである。
「ほーいい天気であるなぁ……」
「だな。ったく……捕まって無きゃ日向ぼっこして昼寝したい程なのによぉ運がねぇぜ。」
ワーウルフにもそういう楽しみがあるのは少し意外である。イメージとしては「つよいやつとたたかいたい!」「うまいにくたべたい!」ぐらいしか楽しみないかと思ったである。
「お前今失礼なこと考えなかったか?」
「気のせいであるぞ。」
勘も鋭いであるな。
「だがまぁ、ネコ、お前には助けられちまったな。」
「取引したであるからな。別に礼はいらんである。」
「それでも、だ。ありがとうな。」
だからいらんと言っているであるに……面を向って言われると恥ずかしいである。
む、ギィガが吾輩を抱えて頭の上に乗せたである。おほぉ、中々にいいフカフカぐらいであるな。
「何で頭にのせるであるか?」
「そりゃあお前を俺の集落に連れていくためだ。約束したからな?」
「いや、それはもちろん、約束したであるが……頭にのせる意味は?」
「よし、じゃあ行くぞ!しっかりつかまってろよ?」
「は?何でしっかりつかまる必要が――」
吾輩はそこから先を喋ることが出来なかった。何故ならギィガがとてつもないスピードで走り始めたからぁ!
車まではいかなくても全速の自転車顔負けのスピードに吾輩、吹っ飛ばされない様にギィガの体に尻尾を巻きつけて何とか耐えたである。
せめて
せめてもうちょっと早く言って欲しかったである……いずれこのスピードに慣れることを祈るである。
と思ったら割と早く慣れたである。我ながら順応し過ぎであるぞ……?
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