第149話
その影の正体は―――
胴体は獅子、貌は鷲と翼、前足と後ろ足の部分にそれぞれ別の
動物の脚をくっつけた、飛行系獣種――『グリフォン』だった
それも普通のグリフォンではない
正体は主に、魔獣や魔物が犇めく魔境奥深くに生息すると言われている
超絶希少『ホワイトグリフォン』だ。
非常に知能も高く感知力は非常に優れており、 その美しい
白銀色の毛並みと翼から一部地域や冒険者からは神獣として崇められる
存在でもある
純白に輝く美しさを纏った超絶希少種の背に珍しい事に、騎手の如く
乗りこなしている人影が二つあった。
一つは騎乗用ローブを着込み、黄金色の美しいロングストレートの髪を
持つ男性だ。
眉は太く、鑿で粗削りしたような貌、太陽神のそれに似た瞳が
猛禽類特有の眼光を放っている
もう片方の人影も同じように騎乗用ローブを着込んでいるが、そちらは
小柄で華奢な肉体をしている
体格からして少年らしき姿だ
「―――ちびっこ先生!!
引き続きこの空域の警戒を実施するのか!? 」
黄金色の美しいロングストレートの髪を持つ男性が、後ろでしがみ付きつつも
厳しい視線で、前方を見据える少年に声をかける
もちろん手綱を握ったまま振り返らずにだ
「―――ブラハルトのおっちゃん!
上空から見た限りじゃ相手は空からの攻勢に対し、有効な
対処方法を持ってはいなさそうだが、油断はしないでくれ!」
声音もそれ相応の幼さを思わせる声で応えるが、その瞳は強い
意思の輝きを宿している
普通なら緊張と恐怖で表情を強張るはずが、その瞳からは
その兆候は見えない。
冒険者の背にしがみつく様は、まるで 親にしがみ付く
子供そのものなのだが・・・
少年の名は――『ちびっこ先生』という愛称のベイセルだ
黄金色の美しいロングストレートの髪を持つ男性――ブラハルトは
ベイセルの言葉に頷くと手綱を握り、
軽く鞭を振るおうとして舌打ちをした
眼下に視線を向けた先に、何かが蠢く様子が見えたからだ
蠢く正体は夥しい数のゴブリン集団だった
ブラハルトが舌打ちした原因は、ゴブリン集団の中に杖らしき
武器を持ったおよそ20匹ほどゴブリンが 確認できたからだ
ゴブリンは知能は人間より低く、武器を使うなど
考えられないような連中なのだが、中には例外も存在する
20匹ほどの杖らしき武器を持ったゴブリンが、 少し離れた
場所で魔法の行使を始めていた。
魔法は術者の力量によって大きく威力が変化するため、本来この程度の
距離ならば 問題にならないのだが・・・
その魔法は、かなり大掛かりなもので膨大な魔力を練り上げられてすでに
完成していた
「ちびっこ先生!!
旋回を中止して上昇するぞ!」
それを眼にしたブラハルトは、鬼の様な形相でベイセルに指示を飛ばすと、
手綱を短く握り込み、馬首を上空へ向ける
その指示にすんなり従うホワイトグリフォンは、高度をドンドン上げていく
同時に身体を一気に加速させた
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