第153話
暗鬱と張り詰める空気が漂う砦化しているゴブリン集落内部で、ゴブリンを
圧倒していた女冒険者もそれに気づく
舞い上がる砂埃と打ち鳴らされる剣戟の音に混じり、微かに聞こえる
ゴオォォという地鳴りにも似た重低音は、まるで巨大な質量を持つモノが、
この大地に降臨する前兆のようにも思えた。
「いよいよ、大物がお出ましか」
年の頃は三〇代前後で、身長も高いくすんだ黒金髪の女性冒険者は闘志を
露にする笑みを浮かべつつそう呟く
頸から吊るしている認識票は『蒼玉』等級を記しており、最高ランクの冒険者だ
このセレネギル大陸北方地方地域では半伝説化している冒険者『雷使いの聖女』
ヴァルート率いていた『堕天使生協』パーティに所属し、『妖炎の双剣』の
異名を持つ『前衛』職の女冒険者だ
『妖炎の双剣』アリアガットと聞けば、特に大陸北方地方を拠点とする冒険者
は誰でも一度は耳にする。
大陸北方地方の『冒険者ギルド』支部にて、若干16歳の年齢時にで
冒険者登録し、 女性限定の冒険者クラン『堕天使生協』に
スカウトされた逸材で、その稀有な能力と強さからこの大陸では類を
見ない有名な女冒険者だ
女だけの冒険者クランと言う事や希少職である前衛職を特化している事から、
他の同業者に疎んじられていた事も確かだったが、『妖炎』の異名の通り
燃え盛る深紅の魔力を扱う魔術師にして剣士であり、非常に素早い動きで
敵を圧倒し、たったの半年でセレネギル大陸北方地方で名を馳せる
女冒険者となった
セレネギル大陸北方地方の『冒険者ギルド』支部に残る戦歴記録には、通算
討伐数は158体
内、151匹は賞金を懸けられた各種魔物や魔獣との戦闘記録である
そのアリアガットはこのゴブリン集落に突撃した中では、1、2位を争う程
ゴブリンなどと剣を交えていた
しかし、その剣閃の鋭さと動きの速さは衰えるどころか更に切れを
増しているようにも感じられた。
(単なる力押しと勘違いされ勝ちだけど、無駄に速すぎる事も防げていると思う)
アリアガットは魔物の血を払って愛用の双剣を鞘に収める
そして耳元に吊るしてあるプラチナ色の菱形の石を使った耳飾りに触れると、
間髪いれずソレから念話が届いた
『 手の空いた奴はいないかっ!?
やたらと 練度の高い200匹以上のゴブリンが波状攻撃をしかけて来ているっ!!
それと『大物』の出現が近い。
『大物』を口説きたい奴は出現会場へ行け!! だが、それよりも
ゴブリンとの舞踏会を楽しみたい物好きは、そのまま
集落中のゴブリンを狩り尽くせっ!!』
凄味のある声が念話として届き、アリアガットの周りにいる冒険者や
砦内部に進行中の男女の冒険者達の表情を強ばらせた。
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