第148話


 己の存在力全てを焼き尽くすべく、炎を放とうと口を開く

 クリストフェルはたった今起こった光景に衝撃を受けつつも、

 状況を瞬時に理解した

「俺はあの魔獣を相手取る!

 カルローラの嬢ちゃん、1人でイケるか!?

 他の連中も集まってくるとは思うが!」

 そう叫ぶ

「お兄さんは大丈夫なの?」

 カルローラは純粋に疑問をクリストフェルにぶつける

 その問いは、カルローラの心配から出たものだ

「俺はこれでも強ぇんだせ?

 それに年下の女の子を放っておいて母ちゃんとこに戻りゃあ、

 男が廃るってもんよ!

 ――そこのデカブツ! 俺らをバラそうとしたツケは高いぜ?

 利子と税込みでテメーは確実にブッ殺すから覚悟しろ!!」

 クリストフェルはニカッとカルローラに向けて笑いつつ応えると、

 蒼い獅子のような体躯の未知なる魔獣には、威勢良く啖呵を切った。

 同時に体躯の未知なる魔獣へ向かって猛然と突き進む

 動体視力で、クリストフェルの動きを捉えることは不可能だ

 それほどの速さ、凄まじい速力で突き進み、 一瞬で蒼い獅子の

 ような体躯の未知なる魔獣の目の前へ辿り着く

 大上段から渾身の力を込めて振り下ろした刃が蒼い獅子の

 頭を直撃する




 切っ先の狙いは、恐らく頭部だったのだろうが、蒼い獅子のような体躯の

 魔獣はギリギリで全身を横にずらすことで致命傷を回避した

 しかし、クリストフェルの凄まじい斬撃によってヘラジカのような平べったい角が

 真っ二つに斬り落とされて、蒼い獅子のような体躯の魔獣は絶叫を上げる

 だが、引くつもりはないようだった

 剣撃によって斬られた頭部の傷口からは蒼い血をボトボトと滴らせながら、

 吼え立てる

 クリストフェルは、間髪入れずに斬撃を叩き込むため地面を蹴って再び、

 突進をしようとした瞬間

 ―――広範囲に稲妻の嵐が吹き荒れる

 クリストフェルは、まるで攻撃位置を予測したかのように思考より先に、

 肉体が反応し その稲妻の嵐を紙一重で回避した。

 その稲妻の嵐は、一角を生やした蒼白き古龍アングルスが、己の

 前脚の爪を縦横に振るい 発生させていたのだ。


 稲妻が吹き荒れる中、蒼き獅子のような体躯の魔獣は

 クリストフェルとの距離を 取り直そうと跳躍し後退する

 一角を生やした蒼白き古龍アングルスが再び広範囲の魔法を放とうとした時、

 その瞬間を狙っていたかのように上空から影が舞い降り 巨大な岩が

 次々と古龍アングルスの身体を打ちのめし、締め上げる。

 クリストフェルが視線を向けた先には、大きく翼を広げて力強く

 羽ばたいて浮かぶ影があった。

 巨大な岩は、その影の魔力によって生み出されたものだ

 クリストフェルは一瞬で状況を察すると、狂気を感じさせるような笑み浮かべ、

 カルローラは驚いて目を大きく見開いた

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