第150話

 轟音と共に2人には凄まじいGがのしかかるが 苦痛は一切表れない

 肉体を支えているのは、身体強化の魔法が施された騎乗用ローブを

 着込んでいるためで、短時間に限り圧倒的強靭な

 肉体を作り上げているからだ

 ゆえに何の支障もないのである。

 高度を上げた直後、後方に100以上の火の玉が空中で形成され、

 一瞬で迫り来る

 1つ1つの火の玉の大きさはそれほどではないが、数が数だけに

 当たりどころが悪ければ あっさり身体は消滅してしまうだろう

 練り上げられた火球が無軌道な曲線を描きながら、2人が

 騎乗するホワイトグリフィンへ襲い掛かる


 生き物のようにうねり獲物を見出した蛇の如く、襲い掛かって来るが

 ホワイトグリフィンを巧みに操るブラハルトの手綱捌きにより

 火球の群れは、2人の乗るホワイトグリフィンを掠ることもなく、

 その脇を通り過ぎていく。

 動作に全く無駄がない。

 まるで、この動作をするために生まれてきたような動きだった

 大きく右旋回をして若干の間を置いた後に、炸裂音のような音が

 辺り一面に響き渡る

「ブラハルトのおっちゃん!

 地上から続けて火球がくる!」

 火球の炸裂する音が聞こえてき始めた辺りからベイセルは

 警告を出すと同時に指示を促していた。

「ちびっこ先生、しっかり掴まっていろよ!!

 大至急地上にいるクリストフェルかカルローラに杖持ちのゴブリンを

 叩けと伝えろ!」

 ブラハルトは素早く周囲に視線を走らせつつ、叫ぶように指示を出す


 上空から俯瞰すれば、地上の様子や状況もある程度把握することが

 程度分かるようだ。

 ブラハルトは手綱を手前に大きく振り込むと同時にホワイトグリフィンは、

 ドッと地響きを立てつつ地上へと急降下する。

 その降下の速度に比例するように、火球の群れは2人の乗る

 ホワイトグリフィンを 追い抜き、後方へ飛び去って行く

 地上へ降り立つと同時にホワイトグリフィンは一気に加速し、同時に

 地を這うような低空飛行で疾走を開始した

 この騎乗方法は高度な技術を必要とするので、グリフィン騎乗者でも

 可能な者は限られる。

 しかも、その速度域が尋常じゃないほど高いのだ

 そんな高等技術をいとも簡単に行うブラハルトの騎乗技術は、 まさに

 神業の域に達している

 ホワイトグリフォンは風のように駆け抜けその速度に呼応するように、

 ブラハルトの騎乗技術が冴える。

「気づいてくれ。早く、早く!!」

 指示を受けたベイゼルはそう呟きつつ、広く冒険者の間で意思疎通・

 意思表示のために使われている手信号で合図を送り続ける

 手信号の文章の間隔は、状況や相手を問わず等しくするため

 一定でなければいけないため、非常に難しい

 だが、ベイゼルは年齢の割には手信号を完璧にマスターしているようだった


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