第154話

 その声の主は、セレネギル大陸東部地方では半ば伝説化している

 冒険者パーティー『異種族友好協会』の前衛職を務めた後

 ソロ冒険者として活動していた冒険者ディアランの声だった

『白金』等級冒険者でその実力から『白銀の狂戦士』の二つ名で、大陸東部地方の冒険者達に 広く知れ渡っている

『異種族友好協会』に所属していた冒険者の大半は、パーティー名を

 現す様に様々な種族の冒険者で構成され、ディアランは

 『異種族友好協会』の中でも前衛職を特化していた

 大陸東部地方では珍しい、縦長の瞳孔をしたオークの特徴を色濃く残している。



 非常に長い腕がその長身と相まって巨体を印象付けているが驚くほど動きが

 素早く、圧力を感じさせる重槍を駆使した戦い方をする豪快な男だ

 このゴブリン集落に突撃した 冒険者達の中でも屈指の実力者で、重厚な

 風貌もあって殺伐とした人物像だが、その実力を鼻にかけず他の冒険者達の

 援護に回る事を厭わない姿勢から奇妙な募集に釣られ集まった冒険者達からは

 好感をもたれている

「 『白銀』のがそう言っているが、合流するか?」

 アリアガットにそう 軽い訛りで尋ねてきたのは、リザードマン種族の冒険者だ

 セレネギル大陸南方地方独特のリザードマン訛りの言葉を使い、非常に巨大な

 体躯の持ち主で全身に古傷が目立っているが精悍な印象は崩れない

 出身がセレネギル大陸南方地方というだけで、リザードマン種族の冒険者は

 セレネギル大陸北部地方を拠点としていた冒険者パーティ『歩く幽霊』メンバーだ



 使用する武器はメイスだがその見た目通り鈍器でもあり戦闘の際には

 全身の筋力を駆使し殴り付ける戦い方をする、非常に珍しい魔法系前衛職である

 魔術師だ

 アリアガットも北部地方を拠点としていたが、北部地方内でも別の

『冒険者ギルド』支部を拠点としていたため、直接面識はなかった。

 それでも冒険者パーティ『歩く幽霊』の事はよく冒険者同士の情報交換で

 耳にしてはいた。

『歩く幽霊』リーダーでダークエルフ種族の冒険者ステフロワは、

 卓越した魔術の技量と 豊富な魔法知識を誇り、その魔術で北方地方でも

 指折りの高難易度依頼を達成している事で、セレネギル大陸北部地方の

 冒険者達から一目置かれる存在となっている。

 もちろん冒険者パーティ『歩く幽霊』メンバー1人1人の実力は北方地方内でも

 指折りで、さらにベテラン揃いという事から基本しっかりしている

「合流してどうする?

 あっちに向かった所で美味しい所は、 他の冒険者達に

 持っていかれるだけだぞ」

 肩を竦つつ、スマートな貌と身体をした人間種族の冒険者がそれに対してぶっきらぼうに応えてきた

 左目の横に小さな 創傷があった

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