第140話
もう一つのゴブリンの『軍旗』へと向かっているグループでは、
守備側のゴブリン達と手懐けられている魔物との乱戦が繰り広げられていた
その状況は一言で表すなら"血煙漂う戦場"と言った所だろう。
タルコットの大規模魔法攻撃を耐えて生き残ったゴブリン達や
手懐けられている魔物は、全身は薄汚れ傷を負っているものの
眼からは鋭さと闘魂が滲み出ており、屈強な冒険者達の
猛攻を凌いでいる
冒険者達はゴブリンや魔物の臓腑を抉り、引き裂き、時には叩き
潰しながら突き進み、ゴブリンは特有の粗末な武器を巧みに操り
冒険者達に決死の反撃を加えていく
またそれだけでなく手懐けられている様々な魔物達も、 主人を
害そうとする冒険者達を屠るため奮闘する
全身を黒い体毛に覆われ、ゴリラのような体躯に熊の様な手足を持ち、
身長は3メートル近くあるブラックエイプ
蜘蛛系の魔物のアラクネー、鱗に覆われた身体に猛牛の様な角と
鋭い爪を携えたデスクロー
生き物に絡み付いて絞め殺し、それを栄養にして生きている恐ろしい
食人植物のストラングラーヴァイン、地面の中から出現する
地下生物のシャドーマン、胴体の途中から頭が二つに分かれている
巨大な蛇のツーへッデットスネークなど
明らかに通常では考えられない多種多様な魔物達が、冒険者達と激しい
攻防を繰り広げている
「あらあら、ロージアンに棲息するゴブリンや魔物は中々気合がイカれてるねぇ!」
何処かふらふらとした足取りで、1人の女冒険者がデスクローへと近づいて行く
デスクローは獰猛で俊敏な肉食魔獣であり、獲物をその鋭い爪で
切り裂くのを好む
力も凄まじく完全武装した冒険者を軽々と持ち上げることが出来る
しかも、その巨躯に似合わず動きも俊敏で身体を反らして天高く跳躍し、
一気に獲物に跳びかかる様は圧巻である
ベテラン冒険者達が徒党を組んでデスクロー討伐に挑む事があるが、
それでも返り討ちにされることも多々ある非常に恐ろしい魔獣だ
デスクローの進行を阻むかのように立ち塞がった女冒険者の両手には、
短剣が握られている
鞘に納められている状態でも、一目見ただけで業物だと分かる代物だ
デスクローが立ち塞がった女冒険者へと襲い掛かった。
鋭い爪による一撃を繰り出すが、女冒険者は舞うかのように回避する
凄まじい衝撃音と打撃音、そしてデスクローの絶叫が響き渡る
女冒険者の流れるようなカウンター気味に放った短剣による一閃は、
デスクローの右眼を抉っていた。
傷口からは蒼白き炎が燃え上がっており、デスクローにダメージを
負わせたのは明らかだった。
「申し訳ないわねぇ ちょっと通らせて貰うよぉ!」
そう呟いたその女性冒険者は、デスクローが怯んだ隙に
サマーソルトキックを繰り出し、その巨躯を吹っ飛ばした。
宙を舞ったデスクローは、地面に叩き付けられる前に空中で身体を捻って着地し、
そのまま凄まじい勢いで女性冒険者へと突進していく。
だがしかし、女性冒険者は余裕の表情を浮かべながら迫り来るデスクローを
見据えていた。
次の瞬間には、デスクローが彼女の間合いに踏み込んでいた。
紫の血しぶきが舞い散る。
デスクローの顔面は彼女の短剣により切り裂かれ、その紫色の鮮血が
辺りに飛び散った。
しかし女冒険者も無傷とはいかず、鋭い爪で左上腕を引き裂かれ
て血が滴っている。
そんな状態であるにも拘らず彼女は、不敵な笑みを浮かべていた。
そして次の瞬間には、再びデスクローへと肉薄していたのである。
まるで瞬間移動したかのような速度で間合いを詰めると、今度は
右脚を斬りつけた。
横薙ぎに一閃された刃がデスクローの右脚の腱を斬り裂く。
デスクローが叫び声を上げた。
その隙を狙っていたかのように、女性冒険者は短剣を閃かせると
右眼を切り裂き
完全に視界を奪うと、身体を捻り回転しながら跳び上がり、 サマーソルト
キックで蹴り上げた。
そして見事に着地すると同時に突き付けていた切っ先でデスクローの胸を
貫き絶命させた
女冒険者は、手早く回復薬を引き裂かれた左上腕へかけると、すぐに
立ち上がり奥へと向う
その先では、幾人かの冒険者達が『軍旗』付近まで辿り着き、凄絶な
殺し合いを繰り広げていた
辿り着いていた冒険者達の実力も高く、一進一退の攻防を
繰り広げていた。
その中で一際目立っている攻防戦があった
筋骨隆々とした巨体で頭からは2本の角が伸び、手には大きな戦鎚を
持ったゴブリンを相手に闘っているウルリーカの姿だった
戦鎚を自分の身長の倍ありそうなやや大きめの剣で受け流す。
その後も激しく剣と鎚がぶつかり合う 一撃を受け止める度に
衝撃音と金属音、火花が飛び散り辺りに木霊していた
目まぐるしく攻守の変わる攻防に、一部分の冒険者達が思わず
見入っていた。
正に闘志と闘志のぶつかり合う攻防だ
華奢で小柄な身体からは想像できないほどの剣撃が振るわれ、
それを大柄な体躯に似合わない身のこなしで回避し
攻撃に転じる戦鎚持ちゴブリン。
体格差は圧倒的だったがウルリーカも負けていない。
小柄な身体をフルに使いつつ隙を狙い強烈な一撃を叩き込む。
1秒でも気を抜けば即座に致命傷になり得る極限状態の中、ウルリーカと
戦鎚持ちゴブリンは二人は互いに一歩も譲らず 剣と鎚を
ぶつけ合い続ける
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