第146話
(あの嬢ちゃん、やっぱり闘い慣れしてやがる)
クリストフェルは心の中でカルローラの事を評価した これだけの
戦闘をこなしながらも、彼女は息一つ切らしていないのだ
まだまだカルローラは手札を隠している
・・・そう考えた時、後ろで何かが倒れる音が聴こえ
振り返ると、そこには予想だにしていなかった光景があった
そこには、色の紙に鶏血で呪文を記した呪符を身体に貼り
付けられた複数のゴブリンが倒れ込み、肉が溶けるように
蒸発していく光景があった
呪符に霊力が込められているのだろう
「お兄さん、止まっていると危ないよ!」
クリストフェルは、慌てて声が聴こえた方に視線を向けた
そこにはいつの間にか横に来ていたカルローラが、ハンドベルを
鳴らしながらクリストフェルに警告していた。
「お・・おう!
確か嬢ちゃんはハインツ大将所の・・・」
まったく近づいた気配すら感じる事ができなかったため、一瞬だけ
クリストフェルは躊躇しつつ、カルローラにそう尋ねる
「カルローラだよ!」
カルローラはニコッと微笑みハンドベルを振り鳴らしつつ答えた。
年相応の可愛らしい少女の笑顔だが、クリストフェルには
まるで仮面のように見えてしまった。
しかし、すぐにそれは思い過ごしだと彼は考え直すことにした
「カルローラの嬢ちゃんが一緒にいた連中は?
まさか邪魔だとか何か言われて追い出されたのか」
まだ付き合いは長くないが、少なくともこの変わった募集に
応募した冒険者達は、カルローラを邪険に扱うようなタイプではない事は
理解しているが、念のため確認を取る事にした
クリストフェルの問いに、カルローラはキョトンとした表情を
一瞬見せたが、すぐに微笑みながら軽く首を振った
「まさか!
脚が疾いからボクが適任と言われたんだ!」
そう言いながらも、カルローラはチラッと後方に視線を向けた
視線の先では、突風のように剣士の『霊体』が、古龍ベヘモットへ
肉薄し、 その鋭い剣撃を古龍の身体に叩きこんでいる
凄まじい衝撃とともに、切っ先が古龍の鱗を砕き、肉を断ち、
骨をも断ち切っていく
その一撃はまさに一閃で、ベヘモットの右前脚が肉と
血飛沫と共に吹き飛んだのだ
だが、古龍は怯む事もなく剣士に反撃するべく巨大な爪を
振り下ろしてきた
その強烈な一撃を剣士の霊体が受け止め、さらにベヘモットの
左前脚に剣撃を 叩き込むと、その巨大な爪は根元から切断した
甲冑を着た複数の骸骨達はというと、甲冑を着てマントを纏った
数百のゴブリン達と斬り合っていた
剣と剣、武器が、防具がぶつかる音が、周囲を埋め尽くしていた
骸骨兵の戦闘力も相当なもので、ゴブリンの群の中に入っても
一切引けを取っていない
骸骨兵が手に持った槍を突き出せば、ゴブリンはそれを盾で防ぎ
その盾に剣が、槍が突き立てられる 骸骨兵が剣を振り下ろせば、ゴブリンは
盾でそれを受け止め さらに別のゴブリンが横から槍を突き出して牽制する
数百のゴブリンと三十数体の骸骨兵がぶつかり合う様はまるで大乱闘だ。
しかし骸骨兵は怯む事もなく、ゴブリンを次々に斬り倒していく
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